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晴れの国おかやま国体馬術競技大会

真庭家畜保健衛生所

「原田(馬術成年男子)が2連覇 岡山勢優勝第1号」

 晴れの国おかやま国体の開幕翌日の地方紙朝刊トップには,初日の第1競技のセントジョージ馬場馬術競技で,昨年に続いて見事優勝した岡山県代表の原田選手の喜びの記事が大きく掲載されました。
 原田選手は,これに続いて自由演技馬場馬術競技でも優勝し2冠を達成したほか,馬術選手団のリーダーである原選手がトップスコア競技で優勝するなど,岡山勢は成年男子を中心に大健闘しました。
 総合成績では強豪奈良県に惜しくもおよびませんでしたが,過去最高の2位となり,その活躍が称えられました。

晴れの国おかやま国体馬術競技大会

 43年ぶりの開催となった岡山国体は,県内各地で28種目の正式競技が行われ,熱戦が繰り広げられました。このうち馬術競技大会は,平成17年10月19日〜27日の日程で,真庭市の蒜山高原ライディングパークを会場に,全国すべての都道府県から292名の選手と179頭の乗馬を集め,盛大に開催されました。
 地元のボランティアや蒜山高校,中四国酪農大学校をはじめ,陸上自衛隊第13旅団第46普通科連隊等の多大な協力によりスムーズな大会運営がなされ,笑顔とおもてなしの心で歓迎ムードに包まれました。
 大会前日の激しい風雨で会場の一部が壊れるなどトラブルもありましたが,真庭市八束国体推進室や岡山県馬術連盟をはじめとする大会関係者の懸命の努力が天に通じたのか,期間を通じて悪天候にみまわれたのはその1日だけで,概ね好天に恵まれ,まさに「晴れの国」の大会となりました。


中国四国酪農大学校の協力により、入退厩時の荷物運搬がスムーズにできました。


自衛隊の協力により、障害競技のコース設置が迅速確実に行われました。

馬術競技とは…

 馬術競技は,他のスポーツと異なり,人と馬とが一体となって競技を行うスポーツです。馬は鋭敏な感覚と自分の意志をもっており,騎手が障害を飛越しようと思っても馬に飛ぶ意思がなければ,決して飛べるものではありません。運動するためのエネルギーは馬の役割,そのためのリズムとバランスを与えるのが騎手の役割です。互いが役割を果たしあい,信頼感で結ばれたときに素晴らしい演技が生まれるのです。これが昔から『馬術は人馬一体の競技である』と云われる由縁です。このために騎手は馬を愛し,馬を理解し,自分の馬がいつでも自分の指示に喜んで従い,どんな難しい運動でもできるように,また,どんな難しい障害でも飛び越せるように,調教しておかなければなりません。馬を十分に調教して人馬が信頼感で結ばれてこそ,初めて馬術競技における勝利が得られるのです。近代馬術競技は,「馬場馬術競技」「障害飛越競技」「総合馬術競技」の3つに大別されます。国体では,馬場馬術6競技,障害馬術16競技,総合馬術1競技の計23競技が行われました。

 (1) 馬場馬術競技

 長方形(20m×60m)の馬場内で3種の歩き方である常歩(なみあし),速歩(はやあし),駆足(かけあし)で躍動感に満ちた様々な運動を演じるものです。前進・停止・後退をしたり,あるいはスキップのような歩様,後肢を軸に旋回するなど,馬の調教レベルや動きの華麗さ,騎手の技量を競います。既定された運動課目を演じる既定演技と,騎手が作成・選定した音楽に合わせて演じる自由演技(フィギュアスケートのような競技)があります。
<国体競技>
・セントジョージ賞典(成年男子,女子)
・ジュニアライダー(少年)
・自由演技(成年男子,女子)
・自由演技ジュニアライダー(少年)

岡山国体で馬場馬術競技2種目
(セントジョージ賞典、自由演技)
制覇した原田選手とグァデループ号

 (2) 障害飛越競技

 馬場内に設置された障害物を過失なしに飛び越す競技です。障害物のバーの落下や障害前での拒否など過失があると減点になります。飛越の際の拒否が3回となると失権(3反抗失権)となりコース走行を途中で止めなければなりません。
 障害物は,各競技会ごとに趣向を凝らして作られ配置されますから,馬がどんな形や色にも驚かず飛び越えるように調教されていなければなりません。競技で1位が決まらない場合は,規定によりジャンプオフ(決勝競技)を実施することがあります。
<国体競技>
・標準障害飛越(成年男子,女子,少年)
・二段階障害飛越(成年女子,少年)
・スピード&ハンディネス(成年男子,少年)
・トップスコア競技(成年男子,女子,少年)
・ダービー(成年男子,女子,少年)
・団体障害飛越(少年)
・リレー(少年)
・六段飛越競技(成年男子)

 (3) 国体総合馬術競技

 国体総合馬術競技は,第1日目の馬場馬術競技(調教審査)・第2日目の障害飛越競技(余力審査)の2種の競技が2日に分けて行われます。馬場馬術競技は馬場馬術競技場で行われ,馬の技量と馬体の体勢が,次の障害飛越競技を行うに十分な調教がなされているか,審査するものです。障害飛越競技は障害飛越競技場で行われ,初日の馬場馬術競技をこなした後であっても,馬が競技を継続するのに必要な柔軟性とエネルギー,従順さを維持しているかを審査します。国体総合馬術競技は,この2つの総合成績の合計によって順位が決められます。
<国体競技>
 ・国体総合馬術競技(成年男子)

馬事衛生の取り組み

 全国から多くの馬が一同に会する国体馬術競技大会において,安全に大会を運営するためには,馬伝染性疾病の発生予防対策や蔓延防止対策を講じる必要があります。このため,県畜産課,家畜保健衛生所を中心に,真庭市や関係団体等が連携し,国が示す家畜防疫対策要綱中の「競馬等馬の集団飼育施設における衛生対策指針」に基づいて,馬事衛生に取り組みました。

 (1) 防疫衛生管理体制の構築

 畜産課長を本部長として,県下5家保を主体とした54名体制で図1のよう馬事衛生本部を組織しました。また,会場内に診療装蹄所を設置して,専門の診療獣医師,及び,装蹄師を配置し,大会期間中の参加馬の健康管理に努めました。
(図1)

 入厩馬の防疫基準は,畜産課,真庭家保,真庭市,県獣医師会,及び県馬連で組織する国体馬事衛生部会において,表1のように作成しました。この基準は,「第60回国民体育大会馬事衛生対策要項」に明記し,参加者に周知しました。
(表1)

 (2) 会場及び周辺の衛生環境整備

 会場を管轄する真庭家保では,世界的拡大が懸念されているウェストナイルウイルスについてサーベイランスを実施しました。7〜10月の間,毎月1回,午後5時〜翌朝10時まで,蒜山高原ライディングパークの馬飼育厩舎内にライトトラップを掛けて雌蚊を採取し,病性鑑定所に送付しました。その結果,表2のように,イエカ属を主体として,7月には149匹採取されたもののその数は月を追う毎に減少し,10月の調査では採取できませんでした。また,ウェストナイルウイルスはいずれからも検出されませんでした。

(表2)

 日本脳炎については,厚生労働省が実施している豚の日本脳炎抗体保有状況調査で,関東以西において高い抗体陽性率を示しております。実際,平成15年8月には,会場からわずか20qほどの鳥取県倉吉市で我が国18年ぶりとなる馬流行性脳炎が発生しております。
 以上のような会場周辺の衛生環境を受け,真庭家保管内で馬を飼育している方々に国体の防疫基準に準拠した対策を講じていただくようお願いし,快く対応して頂きました。
 大会前には,会場の厩舎や馬糞置き場,及び,その周辺に消毒剤及び殺虫剤を散布しました。

 (3) 参加馬の防疫衛生管理

<総務係>

馬運車と頻繁に連絡を取り合い、到着時間を正確に把握。混雑状況をみながら蒜山サービスエリアでの待機を要請
<輸送係>

会場手前では、馬運車などの車両を一旦停止させ、確認した後、混雑状況をみながら会場内への誘導を調整
<消毒衛生班>

会場入り口で車体を消毒
<防疫検査班>

会場入り口で馬運車に積載している馬の健康手帳及び乗馬登録証を預かり防疫検査を実施。これをクリアした後、馬や荷物を降ろすことを許可。事前に防疫基準確認を確実に実施していたため、入厩拒否する事態もなく、スムーズな確認作業 ができた。
<健康検査班>

馬運車から降ろされた馬は、健康検査班が乗馬登録証記載の特徴と照合するとともに、視診による健康検査を行い、確認後厩舎へ誘導

入厩許可

  1)大会前

 参加者には大会1ヶ月前の参加申し込みに併せて,入厩する可能性のある馬の健康手帳に記載されている検査,予防接種証明の写しや,日本馬術連盟が発行する乗馬登録証の写し等を提出することを義務づけました。これらの情報は,アクセスを活用して作成したデータベースに一元管理し,必要に応じて簡単に取り出せるよう整理しました。
 参加馬入厩時のトラブルを回避するため,前述のデータを基に事前検査を行いました。5家保で担当する都道府県を割り振り,防疫基準を満たさない馬が確認された場合には,該当する都道府県馬連に対し,必要な対応を指導しました。このため,大会当日までには,参加予定馬すべての書類による防疫確認が完了しました。

  2)大会当日

 入・退厩当日は,会場内が大変混雑することが予想されていましたが,馬事衛生本部各係・班の連携がよく,大きなトラブルもなく安全かつ円滑に業務を遂行できました。

  3)診療装蹄所

 診療については,複数の競技に重複して出場する馬が,疲労回復等の処置を受ける例が多く,競技開始日以降から件数が増えました。(表3)
 1頭の馬が,競技中に鼻出血を呈しましたが,運動性肺出血と診断され,その後の出場を取りやめました。装蹄については,競技場のコンディションが良好であったため,落鉄等の処置が例年に比べ少なかったようです。

(表3)

 以上の対策を講じたことで,大会期間中,安全かつ円滑な競技運営に寄与することができ,大会関係者をはじめ,参加都道府県や競技団体等から高い評価を頂きました。

今後の施設利用

 蒜山高原ライディングパークは,ジャージーランドを中心とした牧歌的な観光の拠点づくりを進める一環として,平成8〜9年度に整備し,さらに平成10年以降は国体馬術競技場としての充実が図られてきました。
 国体後は,一部の仮設施設が撤去されたものの,100頭以上を収容できる厩舎と,広い競技馬場及び1,700人分の観客席を備えた競技場は,蒜山高原の冷涼な気候と美しい景観,高速道路による交通アクセスの利便性や周辺に宿泊施設が充実していること等と相俟って,全国の関係者から注目を集めております。
 今後は夏季を中心に県内外から参加を集めた大きな馬術大会を,年に数回開催する計画となっており,これを機に,蒜山が全国に発信されることを期待しております。
 さわやかな牧場の風とジャージー牛乳と馬術競技観戦を楽しんで頂きたく,全国からのお越しをお待ちしております。

(この原稿は前岡山県国体・障害者スポーツ大会局,現真庭家畜保健衛生所 関哲生主任に寄稿いただきました)