ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り1996年4月号 > 削蹄の重要性を再認識しよう

家畜診療日記

削蹄の重要性を再認識しよう

真庭家畜診療所
主 幹 山本 幹男

 私は大学時代,研究室の研究テーマが牛の蹄葉炎であったため蹄組織の採取を手伝い,農業共済連に入ってからは,損害防止事業で削蹄を行った際“足持ち”をし,また外科分科会では電動削蹄機の考案のメンバーに加わり,ということで昔から今日まで蹄に縁があったように思います。

 そのせいか診療の際まず目をやるのは牛の足元ということになります。足元を見れば削蹄の状況はもちろんのこと,牛舎特に牛床の構造,管理状態,ふん尿の性状,エサの内容,採食量の確認等々牛の健康のチェックまでできることになります。

 そこで過長蹄であれば削蹄を促すことになりますが,残念なことに返ってくる返事は「削蹄師を頼んでいるんじゃけどなかなか来てくれん。1年に1回できりゃあええところじゃ。」という言葉です。年2回の削蹄を指導している私にとって削蹄師不足という難題は今にはじまったことではなくまた全県下的な問題でしょう。将来の削蹄師を育成するということで,若い酪農後継者に削蹄師の試験講習を勧め,数名削蹄師になってもらいましたが今日の解決にはなりません。とりあえず装削蹄師会(事務局は各地のNOSAI家畜診療所)に相談し,削蹄師の斡旋を受けてみてはどうでしょうか。しかし現実には,農家サイドでは昔から削蹄師はこの人ということで,削蹄師を代えることを極端に嫌う傾向があり問題解決を遅らせています。この際“義理と人情”はこと削蹄に関しては考えず他の削蹄師を受け入れてもらいたいと思います。何故なら蹄は放牧などによる摩耗がない限り日々延び続けており過長蹄による“まきづめ”などの変形蹄の治療や整復は,削蹄を頻回にすることしかないのです。肢蹄疾患が発生する要因は,舎飼,放牧などの飼育方式,舎飼の場合には繋ぎ飼育か放し飼いか,ストールの寸法,舎内面積やふん尿処理施設の構造,舎内の清潔度と乾湿,放牧地の地形や地面の整,不整と乾湿,給与飼料の組成,削蹄の頻度と削蹄技術の巧拙,遺伝的傾向,その他気候などの多くの要因が関与しています。これらの要因を1つ1つ改善することと,適正な削蹄をすることによりバランスのとれた正常な蹄形に常に保つことによって肢蹄疾患を予防することが,牛の寿命を延ばすことにつながるのです。そこで「正しい削蹄とは?」ということになるのですが,そもそも削蹄とは,蹄の負重を安定させて蹄の機能をできるだけ良く発揮させるために,蹄を短く切ったり削ったりすることです。過長蹄は,蹄壁が著しく延びた状態で,牛舎の硬い床の上では蹄が軸側の後方寄りに傾斜するため,正常な蹄が発揮する負重時の本来の機能に血管が生じます。蹄の機能が定価する直接的原因は,知覚部に対する重量の負荷が正しく行われないことであり,そのため最終的に知覚部に挫傷が起こるのです。負重がうまくいっていないものは,削蹄により矯正することができます。削蹄は次のようなことに注意して行なわなければなりません。

 @蹄の内部における体重の配分を改善する。

 A内蹄と外蹄の間の体重配分を改善する。

 B欠損した角質の辺緑を除去または薄くするなどがポイントとなるでしょう。

 ここ何年もの間,乳牛では,死亡廃用事故の多発が続いていますが,そもそも削蹄は,事故防止の点からも,酪農経営の点からも大切な基本であることを再度認識され,1年に2回の削蹄を実施されるようお願いします。