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〔普及の現場から〕
矢掛町公共育成牧場の取り組み
井笠農業普及指導センター
はじめに
酪農業界においては飼料の高騰や生産調整,導入牛の価格変動等様々な問題が生産者を直撃しています。
北海道からの導入牛が高騰し,自家育成を始めたが忙しくて管理がうまくできないという話も良く聞きます。また北海道から突然環境が変わって,うまく能力を発揮出来ない導入牛もいます。そのような時,地域の育成牧場に預託に出すことで,労力をかけずに地域にあった健康な後継牛を確保することが出来ます。
また,放牧場の景観が地域に安らぎを与えたり,土地を荒らさずに保全し,飼料の自給率を高めるという隠れた役割も果たしています。
今回は矢掛町公共育成牧場で関係機関一体となって管理技術の向上を図り,自給飼料を十分に与え,健康で安全安心な後継牛をつくる取り組みについて報告致します。
1 地元で作る安心安全な自給飼料
牧場には77ゥの放牧地と17ゥの採草地があり,放牧による足腰の強い健康な牛を育成しています。更に以下に述べる取り組みにより,牧場全体で粗飼料の自給率向上を図っています。
(1) 稲WCS
平成14年から,中地区営農組合が栽培した食用稲(ヒノヒカリ)を牧場が収穫し,稲WCSとして給与しています。今年度は9月11日から収穫を行い,2.57ゥで96ロールを収穫しました。稲WCSは牛の嗜好性が良く,安全に栽培されており,コストも低減出来るため町内で更に作付面積が拡大することを期待しています。
写真1:稲の収穫作業 |
(2) 河川敷で牧草栽培
小田川の河川敷10ゥを利用し,イタリアンライグラスを作付けしています。飼料として使えるだけでなく,河川の景観保全にも役立っています。普及センターでは土壌分析や収量調査を実施し,効率の良い牧草生産を支援しています。
写真2:広大な河川敷 |
(3) 和牛の簡易放牧
傾斜がきつく採草やホルスタインの放牧には向かない土地もありますが,和牛であれば放牧することが出来,有効利用しています。現在30ゥに25頭の繁殖和牛を放牧していますが,冬期には雪に閉ざされる県北地域から牛を預かり,飼育者の負担を軽減するという周年放牧の取り組みも行っています。
他にも総合畜産センターと共同で低コスト分娩舎や哺育舎を設置し,効率的な放牧技術について研究しています。
写真3:和牛放牧 |
2 育成牛の飼養管理向上
(1) 体高・体重測定
牧場には約200頭のホルスタイン育成牛が預託されています。入牧時及び3ヶ月ごとに各関係機関が協力して全頭の体高,体重を測定し,育成管理が適正かどうかをチェックしています。殆どの牛が標準値の範囲内であり良好に成育しています。種付は体高125p以上を目安に,適期に授精しています。
また入牧・退牧時にはおからくが中心となり,外貌評価を行って酪農家の皆さんに成長度合いをお知らせすると共に,更なる育成技術向上のためにデータを蓄積しています。
写真4:育成牛の体重測定 |
写真5:入牧牛の外貌評価 |
(2) 防疫プログラムの徹底
家畜保健所,共済連家畜診療所が中心となり,放牧牛が感染しやすいピロプラズマの検査・治療や各種ワクチン接種を確実に行い,育成牛の健康管理に努めています。
写真6:予防注射の接種 |
矢掛町公共育成牧場は開牧から30年以上経過し,施設の老朽化など様々な問題もありますが,県内の酪農家の皆様に丈夫な牛をお返しできる様,各関係機関と協力し,日々努力しています。
「生まれも育ちも岡山」の乳牛で,岡山の酪農の活性化に寄与している矢掛町公共育成牧場を是非ご利用頂き,皆様の酪農経営安定に繋げて頂きたくお願い致します。
牧場スタッフ、関係機関一同お待ちしています! |