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〔畜産農家の声〕

「牛も人も健康に」

和気町吉田 石野 和枝

 秋晴れの空の下,牛たちは皆ゆっくりのんびり草を食べています。岡山藩主池田家和意谷墓所の手前,水田に囲まれたわが家のまわりの日常の風景です。
 この夏から作り手のなくなった近くの水田を借りて放牧を始めました。8区画で2ha余り,区画整理された広い水田は雑草で覆われていましたが,相性の良い牛を2頭づつ組み合わせて放すと,見違えるほどきれいにしてくれます。
 最初は,水田での電牧で周りを囲んだだけの簡易な放牧に色々心配していましたが,これまで事故も苦情もなく,それどころか道行く人が車を止めて牛を眺め,自転車の親子連れや中学生もよくやって来るようになりました。何よりうれしいのは近所の人達の牛を見る目が変わってきたことで,牛に話しかけたり草をやってくれたり驚くことばかりです。そのような人達に迷惑をかけないように,臭いやハエに余計気を配っているような状況です。
 わが家が酪農から和牛繁殖に転換したのは平成15年,徐々に増頭して丸3年で現在は成牛24頭,育成牛2頭,子牛11頭になりました。自家産のボカシのおかげか子牛の下痢がなくなったのは何よりですが,酪農とはまったく違う世界のわからないことばかりで今だに頭を痛めてます。血統,交配方法など勉強しなくてはいけないことがまだまだありますが,優良牛を増やし肥育農家に喜んでもらえる子牛を作るのを目標にし,10年後を楽しみに頑張りたいと思います。
 これまで無事にやってこられたのは諸先輩や関係機関の方々のおかげとあらためて感謝申し上げます。
 年中無休で働き続けた30年の酪農人生でしたが,和牛繁殖に転換し一息ついたところで疲れがでたのか体調を崩し,私はこの夏に長期休暇をもらいました。24時間を自分のためだけに使い,今までやりたかったことがほとんどできました。しかし,何か違う?楽しくない。牛の世話をしているのが一番楽しいと改めてわかりました。趣味は忙しい合間にするから楽しいのかもしれない。秋になって,主人といっしょに牛飼いができるようになり,本当に幸せを実感しています。
 もう一つうれしいことがあります。一年中で一番忙しい時期だったので,私が休んでいた代わりに牛の世話を娘が手伝ってくれ助かりました。その娘が今自然の中で働く喜びを少しずつ感じているようで,慣れない仕事を楽しそうにやっています。
 後継者にしたいとは言いませんが,この経験を活かしてこれからの人生を力一杯歩んで欲しい。素敵なパートナーを見つけて。
 人も牛も健康が第一です。これからは,初心を忘れずに,人生を楽しみながら,牛を飼いたいと思っています。
 「人も時間も大切にして,ゆっくりと。」