ホーム>岡山畜産便り > 岡山畜産便り1996年4月号 > ブロイラー事業紹介と食鳥産業の現状について |
(1)事業の目的
近年の円高等々により鶏肉は中国を始め諸外国からの輸入量が増加傾向であり,この様な実態を受けて我が国のブロイラー生産者に対して安い輸入鶏肉と競争するために当然,コスト低減と高品質鶏肉の生産に向けての努力が求められています。
この様な状況の中で平成4年4月から実施されている食鳥検査(現状では1羽当り基本的には3円,日曜祭日,年末年始は主として4円)に伴う経費負担増がみられる一方,検査の結果,廃棄処分になる食鳥が増加したこともあって,ブロイラーの収益性が悪化している現状であります。
しかし,食鳥検査の結果,廃棄処分になっている食鳥の中にはブロイラー生産農家等が,より衛生的に飼養管理の徹底を行うことで未然に防げるものが相当割合含まれているとみられています。
そこで食鳥検査に対応するための生産方式の導入(例えば抗菌性の強い優良素びなの共同購入等)により廃棄率の削減に計画的に取り組む集団に対し食鳥の生産方式の改善を図るための助成金を交付し,国内食鳥産業の体質強化に資することになっています。
(2)事業実施等
事業主体は(社)日本食鳥協会で団体等に事業を委託して実施されます。岡山県家畜畜産物衛生指導協会としてはフローチャートの地方鶏肉生産性向上推進協議会の枠内にある事柄について協力させていただくことになっています。事業は平成7年1月から5カ年間実施されます。
世界のブロイラー産業と言えば先ず中国であり,その産業を取りまく状況についてまとめてみました。
(1)中国ブロイラー事情
中国ブロイラー産業は1964年(昭和39年)に発足したもので約30年の歴史があり,1980年(昭和55年)代の後半から需要量も多く付加価値も高い日本に輸出される様になっています。中国のブロイラー産業の急速な発展の背景には次の様な事柄があろうかと思われます。
先ず
@人件費が安い
A日本に近い
B輸出依存度が低い
C自然条件に恵まれる等々があります。
ブロイラー産業は労働集約型産業でありコストに占める人件費の比重が大きい。これらの事から米国は競争することが出来ない。タイ国等も土地代,人件費が高い。
また,中国は日本に近いと言う地理の便に恵まれているメリットがあり運賃が安いだけでなく連絡,技術交流などのための出張も便利で対応力も非常に強い。
タイ国の年間生産量は年間85万トンで,この内25%を輸出しており主要市場の日本向けが低迷すると,たちまち投げ売りの措置が多い,端的に言えば輸出依存度が高くリスクも大きいことが伺えます。しかし中国は内需が90%ですから日本の在庫が増えれば輸出量を控えて内需に回すことが出来るとされています。また,タイ国,ブラジルでは夏場になると2s以上のブロイラーはとても生産出来ないとされており,生産性が極端に落ちる,そこへ行くと中国の生産地は年間気温の差が大きくなく湿度が低い,体重は2.5s〜2.8sが普通であり,またトウモロコシ,大豆の主産国とくる。中国ブロイラー産業の成長ぶりをみると,その勢いは,まだまだ続くのではないでしょうか。
中国では2000年に「1人10羽の鶏」との発展計画があると聞いています。 大変なパワーと思います。
しかし,しかしであります日本の市場には,例えばフレッシュでなければ対応出来ないと言った品質面で国産ならではの優位性が存在します。これらの事実を前にして日本のブロイラー産業,いや,日本の食肉産業全体にとって今後進むべき道を真剣に模索することは2000年を4年後に控えた今から始めても決して早すぎないのではないでしょうか。
(畜産の情報海外編)
(2)日本のブロイラー産業の現状
@ 飼育動向
年次 | 飼養戸数 | 飼養羽数 | 1戸当り飼養羽数 |
---|---|---|---|
平成元 | 5,833(96) | 153,006(99) | 26,200(103) |
平成5 | 4,451(94) | 135,000(96) | 30,400(105) |
平成6 | 4,139(93) | 127,394(94) | 30,800(101) |
平成7 | 3,853(93) | 119,682(94) | 31,100(101) |
資料:農林水産省「畜産統計」、「家畜飼養の動向」、「食肉流通統計」
注:各年次2月1日現在。( )内は対前年比、%
A 生産動向
年次 | 出荷羽数 | 出荷生体重 | 1羽当り平均出荷時生体重 |
---|---|---|---|
平成元 | 729(98) | 1,852(99) | 2.54(101) |
平成5 | 657(96) | 1,739(98) | 2.65(101) |
平成6 | 618(94) | 1,630(94) | 2.64(100) |
資料:農林水産省「ブロイラー流通統計」、「食鶏流通統計」
注:( )内は対前年比、%
年次 | ブロイラー | 成鶏 | 計 |
---|---|---|---|
平成元 | 1,300.3(98.9) | 123.0(94.2) | 1,423.3(98.5) |
平成5 | 1,220.7(97.5) | 116.6(101.8) | 1,337.3(97.9) |
平成6 | 1,144.4(93.8) | 113.4(97.3) | 1,257.9(94.1) |
H7.1〜11 | 1,067.3(102.7) | 101.4(98.5) | 1,162.1(102.3) |
資料:農林水産省畜産局推計
B 鶏肉輸入動向
年度(月) | 合計 | うちアメリカ | うちタイ | うち中国 |
---|---|---|---|---|
平成元 | 286.1(109.0) | 106.5(89.2) | 94.7(120.0) | 30.4(135.5) |
平成5 | 379.1(98.0) | 113.8(103.7) | 117.4(87.5) | 81.9(132.0) |
平成6 | 477.3(125.9) | 126.8(111.5) | 116.6(99.3) | 148.8(181.4) |
H7.4〜11 | 379.2(117.7) | 89.3(99.5) | 78.0(99.9) | 142.4(151.4) |
資料:「日本貿易月表」
注:( )内は対前年比
C 主要国の鶏肉生産量及び輸出量の動向
元 | 4 | 5(見込み) | 前年比 | 6(予測) | 前年比 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
アメリカ | 生産量 | 7,814 | 9,482 | 10,003 | 105 | 10,522 | 105 |
輸出量 | 369 | 675 | 866 | 128 | 907 | 105 | |
ブラジル | 生産量 | 2,084 | 2,872 | 3,130 | 109 | 3,410 | 109 |
輸出量 | 244 | 378 | 373 | 99 | 390 | 105 | |
タイ | 生産量 | 538 | 680 | 650 | 96 | 670 | 103 |
輸出量 | 108 | 175 | 140 | 80 | 140 | 100 | |
中国 | 生産量 | 1,210 | 2,025 | 2,300 | 114 | 2,550 | 111 |
輸出量 | 85 | 110 | 125 | 114 | 140 | 112 | |
日本 | 生産量 | 1,300 | 1,252 | 1,250 | 100 | 1,220 | 98 |
輸出量 | 5 | 7 | 5 | 71 | 5 | 100 | |
主要国計 | 生産量 | 23,389 | 27,871 | 29,073 | 104 | 30,277 | 104 |
輸出量 | 1,843 | 2,627 | 2,863 | 109 | 2,950 | 102 |
資料:USDA「World Poultry Situation 1994.1」
D 肉類の需要と生産の長期見直し
品目 | 平成4年度 | 平成5年度 | 平成7年度 | |
---|---|---|---|---|
肉類計 | 国内消費仕向量(A) | 522 | 529 | 605〜649 |
国内生産量(B) | 340 | 337 | 367 | |
自給率(B)/(A) | ||||
うち鶏肉 | 国内消費仕向量(A) | 175 | 171 | 193〜200 |
国内生産量(B) | 137 | 133 | 141 | |
自給率(B)/(A) | 78 | 77 | 72 | |
うち牛肉 | 国内消費仕向量(A) | 122 | 135 | 182〜214 |
国内生産量(B) | 60 | 60 | 80 | |
自給率(B)/(A) | 49 | 44 | 40 | |
うち豚肉 | 国内消費仕向量(A) | 209 | 208 | 216〜220 |
国内生産量(B) | 143 | 144 | 145 | |
自給率(B)/(A) | 68 | 69 | 67 |
資料:平成7年12月26日閣議決定された「農産物の需要と生産の長期見直し」参考付表 注:1)需要見通しに当たっては、@民間最終消費支出の実質伸び率は、年率2.0〜3.5%と想定し、A総人口は、厚生省人口問題研究所の推計に基づき、129,346千人とした。 2)平成7年度の国境調整措置等は、ウルグアイ・ラウランド農業合意による最終年(平成12年度)のものと仮定した。 今後のWTOにおける継続交渉によるウルグアイ・ラウンド農業合意実施期間後の枠組が明らかになる等前提条件に変更が生じた場合は見直す。 3)自給率は、国内生産量を国内消費仕向量で除して算出したものである。 4)平成7年度の肉類の自給率は、国内消費仕向け量の中位値による。