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アイノウイルス感染症の流行について

井笠家畜保健衛生所 岡 田 ひろみ

 平成7年,従来の異常産の原因であるアカバネウイルス,チュウザンウイルスなどとは異なる「アイノウイルス」によると思われる異常産が西日本各地で流行しました。岡山県でもアイノウイルスの抗体調査を実施したところ県南部を中心に流行が確認されましたので,発生状況と対策について紹介します。

1.アイノウイルス感染症

 アイノウイルスはアカバネウイルスと同様にコガタアカイエカやヌカカなどの吸血昆虫により媒介されます。従って吸血昆虫の活動期である夏から秋にかけて感染し,その後秋から翌年の春にかけて異常産〔流早死産,体型異常(脊椎や四肢の関節湾曲・頸部湾曲・大脳欠損等中枢神経系に異常)〕を引き起こす疾病です。母牛は感染してもアカバネ病と同様に臨床症状を殆ど示しませんが,奇型による難産・子牛の死亡・乳量の低下など経済的被害は甚大となります。また異常産子牛はアカバネ病と非常に似ており,病変から両者の判別をすることは困難なため血清中の抗体価を測定することにより識別します。

2.流行状況

 岡山県では昭和63年に比較的大きな流行があり,井笠管内でもかなり高い陽転率を示し,本ウイルスによる異常産もみられました。その後大きな流行は認められませんでしたが,平成6年に県南東部で小規模な流行が確認されました。そして今回(平成7年)は昭和63年と同様,あるいはそれ以上に大きな流行となり,当管内では平成7年11月から平成8年3月にかけてアイノウイルス感染によると思われる異常産が数例確認されました。

岡山県におけるアイノウイルスの動向

年度 陽転 陽転開月
戸数 頭数
S60 1/13(7.7) 1/20(5.0) 不明
S61 NT NT  
S63 NT NT 9月
H1 4/20(20.0) 11/51(21.6)   
H2 0/20 0/50  
H3 0/20 0/51  
H4 0/20 0/48  
H5 0/20 0/57  
H6 1/20(5.0) 1/60(1.7) 11月
H7 7/20(35.0) 17/76(22.4) 9月

3.抗体検査結果

 異常産の発生に伴い管内のアイノウイルスの浸潤状況を調査した結果,調査したすべての市町村で抗体陽性牛が認められ,管内ほぼ全域にわたりアイノウイルスの感染が認められました。

アイノウイルスの感染症抗体調査結果

感染率 対象市町村
80%以上 矢掛町、鴨方町、里庄町、総社市、真備町
50%〜80% 笠岡市、井原市、芳井町、金光町、倉敷市
50%未満 美星町

4.対  策

 アイノウイルス感染症を含めた異常産の対策として,平成8年から牛異常産3種混合不活化ワクチン(アカバネ病,チュウザン病,アイノウイルス感染症に対して有効)が発売されました。本ワクチンは,
 @ 初めてワクチン接種を受ける牛:4週間隔で2回注射
 A 前年に既に接種を受けている牛:1回注射
  ※ただし1回につき3pの筋肉内注射
を吸血昆虫の発生する6月頃までに行うことにより,アカバネ病,チュウザン病,アイノウイルス感染症による異常産を同時に予防することができます。
 平成9年度からはアカバネ病ワクチンと同様,岡山県衛生指導協会が取り扱う予定(料金未定)となっておりますので積極的な利用が望まれます。
 異常産の原因はウイルス・細菌・原虫に起因するものと様々ですが,この数年全国的に増加傾向にあり畜産経営の圧迫要因となっています。異常産が発生した場合には,直ちに最寄りの家畜保健衛生所に連絡していただき,病性鑑定により原因を究明し,適切なワクチン接種等の対策をとるようにしましょう。
 不明な点や詳細な内容については家畜保健衛生所にお問い合わせください。