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〔家保のページ〕

出荷制限期間のない経産牛の発情同期化方法の検討

岡山家畜保健衛生所

 受精卵移植の実施に際し,移植頭数の増加および受胎率の高い新鮮胚の利用に対応するため,受卵牛の発情を同期化し同時に複数頭の移植を実施する機会が増加しています。
 現在,発情同期化方法には,膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)を14日間留置する方法,プロスタグランジンF2α(PG)を投与する方法,さらに,オブシンク法,シダーシンク法等とPGを併用する方法が多く活用されています。
 CIDRのみでの同期化は,経産牛では発情排卵がスムーズでなかったり,発情開始時期にバラツキがあり,移植の実施率が低下します。よって,近年はPGを使用する方法で発情同期化を行う機会が多く,成果も確認されています。
 しかし,PGを使用した場合,投与後1〜2回分の生乳を廃棄する必要があります。複数頭の乳を廃棄することは酪農家にとって経済的損失が大きいのみでなく,別搾りの必要性,廃棄方法等負担は大きいものとなります。
 そこで,子宮注入用ヨード剤を子宮内注入した場合,投与後7〜10日前後で発情がしばしば見られることから,この出荷制限期間のない子宮注入用ヨード剤とCIDRを併用することで,特定の日に発情を誘起することが可能と考え,受卵牛の発情の同期化を試みました。

実施方法

 方法は図1に示すとおりで,CIDRシンク法を参考に,発情誘起日の9日前に子宮内にヨード剤を50ml注入し,同時にCIDRを挿入します。7日間留置し,発情予定の2日前に可能な限り直腸検査を行い,卵巣所見より抜去のタイミング及びPG投与の必要性を判断し行いました。その後は通常と同様に検診し受精卵移植を行いました。


図1 ヨード剤使用同期化方法

結 果

 23頭で実施しましたが,3頭は黄体の退行が不十分と判断し,PGの投与を行い発情を誘起しました。残りの20頭にはPGを投与せず,17頭で発情が確認されました。発情を示した17頭のCIDR抜去後の発情までの日数は,翌日1頭,2日目14頭,3日目1頭で,大半で目的とする2日後に発情が認められました。PGの投与を行わなかった20頭の発情の状況は表1のとおりです。
 処理開始時の状態別に発情の状況を比べてみると,処理開始時が発情終了後から黄体期のものでは,途中でCIDRが脱落した1頭を除き14頭で発情が見られました。開始時に卵胞のみ触知出来たものは,分娩後性周期を繰り返していないものが主体と考えられる牛ですが,4頭中3頭で発情は見られましたが,2頭は不明瞭であまり良好な結果は得られませんでした。また,発情期の1頭では明瞭な黄体が形成され,発情は見られませんでした。ここで発情が不明瞭と判断したものは,直腸検査で卵胞及び子宮の状態が明瞭でなかったが,排卵もしくは黄体形成が確認されたものです。
 黄体の形成状況は表2に示すとおりで,移植可能な黄体は発情が明瞭だったものでは13頭中12頭で形成され,11頭で移植を行い,現在までに4頭の受胎を確認しています。発情兆候が不明瞭だったものでも,黄体は4頭中3頭で形成されていたので移植しましたが受胎は得られませんでした。
 月別の処置頭数と発情から受胎までの状況は,PGを投与した3頭も含めて23頭でみてみると,5月から6月にかけ5頭を処置しましたが,発情は全頭で確認され,黄体も4頭で形成されており,移植をした結果,3頭で受胎が確認されました。供卵牛の兼ね合いで牛が暑熱の影響を最も受ける8〜9月の処理が多くなりましたが,3頭には機能黄体が残存しPGの投与が必要でした。発情徴候が不明瞭だったものもこの時期に集中しました。
 その後は,まだ受胎確認に至ってませんが,発情及び黄体形成は順調にされています。

表1 発情成績

表2 黄体形成成績


図2 月別成績

考 察

 処理頭数23頭中,3頭で黄体の退行が不十分と判断しPGを投与しましたが,3頭とも実施時期が8〜9月の暑熱期で牛のコンデションが大きく影響したと思われます。
 発情時に処置を開始した1頭については,黄体を形成し,発情を誘起出来ませんでしたが,排卵後のものは誘起が可能でした。これは,採卵を行う場合,発情時にヨード剤を注入することが従来から行われていますが,発情時に注入しても黄体は形成されます。しかし,排卵直前から排卵後に注入したものでは黄体が形成されないことは何度か経験しており,結果はうなずけました。
 PGを投与しなかった20頭中17頭(85%)で発情が見られ,正常に卵巣が機能しているものでは良好な結果が得られました。
 さらに発情を示した17頭中15頭(88%)で移植可能な黄体を形成しました。これも,現在の当家保の移植率を若干上回る結果になっています。
 受胎率は確認済みのもので40%ですが,暑熱期の実施が多かったことと貴重な受精卵であり低ランク胚も移植しているため,若干低い結果になっていますが,処置開始時に性周期を繰り返している牛では概ね良好な結果になっています。
 以上のことから,ヨード剤と黄体ホルモン製剤を併用することで発情の同期化は可能で,PGの使用を最小限に抑えられ,乳の出荷制限を伴わない発情同期化方法として期待出来ます。
今後,さらに例数を重ね,現場への普及を図りたいと思います。