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〔技術のページ〕

子牛市場体測値を利用した岡山和牛子牛の初期発育の遺伝的分析について

岡山県総合畜産センター 和牛改良部
研究員 瀬尾 聡一

 岡山和牛の特色は,全国的に評価されてきた「発育性の良さ」にありました。しかし,一時期肉質重視の観点から,但馬系の利用が多くなり,「牛が小さくなった」という声が聞かれました。
 本県では,平成4年度から実施している産肉能力育種価を基に,新しい岡山和牛の作出に向け,肉質の改良として但馬系の「利花」,後継牛の「西花8」を作出し,また,増体面の改良として「沢茂勝」,「勝福茂」,「花茂勝2」,「第5北盛」を作出し,成果が上がっています。また,新しい岡山和牛の特徴を把握するために,平成15年から,子牛の初期発育(子牛市場上場時:約8ヶ月齢)について調査を行っています。今回,平成18年10月までの分析結果が得られたので一部を紹介します。

1 材料及び基本統計量

 1)材  料
 平成15年7月〜平成18年10月に岡山県子牛市場に上場された去勢子牛4,005頭,雌子牛3,064頭,計7,069頭の上場時の体高,体重,日齢の分析を行っています。

 2)基本統計量
 体測値及び出荷日齢の平均値は,雌で体高109.3p,体重245.3s,出荷日齢264.8日,去勢で体高112.4p,体重260.9s,出荷日齢251.8日と,雌の方が約13日遅く出荷されています。
 また体高について,全国和牛登録協会標準発育曲線と比較すると(図1),岡山和牛子牛の発育性はほぼ標準値並となりました。

2 分析方法

 分析には,BLUP(ブラップ)法アニマルモデルという手法を用い,育種価を推定しています。〔式:表現型値=全平均(基準年:昭和50年)+環境効果+育種価+誤差〕(環境効果には,母の年齢,農家(地域),性,出荷年(季節)を取り入れ分析実施。)

3 結  果

 1)体高,体重の育種価

 県内雌牛の生年毎の育種価の推移を図2,図3に示しました。昭和50年を基準年とし,体高,体重ともに昭和62年まで順調に改良が進められ体高で0.9p,体重で約6s大きくなりました。しかし,その後,肉質重視となり,但馬系種雄牛が盛んに使われたため,下降をたどり,体重では,平成5年生まれ1sまで大きく落ち込んでいます。しかし,その後藤良系の活用により徐々に回復し,岡山系の肉質面の改良のため,但馬系種雄牛を取り入れた改良を行い,若干下がりましたが,平成13年以後気高系種雄牛の活用により急速に大きくなってきています。


図2 雌牛育種価の年次推移(体高)


図3 雌牛育種価の年次推移(体重)

 この間供用されてきた種雄牛の育種価の分布を図4に示しました。グラフは,縦軸に体重の育種価を,横軸に体高の育種価を示しています。過去に使用された代表的県有種雄牛として,「糸藤」,「高庭」,「守1」,「第2富藤」がおり,体重,体高ともに高い育種価を持っていたことがわかります。また,現在使用されている種雄牛の「利花」,「沢茂勝」,「勝福茂」,「花茂勝2」,「第5北盛」も増体,体高面で高い育種価となっています。

 2)農家の効果

 子牛の出荷時の発育に対しては,前述の育種価の他に様々な環境要因が作用しており,それぞれの繁殖農家での飼養管理も大きく作用しています。この農家の効果の分布を図5に示しました。
 各地域別にマークを変えて示しています。農家におけるバラツキは体高で7.6p,体重で59.5sと大きくなっています。地域による飼養管理方針の違いも見て取れます。地域別の平均値を表2に示しました。新見地区,真庭地区では,体高,体重ともにバランス良く伸ばしていることが伺えます。

4 まとめ

 子牛市場での体測値を利用し,初期発育について得られた数多くのデータを分析することによって,岡山和牛の新しい系統の特徴を把握し,今後の改良及び選抜の指標として活用を図りたいと考えております。