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養豚施策について

岡山県農林水産部畜産課

1 養豚情勢
 国民1人あたり1年に食べる豚肉は約12s。国内飼養頭数は1,600万頭で,80万トンの豚肉を生産しており,国産はほぼ半分にとどまっています。さらに,WTO 交渉,2国間の EPA 交渉の動きが加速しており,ハムやソーセージ等の加工品,外食産業の食材を中心に輸入豚肉のシェアが年々高まってきています。養豚産業は,輸入が自由化された1971年以降30万戸あった養豚農家は7千戸にまで減少していますが,経営の合理化や集約化が図られ1戸当たりの飼養頭数が約1,300頭にまで増加しています。
 県内に目を向けてみても,農家戸数は1970年代には1,000戸近くあった農家戸数は現在35戸と減少していますが,合理化や集約化が進み1戸当たりでは約1,250頭と増加しており経営感覚に優れた企業養豚が育成されています。

2 国内の養豚施策
 平成17年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」の方向付けの下で「21世紀新農政2007」に沿って各種施策が展開されています。
 (1) 農林水産物・食品の市場拡大
 農林水産物・食品の輸出を促進するため,検疫交渉を加速化するとともに輸出環境の整備の迅速化及び品目別のきめ細やかな輸出支援,日本食・日本食材の海外への情報発信に取り組んでいます。
 (2) 担い手への施策の集中化・重点化
 意欲がある担い手に限定した品目横断的経営対策を実施し,施策の対象の認定農業者に対して,経営改善計画の点検更なる経営改善努力を実施し,我が国農業の食料供給力を強化しています。

3 本県の養豚施策
 (1) 養豚振興計画について

 平成14年3月に策定した第2次養豚振興計画では,図1に示すように平成22年度の目標として繁殖豚3,900頭,出荷肉豚82,000頭の目標を計画しています。また,平成17年3月に国が示した平成27年度の家畜改良目標によると1腹あたりの年間離乳頭数はデンマーク並みの23.3頭が目標となっています。
 しかしながら,本県の現状では繁殖豚は第2次養豚振興計画に沿った頭数になってはいるものの,出荷肉豚頭数は離乳頭数及び育成率の低下のため目標値を大きく下回っています。この育成率は全国平均でも88.5%と低く,育成率の向上は全国テーマになっており国内需給率を上げるためにも必要不可欠となっています。
 (2) 養豚関係事業
 本県では,様々な要因で豚肉市場を取り巻く環境が変動することに対応するため次の事業を行って養豚経営の振興を図っています。
  1)県有種豚導入事業
 豚改良増殖を推進するため,総合畜産センターへの優秀種豚の導入を行い県内農協等に改良増殖された種子豚及び人工授精用精液の供給を行っています。
  2)地域養豚振興基金造成事業
 養豚分野での生産性向上及び省力化を図るため,簡易施設整備や産直体制づくりを推進するためのPR活動を支援します
  3)おかやま黒豚等産地づくり推進事業
 岡山県での銘柄豚である「おかやま黒豚」の生産振興を図るため,施設整備及び銘柄推進,学校給食での黒豚肉の供給等を行っています。
  4)肉豚価格安定事業
 肉豚価格の変動が養豚経営に及ぼす影響を緩和するために,生産者とともに一定の基金を造成し,養豚経営の安定化を図っています。

4 おわりに
 豚肉需要はここ4〜5年は家計消費・加工,外食分野でのシェアも全体のほぼ5割を占め食肉の首座であることには変わりありません。しかしながら,豚肉市場を取り巻く数多くの課題が国内のみならず世界規模で複合的要因を抱えた国際需給の変動に起因しています。
 具体的には,家畜の飼料穀物であるトウモロコシがバイオ燃料に利用され飼料価格が高騰していること。輸入新興国のロシア,中国の台頭によるマーケットの変動及び国内での PRRS をはじめとする疾病問題による肥育豚の減少,と畜頭数の減少などがあげられます。
 このような課題の山積,需給変動に対して今後の養豚振興には,明確なポリシーとブランド戦略が重要であり,安全・安心はもちろんのこと安定した品質や供給力の一層の向上に向けて各種施策の積極的な活用をお願いします。