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〔県民局だより〕

笠岡湾干拓地における堆肥利用と粗飼料増産の取組について

井笠支局地域農林水産室畜産班

1 はじめに

 干拓地で生産された良質の堆肥を地域へ広く供給することにより,畜産農家は堆肥の適正施用と自給粗飼料の生産増大を,また,耕種農家は土づくりによる地力増進を図るなど,資源循環型農業を積極的に推進しているので,その取組を紹介します。

2 笠岡湾干拓地の概要

 県西南部に位置する笠岡湾干拓地は,稲作による大規模営農を目指して,昭和41年に着工し,その後,農業情勢の変化に伴い畑作へ転換,昭和61年からは畜産が参入するなど幾多の変遷を経て,24年の歳月をかけ平成2年に完成しました。
 干拓により903haの広大な農用地が生まれ,その半分以上が畜産用で牧草や飼料作物の栽培等に利用されています。(表1)

表1 干拓地の用途内訳(面積:ha)

 現在,17戸の畜産農家が,県下の約10%に当たる約5,700頭の牛を飼育し,土地基盤に立脚した大規模経営を行っています。(表2)

表2 飼養頭数(H18.8現在)

3 共同堆肥舎による堆肥生産と利用拡大

 (1) 堆肥の生産

 畜産農家は,堆肥舎等の施設を整備していますが,さらに堆肥の利用拡大を図るため,平成16年に畜産農家11戸が共同堆肥舎(1,000u)と堆肥散布車等を整備しました。そこへ,各農家で一次発酵処理した堆肥を搬入し,混合,切り返しを行って,良質な堆肥を大量に生産しています。
 平成18年の堆肥処理量は,当初計画していた約2.6倍の7,840tで,大変有効に活用しています。


共同堆肥舎

 (2) 堆肥の利用拡大

  1)粗飼料基地への堆肥散布

 農事組合法人「干拓コントラ」(平成15年設立)は,粗飼料基地のほ場(約90ha)を借地し,平成17年度から共同堆肥舎で生産された堆肥を利用するとともに,粗飼料基地の更新ほ場(約20ha)へも堆肥(1,000t)を散布するなど,施肥と土壌改良効果による牧草や飼料作物の増産を図っています。 また,平成17年度には,大型の堆肥散布機(容量:15.4m3)を導入して,さらに効率的な堆肥散布を行っています。


粗飼料基地への堆肥散布作業

  2)耕種農家への堆肥運搬と散布

 平成18年度に,共同堆肥舎の堆肥(630t)をブロッコリー栽培ほ場(約28ha)や干拓地外の水田(約20a)などへ運搬,散布するなど,耕種農家に対し,堆肥の利用促進を図っています。

  3)堆肥化技術の向上

 平成17年度に,共同堆肥舎で消臭剤や発酵促進剤の比較試験及び切り返し発酵試験を行い,堆肥化技術の向上・普及を図りました。現在では,毎週,堆肥の切り返しが行われ,良質堆肥が生産されるようになっています。

  4)堆肥利用のPR

 平成17年度に,干拓地内の耕種農家で堆肥を利用した栽培実証展示ほを設置するとともに,学校や公民館へ堆肥サンプルを無料配布し,また,各種イベントで低価格で販売するなど,堆肥の品質と効用を広くPRしました。さらに,堆肥の成分や販売先を記載した「堆肥マップ」を作成,配布し,“干拓堆肥”の販路拡大を図っています。

4 飼料用トウモロコシの二期作栽培による粗飼料の増産

 平成16年度から酪農家(5戸)の飼料畑で,トウモロコシの二期作栽培が始まりました。これに合わせて,高能力なコーンハーベスター(6条刈,2ha/hの能力,コーンクラッシャー機能付),コーンプランター等の栽培用機械とバンカーサイロ5基(1,533u)を整備しました。
 平成17年から粗飼料基地のほ場(約90ha)を借地し,酪農家の飼料畑(約56ha)とを合わせて,本格的にトウモロコシの二期作栽培を始めました。

表3 栽培面積(延べ面積:ha)

 平成18年度は,栽培技術の向上,さらに天候にも恵まれ,大幅に収量が増加し,既存のサイロだけでは足らず,増設する酪農家もありました。生産量が安定したことから,5戸の酪農家で,給与量に違いはあるものの,トウモロコシサイレージの通年給与を始めました。


トウモロコシの収穫作業

 また,購入飼料の価格が上昇の兆しを見せる中,自給粗飼料を大量に安定して確保できることが,経営改善にもつながっています。
 こうした広大な干拓地のスケールメリットを活かした大規模なトウモロコシの二期作栽培は,全国的にも珍しく画期的な取組であり,今後の岡山県の酪農振興に大きく寄与するものと期待しています。

5 おわりに

 平成19年度は,粗飼料基地からの借地が117haに,また,ブロッコリー栽培ほ場も50haに拡大することが見込まれているので,今後も堆肥の品質向上と利用拡大に努め,自給粗飼料の生産増大をさらに推進していきたいと考えています。