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〔普及の現場から〕

「牛が喜ぶサイレージづくりを目指して」

岡山農業普及指導センター

1.はじめに

 岡山管内の酪農家では,飼料稲や稲ワラをロールベールサイレージに調製して搾乳牛に給与しています。中でも幸田地区生産組合では,平成16年から嗜好性と品質の向上に手作り乳酸菌(※)の製造と添加実証を行っています。以前にもこの紙面で乳酸菌の作り方を紹介しました。今回は,これまでの手作り乳酸菌添加の結果と,収穫機の違いによる発酵品質の違いも併せて検討しているので紹介します。
※FJLB=付着乳酸菌事前発酵液

2.飼料用稲・稲わらへの乳酸菌添加効果

 飼料用稲(ヒノヒカリ)と稲ワラをロールベールサイレージに調製する際,乳酸菌(FJLB・市販)を添加し,無添加の場合と比較しました。菌の添加は,専用収穫機の添加装置またはロールベーラーに市販の添加装置を装着して添加しました。手作り乳酸菌は,飼料稲と稲ワラでは別々の日に作った物を添加しています。飼料稲は,長期保存の確認のため9ヶ月後に,ワラは4カ月後にラップを開封し,総合畜産センターや岡山大学の協力で発酵品質と乳酸菌数の分析をしてもらいました。以下は試験区の内容です。

@飼料用稲への添加結果

 官能検査では,乳酸菌を添加した区は無添加に比べて良好でした。
 pHは,全ての区が4で差はありませんでした(グラフ参照)。乳酸菌数は,やはり添加区で多くなってます。酵母をみるとFJLBが最も低く,これは好気性菌を抑えていて,他よりもカビが生えにくくなっていると考えられます。長期保存ができ,夏場の品質保持に効果があるかもしれません。

A稲ワラへの添加結果

 官能検査では,乳酸菌を添加した区は無添加に比べて良好で,FLLB,市販乳酸菌はほぼ同等でした。pH,乳酸菌数はFJLBが一番良好でした(グラフ参照)。しかし,良質サイレージの基準となるpH4.2以下のものはありませんでした。また,好気性菌である酵母はFJLBが最も多くなってます。原因ははっきりとはわかりませんが,添加した乳酸菌を作る際,材料となる稲の茎葉に土がついた株元から使ったこと,作ってすぐでなく一週間おいたものを使ったことが一因ではないかと推測しています。土壌菌は良質な乳酸発酵を妨ぐ要因となります。また,土がついたものを利用すると液をろ過する時に作業労力がかかった上,添加装置の噴射口が詰まりロールへの添加量も一定になりませんでした。

Bまとめ

 良質なサイレージ調製は,pH4.2以下に下げることで不良発酵を防ぐことが最も大切といえます。手作り乳酸菌は,他の添加剤と比較してpHを一番下げる効果があり,長期保存が利き,牛の嗜好性も良好でありました。また,乳酸菌の種類・添加の有無にかかわらず,分析されたロールの中には大腸菌群が検出されたものがありました。分析機関によると,大腸菌と類縁の群を調べただけなので即ち危険ということではないが,望ましくはないということでした。牛の調子が悪くなったときに原因の一つとして疑ってみる必要はありますが,農家によると特に問題は出てないようです。そのため,乳酸菌を使う際もきちんと製造したものを,すぐに使うことが大切です。

3.収穫機の違いによる発酵品質比較

 飼料用稲の収穫調製を,カッティングロールベーラーと飼料稲専用収穫機(フレール型)で乳酸菌を添加して行い,4ヶ月後にラップを開封し品質を比較しました。
 官能検査では専用収穫機の方が良好でpHも4.2以下となりました。
 ロールベーラー体系では土の混入があり,細断もできないため発酵品質が劣るものと思われます。給与農家によると,専用収穫機で調製した方が機密性があり,嗜好性も良好だったそうです。

4.おわりに

 手作り乳酸菌(FJLB)の心配な点として,作り方や条件によって菌叢が変わる不安定さがあります。ただ,過去2年間の実証で,FJLB添加でも十分なサイレージ発酵しており,牛の嗜好性やコスト面からいっても添加効果があると考えています。他県では,手作り乳酸菌をTMRの給与時にかけて夏場の採食量減防止に応用しているところもあるそうです。今年も,幸田地区生産組合では,牛の喜ぶサイレージ作りをめざして,手作り乳酸菌を添加しています。また,フレール型の飼料稲専用収穫機を導入して,イタリアンライグラスやスーダン収穫への汎用試験を行っており,調製方法の違いによる牛の嗜好性調査を行っているところです。

参考:手作り乳酸菌(FJLB)の製造方法

100L(=約1ha分=稲約20t)

 @新鮮イネ茎葉(5s)を細切し,ネットに入れる。
 Aタンクに水と砂糖(2s)を入れる。
 BpH4.2になるよう酢(0.5L)を少しずつ加えて調整した中に@を入れる。
 C25〜30℃で2日間発酵させる。
 DpH3.5になったことを確認し,ネットを取り出し,ろ過する。
 E添加前に砂糖(3s)をさらに追加する。
 F収穫時に飼料イネに噴霧する(材料草の0.5%添加)

《ポイント》茎葉は,株元から刈らず,土が着いていない部分を使う。酢を入れる際は少しずつ。製造後は4日程度で早めに使うこと。添加装置や機械の洗浄を忘れずに。