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〔普及の現場から〕

女性の熱意で酪農現場を元気に

勝英農業普及指導センター 武藤 多佳子

 岡山県の北東部に位置する勝英地域は県内有数の酪農地帯で,先進的技術を積極的に導入し,良質乳を生産しています。
 以前にも紹介したとおり,組合全体で乳質改善研修会を実施したり,後継者グループで勉強会をしたりと意識の高い活動を行っていますが,今回は,女性の活動について紹介したいと思います。

 勝英酪農組合女性部は組合員64戸の女性がメンバーとなっています。年代も様々です。
 今まで普及センターが行ってきた研修会では主に経営主の男性が対象でした。しかし昨年5月から,女性部の強い要望を受けて,おかやま酪農協が主催,普及センターが講師として定期的に女性向けの研修会を開催することとなりました。
 そのきっかけとなったのが,徳島県の酪農女性達との出会いでした。
 徳島県では,畜産研究所が中心となり,地域の酪農家を対象に月1回基本的な研修を行ったり,お互いの家によりあい,勉強会を開催することで,2,3年で経営が向上した農家が多数あります。このことに興味を持った会長さんの,「是非徳島での研修会について話が聞きたい」という一言から,この研修会が始まりました。


講義風景

 徳島県で行われている研修会は,「酪農で儲けるには」餌代の無駄,病気(支出)を減らし,乳量と子牛(収入)を増やすというごく基本的なことから,周産期疾病,牛群検定表の見方,子牛の育成方法,繁殖など酪農の基本技術全般にわたって取り上げています。
 そこで普及センターでは,出来るだけ基本的なことを,わかりやすく説明するということを心がけ,女性が日頃酪農に関わる上で重要な項目を取り上げるようにしています。
 例えば,牛の目や耳はどのように働いているかの仕組みを知ると,どう接するべきなのかということについて答えが見えてきます。
 そこで毎回,体の各パーツに絞って講師がユーモアを交えながら説明していきました。講義のはじめには,クイズで前回の復習をします。参加者は皆熱心に耳を傾けていました。

 研修後のアンケートでは多くの感想が寄せられます。「牛は頭がいいんだということがわかりました。今後は,優しく接したいです」「いつも楽しい話なので,時間の経つのを忘れて聞いてしまいます。ついつい日々おざなりになっていることが実は牛飼いの一番のポイントなのだと実感します」やはり女性ならではの細やかさ,優しさが窺えるコメントです。
 他にも,搾乳作業や夏の暑熱対策,子牛の飼養管理など基本的な技術,また家族経営協定や簿記記帳といった経営面についても講義を行いました。講義内容については,参加者のリクエストを元に決定していますが,まだまだ全てに答え切れていないのが現状です。
 また,おかやま酪農協の東山専務を迎え,生産調整の現状について意見交換を行ったり,乳業メーカーがヨーグルトの新製品を提供し,試飲・試食を行ったりと,毎回趣向を凝らした会になっています。


専務を迎えた研修会


低温殺菌牛乳の試飲

 11月には,徳島県を訪問し,酪農家が勉強会で学んだことを活かして建てた新築牛舎を視察しました。勉強会によって得た理論に裏付けされた経営主の説明に,皆熱心に聞き入っていました。


徳島の牛舎視察

 その後会場を移し,徳島県の酪農家との意見交換を行いました。日頃疑問に思っていること,共通した悩みなど話している間にあっという間にバスの時間が来てしまいましたが,それでも中腰のまま話を続ける程,盛り上がった会となりました。
 普及センターでは今後もこの研修会を通じて,女性の熱意と行動力,ネットワークを活かした一層の技術向上と経営改善を図っていきたいと思います。


これからもがんばります!