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〔家畜保健衛生所のページ〕

安心・安全な畜産物の提供と家畜保健衛生所の役割

岡山県岡山家畜保健衛生所

 平成13年9月の牛海綿状脳症(BSE)と平成16年1月山口県で発生した高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」)により,農林水産省の組織が再編されるとともに家畜の伝染病や家畜保健衛生所がマスコミに取り上げられました。山口のHPAIに伴って岡山家畜保健衛生所(以下「当所」)への問い合わせは,発生後3ヶ月間で500件を越えました。一般県民の方からこんなに多くの電話があったのは初めてであろうと思われました。
 「食料の増産」とともに「食の安全」が我が国の農林行政における大きな柱になっています。また,HPAIの対策は畜産だけでなく保健衛生部門など県全体で取り組む体制が作られています。こうしたなか,当所管内には県民の約半数の皆さんが生活・居住されています。そのため前述のような問い合わせ件数にもなり,食の安全に関しても積極的な取り組みが求められていると考えます。
 家畜伝染病の発生時にまん延防止を図ることは,家畜保健衛生所の最も重要な業務ですが,今日では地域住民の安全と生活環境の維持に努めることも大切な責務となっています。
 そのなかで,家畜伝染病予防法に基づく患畜等の焼却・埋却等は非常に困難な課題になってきています。そのため,当所では管内市町と協力して平成16年度から埋却を想定した検討を行ってきました。さらに,茨城県におけるHPAIの対応を参考に平成17年度から焼却処理を行うための課題などを関係機関と協議を開始したところです。
 また,京都府のHPAIでは,本県出荷の鶏が兵庫県の処理場で感染するなど現場業務として県域を超えた家畜保健衛生所の連携が必要となっていると考えられます。そこで,平成17年度から姫路家畜保健衛生所と当所及び津山家畜保健衛生所で定期的に県境防疫に関する協議を行うこととしました。
 一方,「食の安全」に関しては,本年5月から食品衛生法の改正にともないポジティブリスト制度が施行されます。全ての食品が対象になりますが,岡山県では生乳の取り組みが最も具体的にすすんでいるように思えます。乳質の改善には,当所ではこれまでも体細胞数の低減を主要テーマとして積極的に取り組んできました。
 これからは,「乳質の改善」だけでなく,生産販売する生乳の安全性の確保が求められることとなります。具体的な安全性の確保の考え方として,おからくのチェックシートを引用すると,「食品事故が発生した場合,自分を守る証拠」として記録・記帳を行うと書かれています。
 当所では,おからく西大寺事業所,岡山保健所などと協働により,モデル的に「生乳の安全・安心確立」に取り組む予定でいます。この活動を通じ,生乳生産の「食品事業者」として位置づけされた酪農家の皆さんの意識改革をすすめるとともに「食育」,「地産地消」などへつながっていけばと考えています。
 最後になりましたが,岡山家畜保健衛生所は4月から旧岡山家畜病性鑑定所と合併し,新生「岡山家畜保健衛生所」として職員数20名の家畜保健衛生所として誕生しました。関係者の皆さんの期待に応えるよう,家畜伝染病に関する検査,各種衛生指導など主要業務として一層の充実を図っていくとともに,先に述べましたように新たな業務にも積極的に対応することとしています。