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〔共済連だより〕

家畜診療日誌

西部家畜診療所 石 田 博 孝

 10月19日(金)今日は夜間当番です。今では珍しくも無くなった暑い夏が10月まで続いています。ようやく10月半ばにして秋が訪れたかと思うと一気に冷え込みました。急激な気温の変化に「おじさん獣医師」は,いの一番に風邪を拾ってしまいました。こんな日は裸にはなりたくありません。いやな予感。午後10時難産の往診依頼です。ベテランの農家です。体調が悪いので難しくなければと考えてしまいます。農家に着くと「早期破水による陣痛微弱だ!」これなら助産だけで大丈夫です。12時前に帰宅。薬を飲んで布団にもぐりこみました。月曜までに回復したいのです。大動物の臨床は体力勝負です。50を過ぎた身には少々きつい時があります。
 私達の家畜診療所は新見市(旧大佐を除く),高梁市,吉備中央町(旧賀陽),真庭市(旧北房),総社市(旧昭和)と広範囲を担当地域としています。平成2年の畜産物自由化以来,後継者不足によるものもあるが畜産農家は和牛,乳牛ともに次第に減少し,これら家畜頭数の減少につれて管内には本所・支所合わせて6ヶ所あった家畜診療所は西部家畜診療所に統合されてしまいました。勤務している獣医師数も5名となりました。あまり言いたくはないのですが診療所も高齢化になっています。計算してみたら平均年齢は50歳を超えています。なんとか若手獣医師に来てもらいたいところです。毎年幾多の獣医師免許取得者が生まれるのですが大動物臨床に価値を認め目指してくる若者が非常に少ないのが現実です。
 近年,畜産物生産に貢献してきた獣医学は畜産の分野から離れつつあります。これらの状況は非常に気がかりです。
 大動物臨床経験が30年になりますが,畜産に貢献してきたという自負もあり,臨床は生命の織り成す変化・躍動感・成功・失敗等がありおおいに満足しています。達成感のある仕事だと思います。
 都市と地方の格差拡大は進行し,格差是正が政治的課題になっていますが地域特性を生かした農業振興,私達にとっては畜産の維持,育成が地方発信の有力な手段だと私は勝手に考えています。
 このままいくと限りなく無獣医地区への道を辿りつつあります。大動物臨床も病気の治療だけでなく生産獣医療が重要となります。若い力が必要です。一人でも若い獣医師が私たちの世界に飛び込んでくることを希望します。医師の世界でも産婦人科医,小児科医の不足が話題になっていますが困難な道にこそ喜びがあるのだといえばこれはもう化石的な価値観なのでしょうか。
 もし価値を見出して私たちの後継を目指す若者がいればみんなで応援したいと思います。