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〔家保のページ〕

公共牧場を核とした和牛増頭対策の試み

高梁家畜保健衛生所

1.はじめに

 当地域は県下でも有数の和牛生産地帯であり,これまで多くの優良和牛を輩出してきました。しかし,農家の高齢化と後継者不足により繁殖農家・頭数とも減少の一途をたどっています。そこで当所では公共牧場を核とし,受精卵移植(以下ET)と採卵技術を活用して和牛増頭対策を実施してきました。以下に活動の概要を述べます。

2.当地域の受精卵事業の沿革

 当地域では,昭和63年に国・県の事業を活用して受精卵事業が開始されました。平成3年には各地域ET協議会が発足し,地域優良牛からの採卵・ETが開始されました。平成14年度からは,和牛増頭のため管内酪農家や公共牧場と和牛繁殖農家との連携が構築され,地域優良和牛の採卵,乳牛への借り腹移植が本格的に開始されました。さらに平成15年度からは公共牧場でのET頭数が増加し家畜保健衛生所(以下,家保)として公共牧場を利用した和牛の増頭対策を展開しています。

3.活動実績

 図1は平成14年度以降の管内及び公共牧場の移植状況です。受精卵は地域で採卵されたもの,県総合畜産センターから供給されたものを使用しました。管内では平成15年度から平成16年度を境にET頭数,特に和牛のET頭数の伸びがめざましく,公共牧場でも平成15年度から次第に和牛のETが増加しています。

 図2は和牛ETにおける公共牧場受胎率と管内受胎率との比較です。公共牧場の受胎率はいずれの年度においても管内全体の受胎率を上回っており,公共牧場預託牛を利用する優位性が示されています。

 図3は平成14年4月から平成18年12月までの県内子牛市場成績です。市場全体では平成14年と比較して現在10万円以上,平均価格が上昇しています。また,ET子牛価格は,最近おしなべて市場平均を上回ってますので,これが公共牧場預託牛の付加価値を押し上げ和牛ETの希望増加につながっていると考えられます。

 表1は平成18年12月までの公共牧場由来ET和牛子牛の生産・保留・出荷状況です。管内で生産された和牛子牛112頭のうち半数に当たる56頭が公共牧場で生産され,今までに18頭が保留,その後生まれた子牛2頭をあわせると保留予定は20頭となり,地域の和牛改良に大きく貢献しています。また,子牛市場にも15頭が出荷されました。今後は7頭が出荷予定となっています。さらに平成17年度移植牛が今年度6頭の分娩を控えており,平成18年度は22頭が受胎中です。

4.経営形態の違いによる所得の差

 表2は公共牧場の未経産牛にETを行い,子牛市場まで酪農家で自家育成した場合の農家手取り額を試算したものです。平成18年1月から12月までの子牛市場での去勢と雌子牛の平均値46万円を売上高に当てはめてみますと,経常所得つまり農家の手取り額は295,920円となります。

 表3は,表2の試算を各経営形態に当てはめたものです。例1は和牛繁殖雌牛を飼養し,子牛を出荷した場合の通年所得ですが,経常所得は148,673円となります。例2は,酪農経営で和牛を種付けし,F1雄子牛を12万円で売る場合です。これによると経常所得は264,983円となります。例3は乳牛に和牛のETを行い,250日飼養して子牛市場に出荷,46万円で販売できた場合で,経常所得は440,903円が見込まれます。このことからも試算されるように,公共牧場の預託牛に和牛のETを実施して子牛を順調に市場出荷した場合,大幅な所得向上が望まれます。また,酪農家が和牛繁殖との複合経営を行うことで,生乳生産調整下での所得向上が可能となります。

5.まとめ

 公共牧場を利用した和牛ETは,受卵牛の確保が容易で,受胎率の向上が見込め,地域和牛の増頭及び改良に大きく貢献しています。また,地域保留牛の増加は,和牛生産基盤の強化・活性化につながっています。さらに,子牛価格変動のリスク要因はありますが,酪農経営にとって非常に多くの利点があります。
 これらのことから公共牧場は,今後とも和牛の一大生産拠点として,いっそうの利用拡大が見込まれ,私たちも積極的に推進指導を行っていきたいと考えています。