ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2007年9月号 > 座談会「第9回全国和牛能力共進会に向けて」

和牛の思い出

草 苅 完 治(全農・旧経済連OB)

 私の和牛での思い出は,和牛の祭典である5年に一度開催される全国和牛能力共進会である。第1回大会(開催テーマ 和牛は肉用牛たりうるか!!)は昭和41年10月に岡山県で開催され,私が連合会の職員となり5年目の駆け出しの頃で,牛の良し悪しがわからない時でした。
 岡山県の出品牛は若雄(1),若雌(1),肥育増体区,去勢肥育区全て1等首席で,全国制覇達成と大変すばらしい成績でありました。この中で印象に残っているのが,若雄(1)「第19横氏号」(阿哲沖田洋美出品)と若雌(1)に出品された「いつこ号」(八束村真壁暉一出品)で,若雄の種牛としての品格,若雌の品位と美しさに感銘し,和牛のすばらしさを認識させられ,岡山和牛界のお世話ができればと!改めて思った次第であります。
 5年後第2回大会(開催テーマ 日本独特の肉用種を完成させよう!!)は昭和45年5月に鹿児島で開催され,出品区に新しく去勢理想肥育区が設けられ,運良く私も連合会(経済連)の肉牛担当を致していた関係で理想肥育区にエントリーを致すということで,素牛の選畜を肥育農家(現勝央町岸本節也氏)より依頼され,昭和44年1月,当時の久世家畜市場,津山市場に購買立会に入りました。久世市場では購買出来きず,1月17日津山市場で選畜に当たり,3〜4頭を選畜して,セリに立ち会い致すも先輩方とのセリ合いになりました。その中で入場NO886号(昭和43年6月13日生,旧久米町山本数市氏)の子牛を見た時,この牛だけは何円になっても購買するつもりで,セリ合いを致し,136,100円で落札した。(当時子牛平均価格♀85,430円,去勢80,251円)当時の子牛相場から見ると,破格の相場での取引であり,子牛の生産者も「何で私の牛がこんなに高いのですか」という質問があり,この牛は昭和45年に開催される全国大会の理想肥育区の候補牛ですと説明したが,本人は全国大会がどの様なものかわからず「ありがとうございました」の言葉だけであった。
 その後,飼育指導等関係機関と協力しながら指導に当たり,昭和45年岡山県の最終選抜で3頭の出品枠に選抜されました。
 鹿児島会場では先輩の購買された牛が見事1等賞首席,我が購買牛が1等賞3席に入賞することができ,素牛の購買から出品までの間,世話が出来たことは今も脳裏から離れないすばらしい飼育者(岸本節也氏)と「牛」でありました。(当時,月令23.6ケ月,生体重705s,枝肉重量475.7s,脂肪交雑プラス4,枝肉歩留69.5%)



 しかし,今だ残念に思っていることは,本会場(鹿児島)に参加できなかった事(理由………?)であり,特に,飼育者の方に心中からすまないと思っている次第であります。
 幸いにも連合会在籍中は畜産関係業務担当であったことで,毎回の全国大会に参加することができ,和牛を通して全国の多くの人々と出会うことができたことは,私にとって大きな財産であります。多くの諸先輩,和牛関係者のお陰と心から感謝を致しているところであります。
 本県の肉牛肥育技術は和牛改良と共に第8回大会(岐阜)をステップに大変向上しているところです。
 第9回大会(テーマ 和牛再発見!地域で築こう和牛の未来)は鳥取県において開催されますが,本県出品候補牛も最終選抜を終了し,本会場で各区とも上位入賞されることを皆さんと共に応援致し,期待を致している次第です。頑張りましょう!!
 参考として当時の本県上位入賞牛の審査報告を掲載します。
 第3類 理想肥育
 つぎに上位入賞について短評を試みましょう。
 岡山県 浅野常貞(209−30)
 1等賞首席牛は生後月令24カ月で生体についてみますと,体重633sで,やや小貫の感がありますが,体幅,体深に冨み,資質もよく,肥育度も満肉に近く,生体評点A(40点)でありました。その枝肉重量(冷屠体重)412.8s,枝肉歩留66.2%で,枝肉の外観,肉質の各項目いずれも「極上」と格付けされ,脂肪交雑はプラス4でありましたので,枝肉評点A(60点)となりました。その結果,総合判定はA(100点)で最上位となりました。
 岡山県 岸本節也(200−32)
 1等賞3席牛は生後月令23カ月で,生体重705.0sで,肥育度は少し過肥の状態で,背幅も十分あり,体積に富んでいましたが,やや体高が高く,後躯の幅にやや難点がありました点が惜しまれます。この枝肉は,枝肉重量475.7sで,枝肉歩留69.5%と非常に高く,肉質においても脂肪交雑はプラス4でありましたが,枝肉の状態からみますと,皮下脂肪が少し厚めで,脂肪の色沢にも難がみられたことは,過肥であったためと考えられ,惜しまれます。
 以上,鹿児島会場での本共進会の最終審査の状況を,述べましたが,結局は,あらゆる部門において前回を上回る好成績を示しています。このことは,和牛をわが国の飼養環境に適した肉用種として完成させることを期した本共進会の目的が達せられたことを示すものであり,この点同慶にたえません。さらに関係者がこの結果について研究し,検討を加え,これを活用し,もって今後の和牛の発展に資されんことを希望し,本審査報告を終わります。
 昭和45年5月15日
第2回全国和牛能力共進会審査委員長
 京都大学教授 上坂章次
(追記:第1回,第2回大会の1等賞は,現在の大会での優等賞に該当します。)