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(特集)2

新しい資金の利用について

農林漁業金融公庫岡山支店

1.農林公庫のご紹介

 農林漁協金融公庫は,農林漁業の発展を図るための政策金融機関として昭和28年に設立されました。以来42年にわたり,長期で低利の公庫資金のご融資を通じて皆様の経営をご支援し,わが国の農林漁業の発展を支えてまいりました。現在は全国21の支店と260余りの業務委託金融機関により業務をおこなっております。

 岡山県におきましては,昭和34年度に岡山支店を開設し,岡山県信連,中国銀行などの業務委託金融機関の協力を得て業務をおこなっております。

 公庫資金は,国の予算と同時に策定される財政投融資計画(財投)に基づいて,公庫が国から借り入れる資金を主な原資としています。このため長期・低利であるほかにも,融資利率が返済終了まで変わらない固定金利であること,資金によっては国の基金から利子助成が受けられること,担保を設定するときに必要な登録免許税が免除されることなど,一般の金融機関から融資される資金にはない特色を持っています。

2.スーパー総合資金制度

 平成4年6月に農林水産省から,21世紀に向けた今後の農政の基本方向を示した「新しい食料・農業・農村政策の方向」,いわゆる「新政策」が発表されました。これを踏まえて平成5年度に「農業経営基盤強化促進法」が施行され,新しい認定農業者制度が創設されました。翌6年度に,この新政策の方向に沿って,効率的で安定した農業経営を目指す「農業経営改善計画」を立て,市町村長から認定を受けた農業者の方々を支援するための総合的な融資制度「経営体育成総合融資制度」(略称:スーパー総合資金制度)が創設されました。

 この融資制度は,認定を受けた計画を達成するために必要な長期資金を総合的にご融資する「農業経営基盤強化資金」(スーパーL資金)と,計画を達成するために必要な短期資金をご融資する「農業経営改善促進資金」(スーパーS資金)の2つから構成されています。

 スーパーL資金は農林公庫から,スーパーS資金は農協,銀行などの金融機関からご融資する資金です。

3.スーパーL資金

 農林公庫がご融資するスーパーL資金は,先に述べたとおり,認定農業者が「農業経営改善計画」を達成するために必要となる長期資金を総合的にご融資するものです。資金の用途,融資条件,融資限度額については表1をご覧ください。設備投資から経営費用,無形固定資産の取得,財務の健全化を図るための資金など,幅広く対応できる制度になっています。また融資利率は,国並びに県・市町村からの利子助成により,現在の金利情勢下では1.5%で借り入れできることとなっています。全国的には2.0%で利用できる資金とされていますが,岡山県の場合は特に助成幅が大きく,有利な条件になっています。

 平成6年度のスーパーL資金ご融資の状況を見てみますと,全国の1,720経営体において490億円をご利用いただきました。さまざまな経営部門で活用されていますが,土地利用型の農業では稲作,畑作部門でのご利用額が多く,畜産では採卵鶏,酪農,養豚が多くなっています(図1)。

 岡山県では24経営体において16億円をご利用いただきました。ご利用額の多かった順に見てみると,採卵鶏4経営体(8億円),酪農15経営体(4億円),施設花き2経営体(2億円)などとなっています。

4.スーパーL資金の活用事例

〔事例1〕

岡山県のほぼ中心に位置し,町の中ほどを旭川が流れる建部町。この町に,スーパーL資金を活用している若き酪農家がいます。

 Aさん(31歳)は県農大を卒業後,やはり酪農家であるお父さんのもとで5年間の修行をし,平成元年,同じ県農大を卒業したばかりの弟さんと2人で,県の担い手確保農地保有合理化事業に参加,農地開発公社が離農跡地に整備した草地,施設を借り受けるとともに,乳牛25頭を購入し,入植しました。

 平成6年,この担い手確保事業に参加して5年が経過し,経営・技術にも習熟し,増頭も順調に進んできました。ちょうど独立時期にさしかかった頃,認定農業者制度が創設されたのです。Aさんは役場の担当課で認定制度と申請方法について説明を聞き,5年後の経営目標を「農業経営改善計画」にまとめました。平成10年には成牛60頭規模の経営を目指すAさんの計画は,建部町の基本構想にも適合するものでした。Aさんは町の第1号の認定農業者になりました。

 認定農業者となったAさんは農協と普及センターに相談しながら,「農業経営改善計画」を達成するための具体的なプランを「資金利用計画」にまとめました。総事業費5,100万円のうち,4,900万円をスーパーL資金で調達することになりました。

〔事例2〕

建部町の北部に位置し,棚田の景観が美しい中央町。この町で肉用牛肥育経営を行う有限会社B牧場にもスーパーL資金をご利用いただいています。

 昭和42年に設立され,これまでに様々な経営努力を重ねて来られました。いまでは,乳用の雄牛のみ常時1,300頭を肥育する同社は酪農の盛んな当地域においてなくてはならない存在になっています。

 同社の目標は,常時肥育頭数を2,000頭まで拡大し,飼料基盤を整備するなどにより所得を拡大することと,積極的に雇用によりゆとりある経営を目指すものです。役場と町の畜産センターに相談して「農業経営改善計画」を作成,町第1号の認定農業者となりました。この目標を達成するために必要な「資金利用計画」を,農協,普及センターの協力を得て作成しました。総額1億2,000万円の事業費の内,8,500万円をスーパーL資金で調達することになりました。

5.ご利用までの手続きの流れと注意点

 最初に述べたように,スーパーL資金は認定農業者の経営改善をご支援する資金です。現在も多くの認定農業者の方々からご相談が寄せられています。スーパーL資金のご利用を検討されている方のために,当資金のご融資までの大まかな流れをお示ししますと図2のとおりです。

 まず認定農業者となられましたら,その認定された「農業経営改善計画」の達成に必要な具体的な投資計画,資金調達計画,また収支の実績と計画,現在の負債状況などを「資金利用計画」にまとめていただきます。この「資金利用計画」について,各市町村ごとに組織される「特別融資制度推進会議」(構成機関は市町村,農業委員会,県,普及センター,農協,信連,公庫など)の審査を受けていただきます。その結果承認された「資金利用計画」に基づいて,金融機関(農協など)の窓口を通じて適時借入手続きをしていただくことになります。

 さて次に,ご利用を検討される場合の基本的な注意点をご説明します。

 認定農業者になるには市町村役場で手続きをすることになりますが,この段階からスーパーL資金の借入れをお考えの場合は,できるだけ早めに(認定を受ける前でかまいません)ご自分の構想を融資機関(公庫あるいは信連,農協など)にもご相談ください。「資金利用計画」は,「農業経営改善計画」の達成のための具体的な方法をまとめるものであるため,できれば同時に作成することが望ましいと思われます。

 また,あらかじめご承知おき願いたいことは,認定農業者になればすぐスーパーL資金を借りられるというわけではないことです。先に述べたとおり,目標を達成するための具体的な計画とその基礎となって経営実績を「資金利用計画」にまとめていただき,「特別融資制度推進会議」で慎重に協議・審査させていただきます。ご融資に当たっては担保なども必要となります。

 簿記記帳もご融資の条件になります。「新政策」で示された「経営感覚に優れた経営体」を目指していただくためにも,また将来の計画を立てる基礎となった経営実績を示していただくためにも,簿記記帳を行っていること(これから必ず行うこと)が前提となります。

 償還期間25年(うち据置期間10年),融資限度額(個人1億円,法人5億円)などの融資条件は,制度としての限度であり,すべてのご融資にこの条件が適用できるものではありません。償還期間は取得する施設や機械の耐用年数,償還計画,借り入れる方の年齢などを考慮して適切な期間を設定させていただきます。融資限度額も計画達成に真に必要な額までとなります。

 なお,より詳しいご説明が必要な場合,または具体的なご相談がある場合は,農林公庫岡山支店(岡山市磨屋町9-18-401,電話番号086-232-3611)またはお近くの公庫資金取扱金融機関(岡山県信連,農協,中国銀行),市町村役場の農業担当課,農業改良普及センターなどへご連絡ください。