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「声」

「養鶏経営の展望」

和気郡吉永町(有)吉永ファーム
代表取締役 岸 本   猛

 週末の新聞には本体以上の重みの「広告」が折り込んであります。とりわけ多いのは食料品を中心にした,スーパーマーケットのそれです。その目玉商品の定番は,「鶏卵」です。1例を申し上げれば,1,500円以上お買い上げの方,お1人様1パック限り「M玉・10個入・28円」です。広告中のM玉は,鶏卵1個の重量規格で,58g並64gまでの重さの卵の意味であり,10個・1パックで約610gの重さといえます。生産者サイドから申し上げますと,ギリギリ製造原価145円/sで逆算すれば,610gの鶏卵製造原価=88円となり,目玉商品の価格は,文字通り目玉が飛び出してしまう感覚です。大赤字で,半端な問題とかたずけることは出来ません。しかも,この店舗はごく普通のスーパーであり,このような広告が,日常的に見受けられる時代なのです。
 畜産雑誌を引用しますと『昭和21年の国民1人あたりの年間鶏卵消費量は12個,平成5年のそれは336個で世界トップ水準鶏卵卸売価格が,昭和25年210円/s以来,昭和48年まで4半世紀の間.200円/s前後の安定価格で推移している事実その事から「鶏卵=物価の優等生」と持て囃されているのではないか?』しかし,現状は価格の変動が激しく,時としては,再生産可能の価格維持さえ困難な状況もあります。
 これからの養鶏経営を展望する事は,至難の業ですが,ご参考まで私見を申し上げます。
@ より一層の「鶏卵の付加価値づくり」を継続することにより鶏卵価格の社会的認知を獲得する事が大切だと考えます。方法は,多種多様あると考えます。鶏種の選定,飼料の工夫,飼養環境の改善等に独創的な発想を蓄積して,従来の鶏卵イメージを払拭し,よりグレードアップした地域特産品的な商品を生産する事が重要だと考えます。徹底した低コスト生産を追求し,しかも,安全・高品質かつ安定的生産等を実践することが急務です。そして,鶏卵価格決定については,生産者自身が納得のゆく,価格形成段階から参加出来る様なシステムづくりを,展望しなくてはなりません。そして,一部分は産直方式(産地直販)を定着させていくことです。
A 価格保持の基本的条件は,鶏卵の需給調整の安定にあることは,万人が認める所です。近年,全国的にも,鶏卵需給調整機能はかなり成熟していますが,未だに完璧とは言いがたく一部の流通実態は不明なままです。しかも,その事に起因した鶏卵や鶏糞の価格破壊が散見され,結果的には,前述の希望的考えかたを,大きく阻害しているのが実態です。「自ら作り上げた自らの組織は,自ら守る」と言う原理原則に立ち返り,自らの役割を再認識して,組織の充実強化へ向けた具体的行動に目覚めることが,重要です。
B O・A革命は,あらゆる分野で凄まじい勢いで,進行しています。コンピューターを駆使し,ネットワークやインターネット活用による迅速・的確な情報の受発信により,効率的かつ安定的な養鶏経営の確立と継続が必要となっています。
 いずれも日常的に解決しなければならない課題ばかりです。今こそ,原点にかえり,生産者個々人が関係機関(者)と一体となり,英知と勇気をもって,諸課題の解決にむけて大胆に行動することが,求められていると確信しています。