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家畜診療日記

阿新家畜診療所

所長  藤 間 和 昭

 阿新家畜診療所管内の畜産は和牛の繁殖と肥育が主体であり酪農家は13戸であります。

 厳寒,大雪の中今日も診療所の職員は年中変りばえのしない病気の治療に奔走する。“子牛の白痢,下痢”と“カゼ”なのです。

 年間診療件数の約9割弱がこの子牛の下痢症と呼吸器疾患である。職員も阿新にいると“子牛の下痢症”に関しては大家になるな〜等と口先に出るが,なかなかこの病気が減らないから困るのです。古い伝統をもつ“和牛の郷”阿新は昔(30年前)からこんなに下痢症が多かったのだろうか? 何が変ったのだろうか?と暇にまかせて考えてみました。結論は得られなかったが和牛飼育管理面の今昔を比較してみました。(別表を参照)

 別表@牛舎温度は冬の保温不足 別表B敷料が不足又は稲ワラ等がオガクズに変わり,オガクズは稲ワラに比較して水分(尿)の保水性は良いが放散が悪く細菌等の培地となり易く保温性も低く 別表Aアンモニアの発生源となります。別表D日光浴等は舎飼のために過不足状態にあり,あらゆる代謝機能を低下させ万病の元となります。別表E初乳を与える時間はむしろ早くなっていると思います。別表F飼料は濃厚飼料多給型となり尿素態窒素含有の多い餌が増えており栄養性下痢,“乳越し”による下痢等の原因となります。別表G近年問題視されているのが遺伝的要因であり,近交係数が高くなると悪い遺伝子,良い遺伝子もいでんする事から,虚脱胎児,畸型児等の問題が生じ易く獣医界でも問題視されている項目であります。悪い遺伝子が重複しないような計画的交配が大切であり苦労をする要点です。

 以上のように子牛の下痢は@による腹冷えBによる保温不足によるもの牛床の湿潤,細菌の異常繁殖した状態Fの濃厚飼料多給型によるもの等多くの蓄舎環境条件が重なり発症するのです。呼吸器疾患は@,A,B等の原因によりストレワスが加わって発病するわけです。D,Gは病気の直接の原因とならないにしても改善と注意を要する事項です。

 これ等の1つ1つを改善する事が我々獣医師,診療所に与えられた使命でありますが,農家との連帯の認識の上に立って病気を減らす事が重要であります。

 予防及び治療にしても全て化学薬剤で解決できるものではありません。化学療法は病因究明,医薬,開発等によって著しい進歩をしていますが,一向に病気が減らない原因は管理と治療が“イタチゴッコ”をしているからです。今一度視点を見直して頑張りましょう。最後にこれ等の子牛の疾病を減らす事によって診療所の余力を空胎検診等その他の予防,指導の強化を図りたく願う物でございます。