ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2007年1月号 > 〔共済連だより〕家畜診療日誌

〔共済連だより〕

家畜診療日誌

岡山西南家畜診療所 岩原 幸治

 早いもので獣医師を志して40年が経過しました。思い起こせば中学2年の時,我家の和牛に往診に来られた獣医師の白衣姿が山奥の紅葉に映えて決意してしまいました。
 あれから40年!!家畜診療所に,地元の中学2年生を職場体験で受け入れています。この11月に女の子ばかりで3名,4日間という日程でやって来ました。主旨は豊かな心を育んだり,自分の生き方を考える機会にしたいとのことです。さほど物おじせず,真剣な眼差しで我々の一挙手一投足を見つめています。子牛を見つけると嬉しそうにかわいがり,起立不能の廃用牛の行く末を告げると涙している。経済動物の現実を垣間見たと思います。
 40年前,牛乳は貴重な飲み物であり,中学校で配布されるビン牛乳,フタに付いた脂肪を舐め,我血肉に変え成長期の栄養源にしていました。
 あれから40年!!水より安くなり,メタボリックシンドローム症候群などとカロリーの高い物が悪もの扱いにされ,野菜と輸入物が増大し,農薬がそれでも心配とポジティブリスト制度が始まりました。
 以前は稲わらなど自給飼料中心に小規模農家が多数で生産量を維持していました。一頭一頭の価値が高く,隣近所で助け合い,宴会が頻繁に開かれ獣医さんも助ければ神様,殺せばヤブへ入りたい状況だったでしょう。
 あれから40年!!牛乳の消費が低迷し生産調整を重ねる度小規模農家がリストラされ,しだいに大規模な工場化へと進化しています。獣医師は個体から群へと,そして繁殖・予防等栄養管理が指導できる専門的知識が要求されています。
 共食いから発生したBSE,輸入に依存した畜産経営,農家数の減少,糞尿汚染等,若き中学生の初々しさが40年前を振り返らせ「温故知新」今の畜産環境をどうしたら良いのかヒントがあるかも知れないと感じさせられました。
 40年前和牛繁殖農家は多く,良い雌子牛は共進会で上位入賞すれば高額でしたが,一般価格は低迷していました。
 あれから40年!!和牛農家は激減し希少価値が高くなり,肉の芸術品とまで呼ばれ高額な商品となりました。
 今ヤギの乳がアレルギーに良い,病気に強くなるなど健康に優れた食品と呼ばれています。牛乳は飲み水の良くない国々に,ワインと共に発展してきたと聞いています。脂肪率を下げて風味とか,日本の野草を食べた自然の微量要素を含んだ健康食品として,哺乳類である人間にしっかり服用して頂きましょう。
 畜産農家数の減少で,多頭飼育農家だけに生産量を頼っていいのでしょうか。担い手政策は,コストを下げて生産量を確保する狙いでありますが,リストラに拍車が掛かると思います。
 地域は益々荒廃して,タヌキ・猪・熊が出没し,住み分けができないこんな状況がよく報道されています。一方,新規就農者を募集したり,団塊の世代の就農に期待されています。
 動物を飼って自然を利用しながらやるのが畜産の原点でしょう。ついでに今の日本の病んだ心も小規模畜産が救える様に思えます。
 彼女らが最後に「どうしても獣医師になりたいです」と言って帰って行きました。これからの40年,精一杯寿命があるまで頑張りましょう。