ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2007年1月号 > 福井幸平さん(新庄村)農事功績者として緑白綬有功章を受章!

福井幸平さん(新庄村)
農事功績者として緑白綬有功章を受章!

美作県民局真庭支局地域農林水産室畜産班

 去る平成18年11月17日(金),社団法人 大日本農会による「第90回農事功績者表彰式」が,東京都港区の石垣記念ホールにおいて,同会の総裁 桂宮宜仁親王殿下御臨席の下,盛大に行われました。
 今回,岡山県の農事功績者として,栄えある「緑白綬有功章」を受章したのは,新庄村の和牛繁殖経営 福井幸平さん。表彰式には,長年にわたり夫婦二人三脚で幸平さんを支えてこられた奥様の孝子さんとともに出席されました。

 大日本農会は,明治14年(1881年)に「農業の経験や知識の交換を通じて農事の改良発展を図る」ことを目的に,日本初の全国的な農業団体として創設されました。農事の改良に顕著な功績のあった農業者等に対する表彰を行う農事功績者表彰制度は明治27年(1989年)から設けられ,今回で第90回を数える伝統と格式ある賞です。


(写真1)福井幸平さんと最大の功労者の孝子さん
(なお、孝子さんには、2005年11・12月号の「畜産農家の声」に寄稿していただいておりますので、そちらもご覧下さい)

 今回,福井さんが受章に至ったポイントは次の2つです。

(1)受精卵移植技術に先駆的に取り組み,繁殖雌牛群の効率的な改良や自動哺乳機による和牛ET産子の省力多頭管理を実践した。
(2)地域和牛生産者のリーダーとして,その高い見識と先見性,指導力を遺憾なく発揮し,和牛の生産振興に貢献している。

 福井さんの数々の功績の中でも特に高く評価されたのが,受精卵移植技術の可能性にいち早く着目して仲間たちとともに『新庄村受精卵移植推進協議会』を立ち上げ,村内酪農家との連携によるホルスタイン種雌牛への和牛受精卵の移植に先駆的に取り組み,乳肉双方の経営がメリットを享受できる効率的な和牛ET産子生産のモデルを確立したこと。及び,その成功事例が県内各地に波及し,多くの和牛生産者が受精卵移植技術のメリットを享受できるようになるきっかけとなったことでした。
 この『新庄村受精卵移植推進協議会』による乳肉連携の確立については,表彰式に出席された来賓の皆さんからも次々と質問が出るなど,高い注目を集めていました。
 また,福井牧場では,御夫婦お二人で繁殖成雌牛12頭の経営規模ながら,自動哺乳機の活用による和牛ET産子の省力多頭管理により,昨年は23頭の子牛出荷を実現しています(自家保留牛等も含めると30頭規模の生産!)。さらに,去勢・雌子牛ともに県平均を上回る価格で販売しており,うち3頭は子牛市の最高値を獲得しました。
 自動哺乳機の導入当初には,参考にする先進事例や試験研究データもほとんどない手探り状態の中で,下痢の多発や発育不良に悩まされたそうですが,持ち前の粘り強さで日々の観察と情報収集を積み重ね,試行錯誤の末に問題点を克服されました。

 福井さんは,「この賞は,地域の仲間たちとがんばってきた成果であり,自分個人ではなく,これまでいっしょにやってきた仲間たちみんなでいただく賞だと思って東京に行きたい」とあくまでも謙虚。この謙虚で誠実なお人柄こそが,立場や考え方の異なる仲間たちとともに,和牛ET産子生産モデルを確立できた原動力であろうと思われます。
 そして何よりも,福井牧場の発展の歴史には,繁殖成雌牛の管理を一手に引き受け,幸平さんの最大の理解者であり続ける孝子さんの支えがあったことを忘れてはいけません(>幸平さん)。
 今回の受章を機に,福井さん御夫婦がこれまでにも増して新庄村の畜産の発展と真庭地域の和牛生産の振興に貢献されるとともに,次世代を担う若い世代の良き目標・相談役としてますます御活躍されることを祈念しております。
 福井さん,本当におめでとうございました!


(写真2)緑白綬有功章と表彰状