ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り2007年11・12月号 >高梁地域発〜みんなで取り組む子牛の人工哺育技術の向上〜

〔普及の現場から〕

高梁地域発〜みんなで取り組む子牛の人工哺育技術の向上〜

高梁農業普及指導センター

1 はじめに

 厳しい畜産経営の情勢の中にあって,子牛の哺育育成技術の向上が,健康で,発育良好な牛づくりにとって重要です。
 そこで今回は,高梁管内における子牛の人工哺育へのいろいろな取組を紹介します。

2 地域の概要

 高梁市は,岡山県の中西部に位置し,高梁川が中央部を南北に流れ,その両側に高原地帯が広がっています。この地域では,養鶏,酪農,肉用牛等の畜産経営と共に高品質な夏秋トマトやピオーネの栽培も盛んです。

3 和牛子牛の哺育育成技術向上の取組について

 管内では,様々な理由により和牛人工哺育技術に取り組んでいますが,主には酪農家の授精卵移植によるET和牛生産,肥育農家による素牛確保や繁殖農家の子牛の疾病対策などです。その他,近年の子牛価格の好調な推移も一因として上げることができます。
 そしてET技術や関連資材の改善により和牛の人工哺育を行う農家の取り組みを容易にしてきています。
 この人工哺乳技術を導入しても,和牛子牛の哺育はデリケートで,こまめな観察と高い技術が必要とされることに,変わりがありません。
 そこで,本年度 高梁市農業振興協議会の
畜産部会(JAびほく,普及センター,家畜保健所,おからく,家畜診療所等の職員)で和牛子牛の哺育育成技術の向上について取り上げて,調査・研修に取り組んでいます。
 この初乳製剤と代用乳を両方を使用した哺育育成システムの実証調査に先立ち,県下の先進農家や県総合畜産センター研究員を招いて研修会を実施しました。
 先進農家には,現場での超早期離乳時の子牛の育成管理方法の実践,試験場には哺育育成技術の基本を広く講演いただきました。
 この哺育育成システムの実証調査は,管内の5戸の農家に協力をいただき,子牛の体高,体重,胸囲,腹囲の体測や疾病状況など調査を実施しているところです。


(写真:高梁市農業振興協議会主催 哺育技術研修会)

 特に,子牛の哺乳技術に影響が大きい体高の改善を図って行きたいと考えています。
 哺育育成システムに忠実に代用乳の給与を実施した結果,代用乳の種類にかかわらず,現在2ヶ月齢に達した子牛のうち,体高,胸囲で8割以上で発育曲線(+1.5〜1.5%)に達していました。
 今後,哺乳の終了時まで調査を継続し,高梁管内の和牛の人工哺育の飼養管理体系の確立を行って行きたいと考えています。


(写真:巡回調査の状況)

4 乳用子牛の哺乳技術向上について

 乳牛育成基地である,高梁管内の公共牧場では,近年人工授精時期の発育のバラツキが見られていました。
 そこで初産月齢の短縮や発育の改善を図るため,昨年度末に早期育成を推進する飼養管理体系を導入しました。
 改善は,哺乳〜育成初期を中心に行い。初回種付け開始目標を12ヶ月齢として発育状況調査と飼養体系マニュアル作成を図っています。本年度育成牧場や関係機関と協力をはかり,毎月調査(10頭の追跡調査)を実施しています。
 現在までに,9ヶ月齢までの発育状況が明きらかになっており(図1:参照),9ヶ月齢での平均体高は約118p,全頭が発育標準(+1.5〜1.5%)の範囲に入っており哺乳期と育成前期に順調に発育していました。
 また調査頭数は少ないものの,子牛の導入時期と発育標準への到達時期に比例する傾向がみられ,預託時期の参考になればと考えています。今後重要と思われる,9ヶ月齢以降〜初回種付時まで,調査継続していく予定です。


(写真:体高測定の状況)


(図1:ホルスタイン子牛の発育)

5 その他

 本年度の備北地区共進会では,和牛の部で人工哺育された和牛子牛,乳用牛の部では,ジュニアの部の両部でも好成績を上げることができました。これを弾みとして益々,高梁の哺育育成技術の向上を関係機関と協力連携のもと進めて行きたい考えています。


(写真:備北地区畜産共進会表彰式)