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〔技術のぺージ〕

高病原性鳥インフルエンザ発生時の産卵休止措置について

岡山県総合畜産センター       
環境家畜部 研究員 武縄 勝浩

 今回,岡山県で発生した高病原性鳥インフルエンザ(以下鳥インフルエンザという)の際には,農家の方が非常に早い段階で家保へ通告されたことなどにより他に発生が認められなかったことから,鶏卵の移動制限期間は実質4日間という非常に短い期間で終わりました。
 しかし,大規模に発生した宮崎県の場合,全ての移動制限区域の解除に,清武町では22日間,日向市では30日間を要しました。
 本県の採卵鶏飼養羽数は全国7位であり,状況によっては宮崎県と同様の移動制限措置が取られることも想定されます。
 鶏卵の移動制限措置が長期間におよぶと,鶏卵の保管・処分,飼料代等,農家にとって大きな負担となりますが,これに対応する有効な方法として産卵の調整技術が検討されています。
 産卵の調整技術としては絶食による産卵停止と強制換羽がよく知られていますが,この方法では鶏に対するストレスが強く,免疫機能の低下を招くことや,鶏の鳴き声による周辺住民への迷惑,飼養者に対する心理的なストレスなどが懸念されます。
 そこで,当センターでは短期間の絶食期間と一定期間の定量給餌(無産卵維持熱量の70%給餌)期間を合わせて行う方法で,産卵を調整する技術を検討しました。

試験方法

 使用した鶏は432日齢の白色レグホーン種(ジュリア)で,次の3通りの給餌方法を検証しました。
 1区は絶食期間を3日間設け,その後70%を給餌しました。
 2区は絶食期間を1日とし,その後70%給餌としました。
 3区は絶食期間を設けずに最初から70%給餌としました。
 試験開始後,15日まで70%給餌とし,その後,1週間は可食による急死を防ぐため,飼料を20gずつ1日おきに増やしていく回復期をおきました。
 4区は,通常の不断給餌による対照区です。

結 果

(1)産卵率の推移

 3日間の絶食を設けた1区では急速な産卵率の低下が認められ,試験開始から6日目には13.4%,更に9日目には7.5%まで低下し,産卵率が20%以下の期間が約20日間持続しました。2区,3区では,緩やかに産卵率が低下し,産卵率20%の期間が15日間持続しました。(図1)
 その結果,試験開始後30日間の産卵数は対照区が693個,平均産卵率92.4%であったのに対し,1区では253個,平均産卵率33.7%,2区,3区では両区とも280個,平均産卵率は37.3%,39.5%となりました。

(2)体重の推移

 体重の変化ではその減少率が最大15%程度となり,25〜30%の減少を目標とする絶食換羽と比較し,体重減少が少なくてすみました。(図2)
 さらに,試験の中に死亡した鶏は1区で1羽,3区で2羽でしたが,制限給餌が原因と考えられるものではありませんでした。
 このことは3日間程度の短期間の絶食期間と70%給餌であれば絶食換羽と比較して過度のストレスにはならないものと考えられました。

まとめ

 鳥インフルエンザが発生した場合には3日間の絶食期間を設け,無産卵維持熱量の70%を給餌する強制休産措置が有効であると考えられます。
 70%給餌期間を調整することで,移動制限が解除される時期をねらった産卵調整が可能となります。
 今後は,さらに産卵量を抑える飼養方法や鶏の健康に及ぼす影響について検討し,より実用的な技術にしていきたいと考えています。