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〔普及の現場から〕

新技術を取り入れた和牛繁殖経営の実践

倉敷農業普及指導センター

1 はじめに

 倉敷管内は,和牛繁殖経営農家が少ない地域ですが,肥育経営からの転換や繁殖肥育一貫経営の導入により,和牛の増頭の兆しが見え始めています。総社市には,JA岡山西昭和支店畜産部会があり,昨年紹介した遊休農地放牧を導入している会員がいたり,繁殖肥育一貫経営に取り組み始めた会員がいて,元気に活動しています。その中で,新しい技術と既存の技術を合わせてがんばっている横川さんの経営事例を紹介したいと思います。

2 経営の概要


牛舎からの眺め

 横川さんは標高500m以上の高地にある総社市槁で和牛の繁殖経営を行っています。現在の飼養頭数は,成牛8頭,子牛3頭です。平成3年に建設した広い牛房の牛舎で,自給飼料を生産しながら,1年1産を目標に努力しています。

3 受精卵採取とET産子の導入

 人工授精で子牛を生産していましたが,平成13年頃から受精卵採取にも取り組むようになりました。現在は繁殖牛3頭を受精卵採取用に使っています。受精卵採取を始めるようになってから,ET産子を導入し,人工哺育を行うようになりました。子牛専用のカーフペンを自作し,電灯で暖房ができるようにも工夫しています。平成18年は,3頭のET産子を哺育育成して市場で販売しました。受精卵採取後に人工授精しても種付けがよく,1年1産1採卵が実現できた牛がいて,9月に受精卵の子牛を出荷し,12月に自家産の子牛を出荷することができました。

4 1年1産と連産への取り組み

 1年1産を目指して,種付けは2回でつくように,分娩後の発情の観察に十分注意しています。1牛房が広く,自由に動き回ることができるので,牛の動きや隣の牛への乗駕行動などに特に注意しています。早めに授精師に連絡するようにもしています。平均分娩間隔は13ヶ月となっています。
 母牛の更新はすべて自家育成で行い,長く連産できている牛の系統を残すようにしています。12〜13産する牛も多く,できるだけ長く飼えるように気を配っています。


広い牛房

5 早期離乳と超早期分離技術の活用


早期離乳した子牛

 我が家で生まれた子牛は,親につけていますが,離乳時期は早めています。今では2ヶ月の早期離乳を行っていますが,子牛の発育は順調で,問題はありません。ET産子の人工哺育で自信がついたことから,自家産子牛も人工哺育することを考え,生後3日以内に親から離す超早期分離技術にも挑戦しています。なかなか哺乳びんになれない牛もいますが,子牛は順調に育ち,母牛の発情も早く来るようになりました。今後は自家産子牛もすべて人工哺育でいきたいと考えています。
 離乳した子牛は,運動場へ出して元気に育てることも始めました。運動場は固定柵で囲っていますが,脱柵防止用に一部に電気牧柵も使っています。運動場の延長で遊休農地放牧も可能ではないかと提案していますが,適地がないことや不安もあり,まだ検討中です。


子牛の運動場

6 母牛の粗飼料自給率100%

 春から秋は,ソルゴーやイタリアン,牧草を栽培し,青刈りやハウスで乾燥させたものを給与しています。冬は,1ha分の稲わらを集め,不足部分を山から40a分のカヤを刈り取ってきて,補っています。
 一昨年に気密サイロが手に入ったことから,コーンサイレージに初めて取り組むようになりました。なかなかサイレージ調製が難しく思うものができていませんが,よく食べる冬用の粗飼料として利用しています。粗飼料確保に努めた結果,繁殖牛の粗飼料自給率は100%を達成しています。


刈り取ったカヤ

7 堆肥づくりと飼料費の節減対策

 牛舎が斜面に建っていることから,牛舎後下方に堆肥場を作り,糞出しは牛房の後ろへ落とし込めるように工夫しています。この方法で,糞出し作業は非常に楽になっています。


牛房牛下方が堆肥場

 堆肥には,冬に山で集めたシバやすくもを混ぜて堆積し,溜まった堆肥を別の堆肥舎へ運んで発酵させています。堆肥舎に余裕があるため,1年間堆積した良質堆肥が生産できています。量も減り,使いやすくなった堆肥は,自給飼料の栽培用にすべて使っています。

 自給飼料の生産や稲わらの収集,山のカヤの利用で飼料費の低減に努めています。その他にも,秋から春にかけては,近所周りから,ハクサイ,キャベツ,ダイコンなどのいろいろな野菜の残さをもらうことが多く,それを給与することで,飼料費の節減にもなっています。


いろいろな野菜残さ

8 終わりに

 頭数は少ないのですが,そのぶん時間をかけて愛情を込めて育てています。受精卵採取やET産子育成,超早期分離技術,コーンサイレージと年々何かに取り組み,経営のプラスになることはどんどん取り入れています。
 今後は,母牛を増やすことは難しいので,ET産子を導入して,子牛の出荷頭数を増やしたいと考えているそうです。自給飼料の生産など労力がかかっているのですが,まだまだ元気に牛飼いを続けるという横川さんです。


横川さんと愛牛