岡山畜産便り96年7月号 肉用牛繁殖経営(規模拡大促進指導農家)の調査概要と今後の取り組みについて

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肉用牛繁殖経営(規模拡大促進指導農家)の調査概要と今後の取り組みについて

社団法人 岡山県畜産会

 肉用牛経営を取り巻く情勢は,農家戸数の減少,飼養者の高齢化に加え,輸入牛肉の増加や近年の経済事情を反映した市況の動向など,必ずしも明るい展望を見い出し難い状況にある。
 しかしながら,中・長期的な食料需給動向などを踏まえた肉用牛の生産振興と担い手育成は,岡山県農業の重要課題であり,新しい展開への期待と取り組みが強く求められている。
 本会では,肉用牛繁殖経営農家における子牛の安定的な生産拡大に資するため,昭和63年以降,地域におけるモデル的な中核農家の育成を主眼に,毎年約30戸の肉用牛繁殖経営の調査・診断指導に取り組んできた。その間における社会,経済情勢の変化,牛肉自由化の影響などから,十分な成果を得るまでには到らなかったが,記録・記帳に基づく経営分析の重要性,岡山和牛の優れた増体成績が,いかに低コスト化に貢献しているかの確認,優れた技術・優良雌牛によるモデル事例の育成と啓発の必要性など,将来への多くの指針を得ることができた。
 今後,中山間地域の実状に応じた適正規模での肉用モデル繁殖経営体の育成と普及に,県・経済連等と連携し,鋭意取り組んで参りたい。
 関係者の皆さんのご協力・ご支援を切にお願いする次第である。

総 括
1.繁殖雌牛が減少するなかで,対象農家は,全体として飼養頭数が維持されている。
2.生産費は,低コスト化の傾向にある。
3.農家間の差はあるが,概して分娩間隔が長く,成雌牛1頭あたりの分娩頭数が少ないなど,繁殖成績は,芳ばしくない。その要因は,一様ではないが,濃厚飼料の過給・過肥によるものが少なくない。
  今後,より良質粗飼料による飼育養管理改善が必要である。
4.飼養管理労働時間に,農家間のバラツキが多く,全体として省力化が進展していない。裏山や共同放牧地を利用した放牧の導入や公共牧場の活用などによる省力化を期待したい。
5.草地・飼料ほ等,自給飼料の確保・利用に対する農家間の対応に,隔たりが大きい。
6.低コスト化・生産性向上のための経営データ等,記録の保存・整備やデータの有効利用が不十分である。
 以上のようなことから,記録・記帳の励行・省力管理・1年1産を実現し,高所得を目指してもらいたい。