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〔共済連便り〕

家畜診療日誌

津山家畜診療所 影山 毅

 今年の夏の長期予報は,例年並の暑い夏になるそうです。皆さん,暑熱対策を始めていますか?そもそもホルスタインの原産地はドイツのホルスタイン地方で気候は北海道に似ています。遺伝的には暑さに弱く,生産の落ちない温度の上限は25℃です。これ以上になると生産性が低下し,免疫力が低下していきます。病傷件数・死廃件数も7月から9月が多く,暑熱の影響を受けています。また,乳量・乳質も低下しています。
 牛は体温を逃がすために呼吸が速くなり,第1胃の熱産生を抑制するため採食量が低下します。特に乾物摂取量が低下しバランスがくずれ,ルーメンアシドーシス,蹄病,エネルギー不足になっていきます。そして乳量・乳成分の低下,卵巣機能・受胎率の低下を招きます。乾物摂取量が1s減少すると乳量は2s減少し,暑熱ダメージを受けた2日後が乳量に最も影響すると言われています。
 暑熱対策の基本は環境温度が牛に伝わるのを少なくする。牛の体熱を出来る限り外部に発散させる。牛の体内の熱産生を少なくするの三点です。それらの対策としてまず第一に,牛舎の換気・送風です。特に体感温度が重要で,これには湿度も影響してきます。牛に秒速2mの風を当てると体感温度は8℃下がります。首筋から背中に当たるようにファンを5頭に1台の設置が理想です。また,屋根からの輻射熱対策として畜産波板・寒冷紗,体熱発散の対策として 細霧,潅水,その他給水システム,代謝熱を低く抑える飼料給与,夜間の飼料給与,毛刈り,鉱塩・重曹の投与などがあります。
 暑い時期に診療中よくある光景として,換気扇の真下の牛がやたら呼吸が速かったり,暑い西日で夕焼け色に染まりながらうつろになっていたり,フリーストールで涼しい一点に牛群が団子状になっていたり,乳房炎・産褥熱・関節炎から知らぬ間に熱射病になっていたりといったところです。「今日の牛舎は暑いわ,汗がだらだらでる。搾乳少し遅らすか。」とひとごとみたいに言ってはいませんか? 牛は毎日,一日中その場所で耐えています。特に産前産後,呼吸速迫,足痛,食欲低下の牛がいたら応急措置として少しでも条件の良い牛床へ移動して下さい。ひとつの牛舎にも天国と地獄があるからです。
 年々暑さが厳しくなり暑熱の影響も深刻化しています。暑熱の影響で晩秋になってやっと受胎率が回復してきます。するとまた,暑い時期に分娩を迎えるという悪循環に見舞われます。今年こそ効果的な暑熱対策を実施して乳牛にとって快適な環境を目指しましょう。