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酪農専門農協・畜産団体の組織改革に思う

前岡山県畜産協会専務理事 内藤 照章

 平成8年,県庁を退職して岡山県酪連・おからく・畜産協会にお世話になり10年余り経過しました。
 バブルの崩壊以降,大手銀行や大企業をはじめJAの合併や市町村の合併等急速に組織改革が進められて参りました。
 そのような流れの中で,県内の酪農専門農協の再編及び畜産3団体の統合,すなわち県内2つの畜産団体の組織改革を体験し,新生された「おかやま酪農業協同組合」並びに「(社)岡山県畜産協会」の最初の役員を勤めさせていただきました。
 新しい組織の運営に当たる役職員は,当然のこととはいえ旧組織の流儀がなかなか消え去らず,最初の1年間は寄り合い世帯の様相をぬぐい去ることが出来ないのが実態でありました。
 1年が経過し,定時総会に向けて事業報告や決算・次年度の計画を樹立する頃から次第に1つの組織として機能するようになることを身をもって体験しました。
 一方,私の体験した2団体についていえば,合併までに至る期間と1つの組織として機能するまでの期間に大きな温度差があったことも実感しました。
・設立までに長期間要した酪農専門農協の合併
 酪農団体の組織整備について振り返って見ますと,最初に単一酪農協構想の動きが出たのは,昭和39年に遡ります。その当時8専門酪農協の内6農協が県酪連を脱退し酪農専門農協を設立する動きになり酪農組織の大混乱を招きました。県の指導により「岡山県酪農組織整備協議会」が設立され協議された結果,将来の酪農団体のあり方について県の農林部長に答申され,それを受けて県から強力な指導があり,この混乱は収拾しました。
 答申の内容は,「将来は県一円の酪農専門農協を設立すべきであるが,急激な組織の改革を行うことは返って酪農民及び乳業界に混乱を招くおそれがあり慎重に進めること」とされております。
 その後しばらくは大きな動きはありませんでしたが,昭和60年に再燃し県酪連の中に「酪農組織整備検討委員会」が設けられ,検討が開始されました。
 しかしながら,総論賛成・各論反対論議が繰り返され,なかなか結論が出ない状況でしばらく推移しました。
 その後,指定生乳生産者団体のブロック化の話が具体化し,同時に県の酪農組織の再編についても具体的な検討が始まりました。
 本県でも,平成10年9月に「岡山県酪農専門農協合併研究協議会」が設立,12年7月「合併推進協議会」に発展し,新しい組織の骨格が示され,13年8月「合併予備契約」が調印され,14年4月1日「おかやま酪農業協同組合」としてスタートを切りました。
 このように振り返ってみると合併にいたる道のりは極めて長かったわけですが,農協法に基づき,目的や業務内容が概ね一緒の組織の合併であり,早く新組織として一体化されたように思います。
・国・県等の指導でスムーズに統合できた畜産協会
 畜産協会の合併は,平成10年農林水産省畜産局長からの「畜産経営支援指導機能強化事業実施要領の制定について」を受け,「畜産関係団体連絡会議」を設け協議を開始し,どちらかと言えば国・県等行政からの強力な指導により比較的スムーズに統合の話は進みました。
 具体的には,平成13年度に再編統合予定の(社)岡山県畜産会・(社)岡山県家畜畜産物衛生指導協会・(社)岡山県肉畜価格安定基金協会の3団体による「岡山県畜産関係団体組織再編整備推進協議会」が設立され,再編整備に向けた具体的検討が始まりました。
 それを受けて岡山県農林水産部から「畜産関係団体組織再編方針について」基本的方針が示され,13年度末に「岡山県畜産団体再編基本構想」が承認され統合の枠組みが決定しました。
 平成14年度には3団体の合同役員会が開催され,統合の手続・定款・統合に関する協定書等について,共通事項について確認され,統合手順が大きく前進しました。
 12月下旬各団体の理事会,臨時総会の議決の後農林水産省・農畜産業振興機構等関係団体と調整し,15年1月存続団体の定款変更申請の後3団体による統合に関する協定書の調印を行い,15年4月1日に新生岡山県畜産協会としてスタートしました。
 したがって,統合の話が出てから満5年で実現したことになりますが,統合後の組織の一体化については,いまだ旧組織の流儀が拭い去れず合併のメリットが十分発揮されていないのが実態です。
・酪農専門農協の合併と社団法人(畜産団体)の統合
 一般に組織再編は,同じ目的で設立され同じ事業をしている組織同士が統合するのであれば,比較的スムーズにことが運ぶことを実感しました。
 酪農専門農協の合併は,農協法に基づき目的や業務内容等は概ね同じであり合併後の新組織に比較的スムーズに移行できますし,それぞれの組織で重複して実施していた業務を一体化することにより合理化が図られ,合併のメリットが追求しやすいと思います。
 一方,社団法人(畜産団体)は,それぞれ目的を持って設立された法人であり,業務内容も団体ごとに異なるため,統合のメリットが出しにくい体質にあり,いまだに業務ごとには完全に縦割りで,旧組織を張り合わせた形態が続いており,合併化できたのは総務・経理部門ぐらいです。
 更に,これまで行政を補完する業務が主体で,独自性のある業務や自主財源の少ない体質にあったため,組織自体で計画性を持った事業を行いにくい一面もあったように思います。
・畜産協会を退任するにあたって
 畜産の担い手,いわゆる畜産農家は,総数で1,485戸(酪農503戸,肉用牛821戸,養豚35戸,養鶏126戸)の時代。
 規模拡大が急速に進んでおり,経営指導・衛生指導・価格安定対策等について統合的・専門的な指導や対策への期待が高まっております。
 また,最近特に安全・安心な畜産物を安定的に消費者に提供するシステムの構築や,生産者・流通業者・消費者が相互理解する体制の整備,地産地消の推進等畜産協会に求められる役割も次第に幅広くなっております。
 私は,統合して最初の専務理事としてお世話になり,大変責任の重さを感じるとともに緊張した約3年余でありました。
 その間,運営の合理化や統合のメリットが発揮できるよう努めて参りましたが,十分機能するまでに至らなかった事について少し心残りな点もありますが,どうか新執行体制のもとで,真に畜産農家のために期待される組織として発展されますよう祈念しております。
 ありがとうございました。