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高病原性鳥インフルエンザ発生に係る防疫措置について

岡山県農林水産部畜産課

 本年1月29日に,県内で初めて高病原性鳥インフルエンザが発生しましたが,発生以来,地元高梁市や農業団体等の関係の皆様に多大なご協力をいただき,迅速かつ適確に防疫措置を講ずることができ,また,懸念していた風評被害についても,県民の皆様に冷静に受け止めていただき,消費への影響もほとんど生じることはありませんでした。
 農場主からの早期通報をはじめ,こうした本県の対応は,「今後のモデルケース」になるとの評価も得ているところであり,本稿では,発生の概要と多くの皆様にご協力をいただいた発生農場での防疫措置等の一端を紹介します。

1 発生農場及び周辺農場等の概要

 発生農場は,約11,300羽を飼養する採卵鶏農場で,半径10q以内の周辺には採卵鶏農場16,肉用鶏農場2があり,合計約95万羽が飼養され,併せて1つのGPセンターと2つの食鳥処理場があった。

2 疑い事例の発生から確定診断まで

(1)1月27日(土)

 当該農場主から高梁家畜保健衛生所に「死亡する鶏が多い(26日2羽,27日13羽)。」との連絡があり,直ちに高梁家畜保健衛生所が立入検査を実施し,検査材料を岡山家畜保健衛生所へ送付した。
 岡山家畜保健衛生所における簡易検査で陽性が判明したことから,当該農場の隔離と半径10km以内の農場へ鶏や卵等の移動自粛を要請した。

(2)1月28日(日)

 岡山家畜保健衛生所においてウイルス分離を行い,検体を動物衛生研究所(茨城県つくば市)に送付した。(検体の送付は真夜中となるが,動物衛生研究所に24時間体制での受け入を依頼。)
 なお同日,県知事出席のもと対策連絡会議を開催し,対応内容を確認した。

(3)1月29日(月)

 H5亜型のA型インフルエンザであることが確定し,直ちに県知事を本部長とする県対策本部を設置するとともに本部会議を開催した。また,備中県民局高梁支局に現地対策本部を設置し,発生農場を中心とする半径10q以内の鶏等の移動制限,発生農場の消毒,主要幹線道での消毒ポイント設置等,防疫措置を開始した。

3 発生農場に係る防疫措置

(1)消 毒

 簡易検査での陽性判明後,1月28日に逆性石けん液の散布による農場全体の消毒を実施した。
 確定診断後,発生農場での殺処分等の作業の前後に同様の消毒を毎日実施し,埋却作業終了後の2月7日に消石灰の散布を含めた消毒作業を実施し,一連の防疫措置を完了した。

(2)評 価

 殺処分及び汚染物品の埋却処分実施前の1月29日に,疑似患畜,鶏卵及び飼料の評価を実施した。

(3)殺処分

 疑似患畜11,239羽について,1月30,31日の2日間でビニール袋,大型ポリバケツ,台車等を利用して炭酸ガスによる殺処分を実施した。
 鶏舎が分散するなか,8人で班を編制し,5班体制で効率的な作業を実施した。

(4)焼却処分

 殺処分した鶏は,感染性廃棄物専用容器に10羽ずつ密閉し,高梁地域事務組合クリーンセンターへ搬送し,焼却処分を実施した。
 2月1日から開始した焼却処分は,地域から発生する一般廃棄物の焼却に支障を来さない夜間での作業となり,2月2日(金)の17時からは24時間体制で継続し,2月4日(日)の朝に全ての焼却を終了した。

(5)埋却処分

 汚染物品である鶏ふん,鶏卵及び飼料等については,農場敷地内に埋却溝を掘削し,遮水シートを敷設した後,投入及び覆土して埋却処分を実施した。

 鶏ふん等の鶏舎からの搬出及び埋却溝への投入については,鶏舎構造等から機械作業が困難なことから,ショベル,一輪車等を用いた人力作業となり,日々80〜100人を超える人員を投入しての作業となった。
 こうしたことから,埋却溝の設置に2月2日から2日間,鶏ふん等の搬出,埋却,投入に2月3日から6日までの4日間という長時間を要した。

(6)作業員の健康管理

 発生農場での防疫作業従事人員については,作業の前後における医師,保健師の問診,健康チェックが実施され,作業時には防護服,防護マスク,防護ゴーグル等の着用,作業後には希望者に抗インフルエンザウイルス薬を提供する等,徹底した健康管理が行われた。

4 移動制限区域内からの鶏卵の移動

 移動制限の実施により鶏卵の移動が禁止される中で,すみやかに制限区域内農場の清浄性や出荷先GPセンターでの衛生管理状況の調査に着手した。その結果,早期に安全性が確認され,国との協議を経て発生後3日目の2月1日には鶏卵の移動が可能となり,経済損失を最小限にとどめることができた。

5 おわりに

 関係の皆様のご協力により,一連の防疫措置を完了し,3月1日に全ての移動制限等を解除することができましたが,更に詳細な検証を重ね,危機管理体制の強化に努めて参りたいと考えています。