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〔普及の現場から〕

「簡易曝気処理による低コスト牛尿液肥化技術確立の取り組み」

東備農業普及指導センター

1 はじめに

 酪農経営では,尿散布時の臭気発生が問題となっており,その結果,尿の有効利用が限れられるだけでなく,散布可能な一部のほ場への過剰散布による飼料作物の品質低下などの問題もあります。そこで,東備畜産研究会では平成17年度の夢農業チャレンジ事業で牛尿の簡易曝気処理の実証施設を設置し,この技術の確立と普及を図っていますので,この取り組みについて紹介します。

2 簡易曝気処理の概要

 (1) 実証農家の概況
・赤磐市Y牧場(経産牛28頭飼養)
・飼料作物340a,飼料イネ45a,水稲90a
 (2) 液肥化処理の概要(図)
 バーンクリーナーでふん尿分離された尿は牛舎内の尿溜に貯留され,週1回程度牛舎から約2q離れた実証施設までバキュームカーで運搬します。
 原尿タンク(1k)の尿を1〜2日かけて曝気槽に投入します(無希釈)。
 曝気槽は中古のFRPサイロ(5.9k×4基=23.6k)を利用し,ロータリーブロア(0.75kw,
送風量550k/分)で24時間曝気することにより臭気の軽減を図ります。
 処理後は液肥として作物に施用します。

 (3) 設置コスト(消費税込み)
・原尿タンク    1個   51,240円
・曝気槽FRPサイロ  4槽 30,000円
・ブロアー     1台  126,000円
・散気管      12個  50,400円
・水中ポンプ    1台  38,850円
・電気工事費(配電盤)   94,500円
・配管・設置工事費他   119,700円
   合計        510,690円

 設置コストは工事費を含めても1頭当たり約18,000円であり,自家施工でやればもっと低コストでの施設が可能となります。

3 これまでの調査結果

 (1) 設置経過
・17年8月下旬:電気工事と曝気槽の設置。
・9月下〜10月上旬:配管と機械の設置。
・10月中旬:第1曝気槽に希釈尿(尿:水=1:10)を加えて運転を開始。
・11月下旬:活性汚泥の生成が確認できたため,原尿タンクから尿の投入を開始。
 (2) 活性汚泥の生成
 曝気時の臭気の発生を少なくし,適切な液肥化処理ができるように,活性汚泥の生成がみられるまで尿の投入はしませんでした。
 約1ヶ月で活性汚泥ができたため尿の投入を開始しました。
 投入時の活性汚泥率(SV30)は10%程度でしたが,尿の投入後は25〜30%に達しました。

 (3) 臭気の発生
 運転開始からの1週間はアンモニア臭が発生しましたが,その後は収まりました。
 活性汚泥の生成が始まってからは尿を投入しても臭気発生はほとんどなく,検知管でのアンモニアも2ppm以下でした。
 (4) 泡の発生
 運転開始時は著しい発泡がみられましたが,2週間程度で泡は少なくなりました。
 その後,尿を投入してから数日間は発泡が多く,特に12月下旬からは発泡が著しくなり,曝気槽が溢れ出すこともあり,外気温の低下による汚泥微生物の活性低下などの影響であると思われました。

 (5) 原尿と液肥の成分
 処理前後の尿の成分分析結果は(表)のとおりで,汚濁物質はかなり低減されていました。(分析:岡山県環境保全事業団)

 (6) ランニングコスト
 1か月の電気代は24時間連続曝気で7,000円(250円/頭)程度です。

4 液肥の利用実証

 (1) 飼料作物への施用
 イタリアンライグラスの追肥として1t/10aを散布しました。
 液肥は処理途中のものでしたが,散布時の臭気はほとんど感じられず,検知管でのアンモニアも0.2ppm未満でした。

 (2) 飼料イネ・水稲への施用
 飼料イネには代かき時の基肥に1.5t/10a,出穂前の追肥に2t/10aを,また食用水稲には追肥として2t/10aを水口から流入施用し,現在,農業総合センターや総合畜産センターと協力して調査を行っています。

5 おわりに〜今後の方向

 簡易曝気処理により,低コストで牛尿の臭気低減が図られ,気軽に液肥として散布できることが実証されました。
 今後は,低温期の発泡対策や飼料作物以外の作物への利用方法をさらに検討していくとともに,技術の近隣地域への普及を図っていくことにしています。