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〔県民局だより〕

庄地区無農薬研究会の取り組みについて

備中県民局畜産班

 耕種農家でのたい肥利用の最大の課題である散布作業を軽減するために,その作業受託集団を育成する「たい肥を活用!おかやまブランド農産物応援事業」が創設されました。今回は,倉敷管内でこの事業に取り組むこととなった,倉敷市の有機無農薬生産集団の庄地区無農薬研究会の取組についてご紹介したいと思います。
 庄地区無農薬研究会は,平成13年に有機JAS農産物の認定生産行程管理者となり,現在は,倉敷市,総社市の約7haで水稲の有機無農薬栽培を行っています。朝日米,ヒノヒカリ,ミルキークイーンの3品種を中心に栽培しています。会員の生産量の約半数を東京や大阪の米販売店へ直接販売し,残りを生産者各自が県内の消費者に直接販売する体制をとっております。価格は,通常栽培米の約2倍程度の価格(約22,000円/60s)で販売しています。研究会では,地元酪農家の尾崎壽さんから有機JASに対応したたい肥を購入し,平成15年度に導入した自走式マニュアスプレッダーで散布を行っています。今年度は,有機JAS認定ほ場への散布予定ですが,来年度以降は員外の散布受託も計画に入れる予定にしています。
 「農業の基本は土づくり」と自信を持つ会長の塩田源一さんは,1.5haで有機米を栽培しています。「田から取れたものは田へ」の信念のもと,稲ワラ,モミガラ,雑草を鋤きこみ,足りないものをたい肥で補うという,資源循環型の農業を実践しています。収穫量は10a当たり約7俵と慣行栽培と大差なく,高い収益性を確保しています。心配される雑草対策も,除草効果のある米ぬか,小米,くず大豆の有効活用と水管理により効果を上げています。
 塩田さんが有機農業に取り組み出したのは約20年前のことです。当時,病院で病変の組織標本を作る仕事をしていました。若くして亡くなる人もいました。勤務先の医師から「病気には毎日の食事が原因の一つである」と,食の大切さを教えられました。また,農作業を手伝っていた奥さんが体の不調を訴え,急性農薬中毒と診断されました。これらのことから,自分の家庭で消費する米ぐらいは無農薬で栽培してみようと思ったのがきっかけです。消費者の安全・安心思考の高まりと,全国でも先駆け的な岡山県の有機無農薬農産物の推進体制にのり,次第に栽培面積を増やしてきました。研究会の仲間も増えて4名となっています。
 無農薬栽培の取組みを初めて20年が経過し,67歳になった塩田さんは,「あと10年百姓ができるかな。有機栽培は労力がかかり,雑草の管理が大変だと誤解されている。土づくりをすれば追肥作業はいらないし,雑草対策も確立されている。そんな誤解を取り除き,将来は有機農業を広める指導員のような仕事をしたい。」ということでした。
 今年度,倉敷地域では,倉敷市,総社市や普及センターの協力を得て,庄地区を含めて2つの組織で事業に取り組むことになりました。今後,このような畜産農家と耕種農家と連携した取組が広がり,たい肥利用の輪が大きくなればと思います。