ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2007年8月号 > 〔畜産農家の声〕「私の人生,和牛と共に」

〔畜産農家の声〕

「私の人生,和牛と共に」

フォーベルネット会員 津山市 井原 みか
(美作県民局 畜産班)

 我が家は主人と主人の母と私の3人で和牛の繁殖経営を行っています。主人は以前,会社勤めをしていましたが,4年前に会社を辞め,人工授精師の資格を取って長年の夢だった和牛の道に進みました。母は亡くなった父の意志を継いで30年以上も牛に携わっているとても頑張りやで明るい母です。
 私は2年前に結婚しこの地に嫁いで来ましたが,牛とは全く無縁の環境で育ちました。ですが誰に進められたわけでもなく自ら牛飼いがしたいと思いこの世界に入りました。仕事を始めてまだ1年足らずですが,家族や周りの人達に支えられながら日々頑張っています。

《経営目標と取り組み》

 現在,母牛と育成牛を合わせて16頭の飼養管理を行っています。自給飼料を生産しながら1年1産と母牛の増頭を目標に努力しています。母牛の増頭はほとんど自家保留で行っていますが,近年は受精卵移植にも取り組み,さらなる増頭を目指しています。そして,母牛に給与する粗飼料の約8割は自給飼料で賄っています。昨年,ロールベーラーの導入により,イタリアンや稲ワラのロールサイレージ収集を行っています。また,今の時期は自己所有の水田の畦草を刈り取り給与したりもしています。自給飼料はコストが少ない分,惜しみなく与えられますし,嗜好性も良く母体の状態も良好です。今後は更に増産していき,自給率100%を目指したいと思っています。また,来月からはソーラー電気牧柵を使った水田や耕作放棄地での放牧を予定しています。


稲ワラの収集作業

《全共への取り組み》

 10月に開催される第9回鳥取全共の第7区総合評価群として出品を目指しています。中でも力を入れて取り組んでいるのが牛の追い運動と姿勢を正した立ち方(調教)です。追い運動は以前,舗装道路を追っていましたが,現在は牛の爪に負担がかからず力いっぱい歩ける山道を追っています。
 また,ここ最近は栄養度の問題も意識しながら同じ山道でも追うルートや時間を変えたり,運動の中で調教を取り入れるなど,自分なりに工夫した追い方をしています。
 調教は津山市加茂町の松元政晴さんの指導のもと,日々練習に励んでいます。管内で調教ができる人は数少ない中,技術を継承してもらえる事を何より幸せに感じています。松元さんの求める「見せる調教」とは,その牛の持つ能力を最大限に引き出した状態で立たせることで,ただ自然に牛が立っているのとは少し訳が違います。残念ながら今現在,私はこの技術にまだまだ及ばないのが現状ですが,今後,和牛人生を歩んでいく中で,この技術に近づく努力はしつづけて行くつもりです。出品牛との日々は決して楽なものではないのですが,それ以上に牛から多くの事を学び,チャレンジすることへの楽しさを感じています。
 7月19日の出品決定まであとわずかになりました。この畜産便りが発刊される頃には結果が出ていることでしょう。

《終わりに》

 昨年生まれた娘も1歳を過ぎ,ようやく歩き始めました。まだまだ手が掛かる時期ではありますが,今こうして自分のやりたい仕事ができるのも家族の理解と協力があってこそのことだと感謝しています。
 これからも,牛に精一杯の愛情を持って接し,幸せに飼育してあげたいと思います。そして,それが家族の幸せにも繋がっていったらいいなあと思う今日この頃です。


出品候補牛の「あけぼの88」

(井原さんの愛牛は,岡山県の最終選抜審査会で第7区総合評価群の県代表4頭の中に選抜されました。)