ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2007年7月号 > 〔普及の現場から〕楽ちん飼料用稲作りにむけて |
岡山普及センター管内では,転作田の有効活用と飼料自給率の向上のため,飼料用稲のホールクロップサイレージ生産が行われています。稲の省力栽培には乾田直播がありますが,牧草や麦の収穫時期と重なることもあり田に水が早く入る地域では播種が間に合わないことや機械の問題から普及していない地域も多くあります。
そこで,そういった地域での育苗・播種作業の省力化を図るために,昨年,瀬戸内市長船町で鉄コーティング種籾を利用した淡水直播栽培に初めて取り組み,1mロールで10個/10aを収穫できました(飼料作物優良品種選定普及促進事業,事業主体おからく)。
昨年は,近畿中国四国農業研究センターでコーティングされた種籾を利用しましたが,今年は一部の種籾を自らコーティングし,飼料用稲を酪農家3戸約1.8ha,食用稲を耕種農家1戸1haで播種されています。
この春の作業状況をご紹介します。
乾籾または催芽種子を鉄粉と焼石膏(又は海水)でコーティングした後,乾燥状態で保管しておき,代掻き後の土壌表面に播種する技術のことです。
利点:比重が大きく水中で浮きにくい。
落水条件下でも鳥害にあいにくい。
表面播種のため散粒機で播種できる。
酸素発生剤でのコーティングより低コスト。保存可能で農閑期に準備できる。
欠点:落水できないほ場は発芽不良になる。
表面播種のため倒伏しやすい。
水田によっては発芽不良や枯死等の症状がでる。
飼料用稲の推奨農薬が少ない。
〈10a当たりの材料〉
種籾:5s(発芽率95%以上)
※種子消毒と催芽処理をする。
農業用鉄粉:1kg(コーティング比0.2)
焼石膏:混合用100g
仕上用 50g
苗 箱:1枚/1kg(新聞等のシート)
噴霧用機と水
※石膏がない場合は,水を海水にする。
1.準 備
2.水を切る(1〜2分程度)
3.鉄粉と焼石膏を入れる(3回程度に分けて)
4.時折水を噴霧しながら混ぜる(表面がツルっとするまで)
5.石膏を入れる(3回程度に分けて)
表面が粉っぽくならないよう,時折水を噴霧しながらひたすらまぜる(10分弱)
6.シートをひいた苗箱に1sずつ薄く広げる
※鉄が水と反応して発熱しており熱を逃がすため,手早く広げる。
7.すぐに乾燥(雨が当たらず・日陰・風通しの良い場所で1週間程度)
【熱を逃がし損ねたら…】黒く焦げて種子が死んでしまいます。作業は途中で中断できません(幸い今回は発芽しましたが)。コーティング直後2時間程度に熱を逃がすことが大切です。(写真左:黒く焦げた種 右:正常)
8.翌日,全体が錆び色にならずまだらだったら,再度水をスプレーし錆びさせる。
種どうしがくっついているためほぐす。
9.発芽試験の実施
発芽率90%以上→苗立率60%
80%以上→ 40%
70%以下→ 中止
(近畿中国四国農業研究センター調べ)
種籾10sのコーティング作業時間は,1時間半程度で,資材代は,366円でした。事前に苗箱や資材を用意してから,作業を開始するといいです。
ミキサーを改造したコーティング機と風呂桶を利用した乾燥機を作った事例もあります。この場合,たらいで使った資材の2.5培(コーティング比0.5)の量でコーティングでき,鳥害が多い地域で有効です。ただ,鉄の量とともに発熱量も多くなるため注意が必要です。
コーティング機
※中の羽を取り除いて作っています。
乾燥機
※ブロアーで吸い出し強制乾燥します。
畦から散粒機で表面播種し,作業時間は約5分/10aでした。注意点は,土を多くかぶらないよう代掻直後はさけること,隣の田に種を入れないこと,強風時はさけることです。
6月末,播種後2週間で10p程度の芽が出ています。昨年は,落水が不十分で根が十分張らず倒伏し,収穫時間が増えました。倒伏防止には,播種後に自然落水して出芽させ,土壌を硬化させることが非常に重要です。今後は,適切な水管理とほ場条件に合わせた雑草対策が課題です。