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ミルカー点検してますか?

岡山県総合畜産センター 大家畜部 田 中 健 嗣

 暑い暑い夏が過ぎて,人も牛もようやく一息つける今日この頃,この夏の乳質(特に乳房炎,体細胞)はどうだったでしょうか?痛い目にあった人も,そうでなかった人も少しミルカーについての知識を深めてみませんか?
 皆さんご存じのとおり,乳房炎による損失の多くは体細胞数・細菌数のペナルティーのみならず,乳成分の低下,乳量の減少です。さらには異常乳によるバルク乳の引き取り拒否となると目もあてられません。酪農家にとっては頭の痛い問題ですが,乳房炎の主な原因は牛5%,機械:25%,人:70%とよく言われています。このことは,搾乳者がいかに熟練していても機械がうまく機能していないと大きな乳房炎発生の原因になることを意味しています。そこで今回は,主として,特殊な器具を使わず毎日できる簡単なチェック項目について紹介します。

1 日常点検のポイント
 日常的な点検は,搾乳機械の異常をいち早く知るために大切な仕事です。ここでは特殊な器具を使わずに誰にでも行える方法を紹介します。

 1)真 空 計
 真空計はミルキングシステムの運転真空圧を表示しています。一定に保たれていれば真空ポンプと調圧器が正常に作動していることになるので,搾乳前及び搾乳中に設定真空圧を確認し極端な変動がないことを確認します。

 2)調 圧 器
 ミルキングシステム内の真空度をセンサーで感知して,システム全体の真空度のレベルを一定に保つ働きをします。普段見落としがちになりやすいのでフィルター及び内部の清掃が必要です。

 3)レシーバージャー
 送乳配管内のミルクが流れ込んでくる容器であり,搾乳中に流れ込む生乳量が一定でない場合は,ミルク配管の勾配,たるみが出てないかの確認が必要です。また汚れやすいところなので牛乳臭,異臭,汚れがないことを確認します。

 4)真空ポンプ
 ミルキングシステム内に陰圧を作り出すためのエアポンプです。異常音,オイル,ベルトの張りを確認します。

 5)ブリードボール
 乳を送乳配管に送るための外圧を得るための小さい穴です。目詰まりをすると乳の流れが悪くなるので,通気の確認,内側の洗浄状態を確認し,清掃が必要になります。

 6)ミルクタップ
 搾乳ユニットを真空・送乳配管に接続する部位です。この部分の汚れは,生菌数の増加につながります。またパッキンの汚れはミルククローの真空圧の変動の原因となるので定期的な点検・清掃が必要となります。

 7)パルセーター
 搾乳ユニットのティートカップ内に大気圧と真空圧を交互に切り替え,搾乳とマッサージのサイクル(拍動数)を毎分50〜60回繰り返すための装置です。1分間に開閉する回数がメーカー基準値より前後3回以内に収まっているかの確認が必要です。

 8)真空配管
 音を聞いてエア漏れの有無の確認が必要です。

 9)ドレンバルブ
 真空タンクやパルセーターラインにあり搾乳中に吸い込んだゴミや水分を排出する役割を持っています。エア漏れが起こりやすいので指で押して作動を確認し,定期的な清掃にします。

 10)搾乳ユニッ
 ミルクタップ以下の搾乳機械を指します。パーツは定期的に交換しますが,普段からロングミルクホース,ライナー,エアーチューブの劣化,ねじれ,汚れの確認が必要です。

 11)バケットミルカー
 使用頻度が低いことが多いので,使用時には汚れや劣化を調べる必要があります。

2 定期点検
 定期的なシステムの点検では専門的な測定器を使用して下記の項目を調べます。
 1)真空圧の測定
 2)パルセーションの評価
 3)調圧器の能力評価
 4)排気量の測定
 5)エア漏れの有無

以上の測定を行うことでシステムが正常に機能しているかを判定し,改善点を見つけます。
 岡山県では現在おかやま酪農業協同組合にこの測定の器械を導入し,農家でのシステム全体の点検を行えるよう体制を整えているところです。

3 システム点検による異常の発見
 島根県で平成18年度に実施された定期点検では表1に示すように多くの農家で異常が見つかるりました。特に日常点検で発見できはずのパルセーターで70%の農家で何らかの異常が発見されています。また定期交換部品であるチューブ類での異常が見つかっています。

表1 巡回時におけるシステムの異常率
場 所 項目
パルセーター 異常 70
調圧器 効率低下 21
真空ポンプ 排気量不足 46
能力低下 21
真空配管 エア漏れ 39
送乳配管 勾配不足 26
口径不足 6
チューブ類 定期交換 70
バケットミルカー 交換及び劣化 19
*H18島根県乳質改善委員会調べ

 何か異常を感じたら,それはミルキングシステムに問題があるのかもしれません。
 搾乳システムの不調は,乳房炎に大きな影響を与えます。定期点検とともに日頃から自分の「目・耳・手」を用いて確認し,異常を早く発見して,システムを良好に保ち,乳質改善を図りたいものです。