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北海道の心意気

福冨 豊子(岡山県職員OB)

 退職間際に発生した鳥インフルエンザに忙殺され,退職後は暫くのんびりしょうと考えていた矢先,大学時代の先輩(北海道農業共済組合家畜診療センターを退職後,現在は薬品器材メーカー勤務)から北海道の女性獣医師の会「はまなす会」を立ち上げるので,講演に来て欲しいと依頼され,特別講演をさせて頂きました。今回は「はまなす会」について紹介させて頂きます。

 平成19年5月18日,北海道女性獣医師有志が発起人となり,札幌で「第1回はまなす会」が約80名の出席者のもと開催されました。構成は女性獣医師として,産業動物診療に携わる獣医師,家畜保健衛生所勤務の獣医師,保健所食肉検査センター勤務の獣医師および薬品器材メーカー勤務の獣医師です。それぞれ,所属も仕事内容も異なる彼女たちが,技術研磨の勉強会の場として,また,女性獣医師の連携を深める場として立ち上げました。

 日程を下記に示します。

テーマ:これからの家畜の感染症対策
主催:はまなす会世話人会
協賛:北海道獣医師会・各薬品器材会社

開催挨拶および世話人代表挨拶

内容

総合司会 小岩政照酪農学園大学教授

特別講演
1 「家畜衛生と獣医師の役割」 北村直人(日本獣医師会顧問)
2 「病性鑑定の立場から」福冨豊子(元岡山県家畜保健衛生所)

話題提供
1.黒毛和種繁殖牛で発生したサルモネラ感染症:伊藤史恵(胆振家畜保健衛生所)
2.根室管内における牛ウイルス性下痢・粘膜病の防疫体制の確立に向けた取り組み:畑田百合子(根室家畜保健衛生所)
3.食肉検査について「食の安全・安心の取り組み」:金子麻里(北見保健所食肉検査課)
4.大動物哺育・育成期の環境除菌:須藤貴之(すどう家畜病院)

総括質疑討論

閉会挨拶

 北村日本獣医師会顧問は,衆議院時代に臨床経験がある初めての獣医師議員として直接政策決定に携わってこられたBSE関連施策を中心に講演をされました。

 私は,病性鑑定を実施する上でのポイント,依頼する側,依頼される側の疫学情報のやりとりの重要性等を実際の症例を挙げながら講演させて頂きました。話題提供された4名の先生方は,日頃の業務の成果や問題点を提起され,総合司会の小岩教授のご助言を頂きながら,活発な討議がなされました。

 現在,道内では約130名の女性獣医師が活躍しておられるそうですが,分野を超えて一同に交いする機会は少なく,会終了後に開催された「意見交換会」では久しぶりにあった同窓生と仕事のこと,友人のこと等話が盛り上がっていました。

 そうした中,出席者のほとんどは若く独身の方が多かったのですが,「結婚適齢期を迎えても,勤務地には適齢期の男性がおらず(過疎地域も多い),将来に不安がある」等の声や「職場には複数の女性を配置して欲しい」との声もあり,女性獣医師が働く環境にも配慮が必要であり,今後は「はまなす会」が,職場環境改善や発生する諸問題解決に向けて働きかけの核となることを期待したいと思いました。

 また,今回の「はまなす会」は,薬品器材メーカー,(社)全国動物薬品器材協会,北海道獣医師会,北海道農業共済連合会,北海道農政部・保健福祉部等多くの関係者が協力されたとのことでした。今後ますます増えて行くであろう女性獣医師に期待すると共に,その能力を遺憾なく発揮してもらうべく育成に力を入れておられる証であろうと感じました。北海道の団結力と意気込みを見た思いがしました。

 来年度以降も「はまなす会」がますます発展されるよう期待すると共に,こうした動きが全国に広がり,女性獣医師が活躍できる場が広がることを願ってやみません。