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人生は 夢見て思い出 作る旅

大 竹   修(NOSAI岡山OB)

 生来の動物好きが高じて進んだ獣医師への道。縁あってNOSAIへ奉職し,牛の臨床を見つめ続けた38年間という半生は,千変万化で飽きることのなかった年月であり,沢山の思い出もできました。上り坂の30代,それなりに充実していた40〜55歳,そしてちょっぴり下り坂に向い始めた56〜60歳。それぞれの春夏秋冬に培った忘れえぬ経験。それらのあるものは写真となってアルバムに,あるものは業績として書籍や学会誌に,そして新聞,雑誌,広報,機関誌などに記事や資料として残っており,ボクの書斎はまだまだ獣医文献の山です。
 折りにふれ,それらを手にとって読み返すとき,過ぎ去ったり帰り来ぬ郷愁に胸が熱くなります。それだけボクなりにNOSAI獣医師生活を満喫してきたのでしょうね。また長年月の間にプラス志向の友人や知己も沢山でき,多くの組織ともおつきあいをしてきました。ボクにとってはこれらの人々がこれからの人生にとっても財産であり,さらに増やしてゆきたいものと思っています。
 現役時代,天下御免のヤブ獣医師ぶりをいろいろな場面で披露し,頭を掻き続けてきましたが,そんな中でも知的好奇心だけは旺盛で,その余韻はまだチョッピリとボクの頭の中に残存し続けています。平成18年4月,NOSAIのOBとなってから,第2の職場である「にわとり」の世界へ足を踏み入れて既に1年半が経過しましたが,先輩方の指導よろしく,初日から不安もなく,仕事の中で初心者のものめずらしさ,鶏体,鶏病に対する不思議,感動,興味などが,牛の臨床時代と同じように次から次へと湧いてきて,分からないからこそ探求心も生まれてきます。鶏の世界では,恐ろしい伝染病や食中毒菌など,公衆衛生の観点からの研究や論文は枚挙にいとまがないようですが,基礎的な発生学や生理学などに「原因不明」の部分が案外あるようで,ボクが日々解剖している目の前にそれらがゴロゴロところがっているのです。ボクにとっては「原因不明」イコール「宝物」で,俄然,好奇心が頭をもたげてきます。そしてナゾ解きに腐心している時が実に楽しいですね。
 NOSAI時代から診療車内に常備していたカメラは今,より便利でコンパクトなデジカメとなって公私共に大活躍で,獣医師人生のアルバムがどんどん分厚くなっています。
 この職場,一番気に入っているのは休日が多いことです。現役時代にはやりたくてもやれなかったことを今,休日を利用して実行中。そしてレパートリーを拡げています。多くの人がそうであるように,ボクも夫婦達者なうちにと,月1回のペースでツアー(国内旅行が主),気が向いた時に日帰りドライブ,温泉巡り(一番のお気に入りは晴天の昼下がりに下湯原の露天風呂に浸かること),美術展鑑賞などなど。そして下手の横好きも多く,その中の一つである色紙絵は,ツアーのアルバムや散歩の途中で遭遇した風景などを月2枚のペースで描き,自己満足の世界に陶酔しています。それからネコの額ほどの庭ですが,年中草花で飾りたいので,草取り,土作りや,時間の経つのも忘れて剪定したり,道行く人が立ち止まってフェンスの花の写真を撮ってくれたりするのを喜び,夕方の水遣りの時に通行人と話すのが好きです。そして夜間診療当番のなくなった今,風呂上がりにゆったりとした気分で飲む冷えすぎたビールがこの世で最高の好物です。時々,向こう三軒両隣からカラオケいかが?とのお誘い。即OKで,ホイホイと近所のカラオケボックスへ走りこみ,思いっきり三波春夫や北島三郎になりきります。しかし,学生時代にちょっぴり習った尺八,その後は我流で気の向くままに演歌を吹いていますが,定年を機にこれからは正調を毎日30分ずつという固い決心(?)をしたものの,これだけは実行できていません。そのうちに歯が無くなれば音も出なくなるかもしれないので,心新たにして「竹林軒」めざして始めてみようかな。
 休日の早朝散歩は雨が降らない限り5000歩ほどの速足で汗をかいています。その最中,周囲の景色を見回していると,自然に頭の中に湧いてくる5・7・5の駄句も,「塵も積もれば山」の数となりました。読書は就寝前の床の中で続けてきましたが,還暦も過ぎると,蒲団の中での読書は,目は活字を追っていても頭はすでに眠りについており,数分でバサッと顔の上に落ちてくることがしょっちゅう。晩酌のビールのおかげで夜中には必ずトイレへ。それまで3時間ほどは熟睡しており頭もすっきりしているので,近頃はこの時間帯に読書。そして目が疲れた時点で再び眠りにつくことにしています。テレビを見る時間も少し増えました。OBになってから衛星放送を見ることができるようにしたので,もっぱら古い映画,50年も昔のモノクロは時代背景が懐かしく,ストーリーは単純で演技も幼稚で,時代劇の刀は竹光,切られても着物は破れず血も出ない,勧善懲悪,ハッピーエンドなど,ボクを小学生時代へタイムスリップさせてくれます。そういえば,ずっと以前から毎年,大晦日の夜に放映される「ゆく年くる年」で全国の寺院の梵鐘が紹介され,除夜の鐘をつきながら新年を祝う番組を,定年後の時間がありあまって退屈でしょうがない,と思うような時に見返してみようということで録り貯めたビデオも,ボツボツ見返してみたいものです。「盛年不重来,歳月不待人」ですが,「継続は力」ということも毎日経験しながら人生を楽しんでいます。
 そして書斎にある水槽の中では,昭和53年から約30年間,一匹のアカハライモリが泳ぎ続けています。まだまだ元気で生存記録を更新し続けるでしょう。