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〔共済連だより〕

家畜診療日誌

岡山南部家畜診療所 大屋 卓志

 今年は例年になく寒波となり大変寒い日が続きます。冬季になると風邪を引きやすく,インフルエンザも流行し,私も病院でインフルエンザの予防接種を受けた次第であります。また鳥インフルエンザにより中東地区では死亡事故も発生しておりスペイン風邪のような世界的流行も懸念されており,治療薬であるタミフルの生産が追いつかないなどの問題もあります。さて牛では冬季になると伝染性の下痢が流行します。搾乳牛に好発し急激な気温の低下や著しい日較差等ストレスがあったときに発生します。牛群内で急速に蔓延し発病率は50%〜100%と高い割合ですが成乳牛では死亡はまれであります。これは牛コロナウイルスの感染によって起こる急性の下痢を主徴とする病気です。
 症状としては淡褐色〜暗緑色の水様下痢を呈し発病牛の中には血便を排出し,発熱,鼻汁排出,発咳等の全身症状を呈する個体も出現します。しかし大抵の牛は3〜4日の短期間で下痢は回復するが搾乳牛は急激な産乳量の低下となり産乳量はすぐに回復せず経済的損失の大きい疾病であります。
 私が臨床現場を見る限り早ければ10月に発生し遅ければ3月ごろまで散発し最初は牛群において1〜2頭水様下痢を主徴とする牛が出現し近隣の牛へと感染し最終的には牛群全部が感染します。牛は比較的元気,食欲のある状態であることが多いです。しかしながら乳量の減少は著しく通常の3分の1以下ぐらいに低下し元の乳量に回復するには1個月位かかるように感じます。また発熱,著名な血便,食欲廃絶,脱水症状などの重篤な臨床症状を呈し対処療法を実施する牛もいます。
 とはいえ,牛コロナウイルスには,インフルエンザに対するタミフルのような特効薬はなく有効な治療方法もないのが現状であります。最近カウコンフォートにより牛のストレスを取り除くことにより疾病の発生を抑えて生産性を高める方法が注目されています。冬場の寒い時期,朝晩の冷え込みの著しい時に牛舎内の窓を閉め,隙間風のコールドストレスに牛を晒さない牛舎環境が重要となります。ところで近年牛コロナウイルス感染症不活化ワクチンが開発され予防に大いに期待されています。すでにワクチン接種を実施した農家では効果があったということであります。
 牛コロナウイルスは子牛にも感染し子牛では年間を通じて発生し,発生場所に常在化する傾向があり,出生直後から2週令に多発します。症状としては水様性下痢,発熱,眼球陥没,四肢末端温度の低下となり子牛では死亡率の高い疾病であります。ワクチン接種牛の初乳を飲ませておけば子牛の下痢の予防にも十分有効であります。しかしながらワクチン接種による副作用として発熱のアレルギー反応がしばしば認められます。ほとんどの牛は2〜3日経過すれば自然と回復します。
 ワクチン製造メーカーでは細胞成分がアレルギー反応の原因となっているので今後可能な限り細胞成分を少なくして副作用のないワクチン製剤を生産していく予定であるとのことです。毎年9月位にワクチン接種をしていくことを強く推奨していくべきだと考えます。
 人でも牛でも脅威となるのはウイルスを病原体とするものであり,ワクチネーションによる防除対策には大いに考えていく必要があると考えます。