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「高騰する飼料にSマークの見直しを」

岡山県家畜病性鑑定所     
専門研究員 妹 尾 文 雄

 規格適合表示飼料をご存知でしょうか。
 これは,通称Sマークと呼ばれている配合飼料のことで,飼料安全法により公定規格が定められている種類の配合飼料については,指定機関が検定を行い,合格したものにのみ表示することができる飼料です。この検定の有効期間は1年間であり,毎年検定を受け直す必要があります。また,有効期間内は配合内容や保証分値を変更することはできません。
 当所は,その指定検定機関として検定業務を行っています。毎年,県内7箇所の飼料配合工場から約60銘柄の配合飼料が検定に合格しています。
検定の内容は,一般成分は勿論のこと,その他にDCP,TDNあるいはME,更には栄養バランス上必要な,りん,カルシウム等について検査をしています。これらのことから,現在の公定規格制度は良質飼料の推奨制度としての機能を十分果たしていると言えましょう。
 さて,最近とうもろこしシカゴ相場は,上昇の一途をたどっており,4月末現在先物相場が1ブシェル当たり500セント台に跳ね上がったと伝えられています。この1年間に2倍以上になった計算になります。この要因は,世界の穀物在庫が危機的な水準に落ち込んでいるためのようです。新聞情報によれば,米国の今年8月末在庫見通しが,とうもろこしで16日分,大豆が30日分に低下するとのことです。従って,新穀が本格的に入荷する10月までの9月1か月間,日本など輸入国では供給不安が広がりかねない状況にあると指摘されています。
 そこで,当面する国内の配合飼料の動向について考えてみましょう。
 とうもろこしのシカゴ相場の推移と我が国の配合飼料価格の推移をS63年以後の動向について図に示しました。過去の動向はともあれ,最近の状況は異常な事態になっていることが窺えます。
 昨年の米国の減反,作付け期の長雨,夏の熱波等により,とうもろこし相場は平成6年末から8年4月現在まで下降することなく,上昇の一途をたどっております。この影響から配合飼料価格は,昨年10月の3,100円を皮切りに,1月2,500円,4月2,650円値上げを余儀なくされ,現在は,トン当たり62,000円台になっています。しかし,これまでの値上げは,400セント/ブシェル以下での想定であり,500セントが今後も続くとすれば,その差は原料価格でトン当たり約5,000円の値上げになるのは明らかで,その他の原料の大豆や小麦も同様の高値傾向等から考えても,今後も更に上昇する見通しはぬぐい去れないと思われます。
 原料価格が上昇すれば,飼料配合メーカーは価格維持の立場から,栄養成分をなるべく表示成分に近づける努力をするか,もしくは,より安価な原料へ移行せざるを得ないのは道理でしょう。そのことによって,成分切れや粗悪製品になることのないよう適用な対応が望まれるところです。
 そこで,提案ですが,このような時にこそ飼料配合メーカーも,使用する農家も,冒頭に述べた成分品質を保証した「規格適合表示」のある飼料を大いにPRし,また,使用してはいかがかと考える次第です。