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私の好きな数式

上野 満弘

 1月の下旬「博士の愛した数式」という映画を見た。数学教師になった息子が自分のことを√=ルートと呼んだ博士の思い出を語るというストーリーであった。
 私には好きな数式がある。標準偏差を求める式である。√S/n−1(計算式,関数と云うべきか?但しSは分散)。ヒヨコは体重測定をした時などに小型の電卓で計算することにしている。わざわざ農場にパソコンは持ち込まないから。
 昨年の暮れ,押入の片付けをしていたらタイガー手動式計算機が出てきた(写真)。
 錆び付いていないかとハンドルを回してみた。一寸ひっかかりは感じられるが,加減乗除の計算は正しくできた。
 それではルート計算は如何に,5の平方根はうまく計算できるかな?
1.先ずは 左端のレバーを5に移動して,右窓枠に5を入れて
2.続いて 左窓枠に入った9を払って
3.それから 左端のレバーを一旦1に戻してハンドルを逆回転1回,レバーを3に上げて逆回転1回,更にレバーを5に上げて逆回転1回(これ以上は進めませんと警告音,このような操作すると計算機は「ジャラ・ジャラ・チィーン」と軽快な操作音を響かせてくれる)。
 約5分間,3の操作を繰り返すことで何とかルート5=2.2360679が現れた。
 このような計算機の使い方は昭和39年東京オリンピックの時,福島県白河市の統計研修会で,夜遅くまで宿題に挑戦したことで覚えた技であった。
 体重成績をまとめる時の標準偏差の計算や,A飼料やB飼料はどちらが発育効果に大きいかを比較する時t−検定など,√計算の利用頻度は非常に多かった。たたき込んだ技や数式などは忘れるものではないようだ。
 ところが,昭和43年秋,卓上電子計算機なるものが身近に整備されると,キーボードから打ち込んだ数値が,√キーを押すだけで無音のまま瞬時にディスプレーに表示された。
 ちなみに卓上電子計算機の購入価格は33万円,タイガー手動式計算機は3万5千円(昭和28年から昭和45年製造終了までの間は同じ価格とのこと。当時はこの計算機が優等生であったらしい)。
 確か電子計算機になると計算速度は速かったし,昭和43年当時の機種は数字の並べ方で標準偏差を計算するプログラムが組めた。更に昭和47年に手元に届いた卓上電子計算機は約150万円であったが,√計算は磁気カードの中のプログラムが担当しており,標準偏差もt−検定も数値もロール紙に印刷してくれた。これは電卓というよりか現在のパソコンに近いものだと思う。
 パソコンとなるとデータを打ち込んで,ソフトに用意されている統計関数からSTDEVを選べば,即標準偏差が表示される。こうなると√など考える必要がないように思える。
 しかし,「ジャラ・ジャラ・チィーン」の手動計算機は別として,小型電卓の√キーを使いながら答えを求めるのは楽しい。例え計算時間が多くかかっても答えの意味が理解できるようになる。ヒヨコの先々が予想できるようになる。今年は孫の進学受験の年でもある。数学も英語も全教科についても偏差値が気になるお爺さんである。

(坂本産業株式会社勤務)