ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2006年4月号 > 〔畜産農家の声〕「牛とわたし…」

〔畜産農家の声〕

「牛とわたし…」

高梁市宇治町  広金  愛


大池山育成牧場での哺乳体験の指導

 私が,酪農の道に,かかわるきっかけとなった出来事は,幼い頃,家族で蒜山にある酪農大学校に遊びに行った事でした。どこまでも続く草原と,草をはむ牛の姿が珍しくて,とても新鮮に,当時まだ幼稚園児だった私の目に,それはとても強烈に焼き付いたのでした。
 町っ子の私にとって身近な動物と言えば,犬,猫ぐらいと言う環境の中で,牛と共に暮らす生活とは,いったいどんなものなのだろうと想像を巡らしているうちに,いつの間にか農業という道に強い興味を感じるようになったのでした。
 しかし,私が本当の意味で酪農生活に係わるようになったのは,酪農大学校に在学中に知り合った主人と結婚したことでした。酪農大学校を卒業した後,牛の世界から離れて,デパートで総務の仕事をしていた私は,嫁いだその日に,牛舎に牛の顔を見に行き,なんだか,胸の暖まるような懐かしさを感じたのでした。その翌日から牛舎に入り,搾乳や哺乳をしながら妊娠と出産を繰り返し,いつの間にやら5年間で3人の子持ちになっていました。
 現在は結婚から7年たち,子供たちを学校に送り出しながら,家業の酪農のかたわら,高梁市にある大池山育成牧場に勤めています。大池山育成牧場は,とても標高が高いところで,同じ町内でも麓は雪なんか降っていないのに,この牧場は吹雪だったりします。現在およそ,180頭の育成牛を預かっていて,常在2人体制(スタッフ3名)で飼養管理,管理作業,人工授精業務,事務会計等を行っています。全面積は70ヘクタール程ですが,牛が牧柵を乗り越えて散歩に出たりしていると,牛を追いかけて,がっかりするほど走らねばならず,牛は,叫んでも届かないようなところで,ゆったりと草を食べていたりします。たくさん脱走していると,だんだんと,牛にからかわれているような気持ちになってきたりもします。冬場は寒いのか,家で飼っている牛とは比べものにならないほどの被毛を生やし,毛玉のようになっていたりして,牛の適応力に驚いたり,つい笑ったりもしてしまいます。
 現在,畜産界を取り巻く環境は必ずしも明るいとはいえず,生産調整や次々と耳にする様々な病気,輸入の問題など,一人一人の力で何とかなるとは言い切れない問題がたくさんありますが,毎日の仕事が楽しくて,明日をより良く思う姿勢がある限り,尽きることのない楽しさがこの仕事にはあるようだと,私は思っています。
 私は,この牧場に仕事にあがってくるようになって,実にたくさんの人と知り合いになることが出来ました。また,いろんな経験もありました。感謝する事だって楽しかった事だって大変だった事だって一杯ありましたが,2年たった今だって,興味が尽きることがないのです。もし今,「明日,どんな風にありたいの?」と尋ねられたなら,仕事はもっと要領よくこなして全てが順調,休みの日は難しい事なんか考えたりしないで,家族や親しい人と楽しく過して,疲れは明日に持ち越さない!経営は儲かって,仕事は面白くって面白くってたまらない!!と言うところでしょうか。(笑)


経産牛30頭の自家経営、夫婦で牧草収穫作業