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岡山県産生乳と平均気温の関係

岡山県畜産協会 生乳検査部

 生乳検査部においては,岡山県内で生産される生乳について各種の検査を実施しています。今回は,毎月3回の格付検査の成績について平均気温とどのような関係があるか検討したものの一部を掲載し関係者のご批判をいただきたく思います。
1.調査期間は,2003年1月から2005年12月までの3年間(格付検体数は約7,000検体)。
2.平均気温は,虫明,笠岡および奈義のアメダス月間平均値とした。
3.全固形分(TS)は各月の単純平均値とした。なお,無脂乳固形分のα値は1.0です。
 一般的に乳量や乳成分は気温と負の相関があると言われていますが,実際にどのような関係にあるのかデ−タで確認することは飼養管理あるいは今後大きな課題となる体細胞数の削減に対して有意義なことと思います。

 TSは12月あるいは1月が最高(12.95〜13.15%)で気温の上昇と逆にほぼ直線的に低下し7,8月で最低値(12.54〜12.58%)となります。各年度の最高,最低の平均値12.78%を示す気温は13.4℃となっています。
 別の調査で津山,岡山のアメダスによる不快指数は,6月で70%を超えることも判っています。牛の体温,飼育状況から考えて牛の生理的な臨界温度とされる25℃に近くなると推測されます。4,5月から早めに暑熱対策を開始するすることにより夏場のTS率,乳量の等低下防止に役立つと考えられます。
 9,10月から一気にTSは上昇を始めます。9,10月のTS値は,12.69〜12.81%で,2003年9月を除き平均気温は17℃前後です。
 脂肪率についても,ほぼ同様の結果であります。それぞれの大きな変化点となる平均気温は,14℃と16〜18℃と考えます。

 全格付サンプルのFPDと岡山県の主要酪農地帯に近い3地点のアメダス平均気温の関係を示しています。
 飼養環境(外気温も大きな要因)はFPDに影響を及ぼすと言われているが気温の上昇下降と逆相関の状態にあることがよくわかります。
 長い間のFPD測定結果から,岡山県の生乳の平均FPDは−0.525±0.005℃と推測されること基本認識にしてグラフを見ると,平均気温が14℃前後に上昇すると測定値が低下(温度としては上昇)し始めます。5月の平均気温が17℃に上昇すると測定値は−0.520℃となり,高温期のFPDは安定して−0.521℃前後で推移します。10月になり平均気温が17℃前後になると測定値が上昇(温度としては低下)過程に入り寒冷期には高い測定値を示しています。
 FPD測定値の変化点は平均気温で15℃前後と思われます。FPDの農家における測定値を評価する場合は岡山県の平均値,上記のグラフに示す季節的要因,牛群内の産歴構成および各個体の健康状況等を考慮し判断する必要があります。
 FPDの変化に関する季節的要因は,今後のFPDの考察に多くの示唆を与えたものと考えられます。


2005年の全格付サンプルFPD(氷温)と平均気温の関係

 格付検査の平均値は,県下の酪農家のFPDを反映しているものと考えます。格付検査の平均TSは寒冷期は13%前後と高い値を示し,4月になると12.8%前後の低下する。5月以降TSは12.6%前後に低下し9月まで低値で推移する。10月になるとTSは上昇してFPDの測定値も上昇していく。当然の結果ですが,FPDはTSの変化と正の相関を示すことが明らかになりました。
 FPDが大きく変化する、4月および10月のTSは,おおむね12.8%前後にあることも判明し,今後のFPD評価にこの結果も考慮する必要があります。


2005年の格付検査サンプルの平均全固形分と平均FPDの推移

 紙面の都合で脂肪率,無脂乳固形分,乳量および氷点に関するデ−タは省略します。