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国際化時代に「技」で挑戦

 

上房郡賀陽町  
黒 瀬 素 康

 就農して早くも4年が過ぎようとしていますが,その頃から牛肉の輸入自由化が始まっていました。
 農業高校卒業後,両親の営んでいた畜産へ就きましたが,当時はホルスタイン種の去勢牛を中心に約130頭の肥育牛を飼養していました。素牛は生後4〜5カ月齢で導入し,これを15〜16カ月間肥育して,ほとんどのものを生体市場(一般市場)で販売していました。
 その頃は,黒毛和種,F1(乳用種と黒毛和種との交雑種)ともに相場は安定していましたが,その後,年々牛肉輸入量の増加に伴いホルスタイン種去勢牛の販売価格は少しづつ低下してきました。その頃から私の地域の肥育農家でも,ホルスタイン種去勢牛からF1交雑種肥育への切換えが見られるようになってきました。我が家でもホルスタイン種去勢牛からF1交雑種,黒毛和種を中心とした肥育経営に転換しました。これは,輸入牛肉に対応するため高品質な牛肉を生産するのが目的です。
 F1交雑種,黒毛和種は肉質を重視するため,我が家では枝肉市場へ出荷してその成績を確認するとともに,そのデーターを活用して肉質の向上に努めています。
 最近,景気の低迷により高級肉の消費が落ち込み,肉質は良くても以前ほど枝肉単価は上がらず,経営はとても厳しい状態です。
 枝肉相場や素牛価格はともに,季節や年によって大きく変動し収入を左右します,経営を安定させるうえで,今後の大きな問題です。牛を肥育するにあたって,コスト削減の問題もありますが,畜舎の増改築,飼料,資材の購入には頭を痛めます。
 高品質な牛肉を生産するためには,良質な粗飼料や濃厚飼料を給与し,敷料も常に交換し清潔さを保ってやるため,これらは安くはつかない,といったようにさまざまな問題があります。
 我が家はとても小規模な牧場ですが,私は頭数ばかりの牧場ではなく,牛の持っている能力を充分に引き出し利用できるような,牛それぞれの個体管理,粗飼料生産,牛糞堆肥の生産と販売を家族で充分にこなせる,小型で強い牧場を目指しています。
 まず,糞尿処理ですが,現在では堆積した牛糞を切り返し,エアレーション,さらに微生物を混入することによって短期生産が可能になって,出荷効率も良くなり,農家の需要も広がっています。出荷はバラ売りですが,今後は,小袋出荷もおこない収入増を図り,経営の一助としたいと考えています。
 次に,牛の頭数が少ないために単価の高い高品質な牛肉を生産する必要があります。そのためには,良質な稲わらや,牧草を生産,確保して給与し,さらに,濃厚飼料の配合を研究・工夫して栄養のバランスを考え,衛生面にも気を配り高品質な肉牛を多頭出荷することで,経営の安定を図っていきたいと思います。
 また,血統,能力をさらに研究し,技術をどんどん身につけ,高品質な牛肉を生産し,我々が安全と品質にこだわり,豊かな大自然の環境の中で造る牛肉を消費者の方々にPRし,理解を深めてもらいたいと考えています。
 そして,これからの国際化時代へ「技」で挑み,畜産というすばらしい産業を広げ,次の世代へと伝えてゆきたいと思います。