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岡山県における生乳中尿素態窒素の実態について

(社)岡山県畜産協会 生乳検査部 高山介作

 生乳検査部においては,岡山県内で生産された生乳について各種の検査を実施しております。
 今回は,月2回の分配検査の乳中尿素態窒素(MUN;Milk Urea Nitrogen)の成績を基に,県下の実態について検討したので参考に供します。

1 はじめに

 生乳中のMUN値を知ることにより飼料給与管理等の一助になればと思っております。飼料中の蛋白質が過剰や,蛋白質に対してエネルギーが不足しているとMUNは高く,この反対ではMUNが低下します。しかし,MUNは乳期及び乳量・分娩回数・遺伝的形質・飼養環境等により変動するため,MUNの適正値は,地域により異なり基準値として認定されたものではなく,MUN検査値単独での評価は誤った結果となります。
 今回は,県下のMUN値及び乳蛋白率がどの程度で推移しているかを検討したのでその一部を紹介します。

2 調査期間及び材料

 平成18年4月から平成19年3月の1年間で,各農家のバルククーラーよりオートサンプラーで採取した,分配検査成績の約1万検体。

3 検査機器
 Milko Scan4200uwを使用し尿素・氷点の校正は隔月に実施。

4 成 績

@MUN別の検体数分布
 MUN別の検体数分布を図−1に示した。MUNの県内総平均は11.25r/qで10.00〜12.49r/qを中心にほぼ正規分布が見られ,7.50〜14.99r/qの範囲ものが66.4%となっております。

A月別・区分MUN平均の推移
 月別・区分MUNの平均推移を図−2に示した。月平均MUNは,5月から10月にかけて低下傾向が見られ,11月には急激に9.12r/qと大きく低下が見られ,12月から3月にかけてややスムーズさに欠けるものの上昇しています。
 MUNの7.49以下と17.50以上については,月による変動が見られ年平均の区分内の10.00から12.49r/qは,月による変動が小さくなっています。


BMUN別の乳成分
 MUNに対する乳成分の推移を図−3に示した。脂肪率については年平均4.07%で,MUN4.99r/q以下の3.81%から徐々に上昇し,15.00r/q以上は大きな上昇が見られます。蛋白質率は年平均3.36%で,脂肪率と同様な傾向が見られています。乳糖率については,年平均4.45%でMUN4.99以下は4.43%,7.50から12.49r/qは4.45%,12.50r/q以上は低下傾向が見られています。

C月別蛋白質率別の検体数度数分布
 蛋白質率に対する月別検体数の度数分布を図−4に示した。蛋白質率3.19%以下は,4月18.99%から5月には30.54%と急激に増加し,7月は44.15%となり8月に最高の47.43%に増加しています。9月には20.40%と急激に減少し,以後も減少して12月に最低の5.78%となり,1月から増加し3月は12.81%で,年平均20.99%です。
 3.20%〜3.29%は,4月の23.41%から増加し,6月には最高の29.50%です。7〜10月は25%前後で推移し,11月には16.48%に減少,12月に最低の12.79%となり,1月から増加し3月は19.21%で年平均21.92%です。
 3.30〜3.39%は,4月の23.84%から減少し,8月には最低の12.05%となり,9月に急に上昇して26.68%,10月に最高の26.77%となり,以後25%前後で推移し年平均は22.32%です。
 3.40%〜3.49%は,4月の17.15%から減少し最低は8月の4.16%,9月に急に13.34%に上昇し以後増加で推移し,12〜2月は22%内で推移,3月には減少となり年平均で15.06%です。
 3.50〜3.59%は,4月の5.29%から減少し,5〜8月は2%内で9月から上昇し,11月から1月は13%内で推移し年平均で7.37%です。
 3.60%以上は,4月の11.33%で以後減少し,8月には最低の7.12%,以後上昇し12月には最高の22.02%,1〜3月には減少し年平均は12.34%です。

5 まとめ

@県下のMUN値の平均は,11.25r/qで7.50〜14.99r/qが約65%であり範囲外のものは飼料給与関係の見直しが必要と思います。
A県下の蛋白質率の平均は3.36%で3.20〜3.49%が約60%の範囲にあり3.20%以下・3.50%以上については,飼料給与関係の再検討が必要と思います。
BMUNと乳蛋白質について関心が高まっており,それぞれの地域・地区で指標的なものが示されつつあります。今回の調査から指標的なものを図−5に示します。

CMUN・乳蛋白質率の利用の目的は,牛個体が最高の効率を発揮させる様に飼養管理することであり,最良は時系列である泌乳期で判断することと思っています。したがって牛群検定による個体の状況を把握し活用することが良い方策と思います。また,月2回実施しています分配検査のMUN値を基に,飼料給与・牛の状態・搾乳牛構成等を考慮し,活用していただきたいと思っています。
D今回は,バルク乳における調査のため正常値内だから問題がないと言い切れない場合があり,個体の栄養状態・泌乳期等を考慮してMUNが基準範囲を大きく外れているときには,飼料給与及び飼養管理の再検討をした方が良いと考えられます。