岡山畜産便り96年10月号 肉用牛改良に取り組む女性リーダー

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「輝くひと」

「肉用牛改良に取り組む女性リーダー」

阿哲郡大佐町 矢 庭 安 子さん

1 はじめに

 阿哲郡大佐町は,岡山県の北西部に位置し,古くから肉用牛飼育の盛んな土地であり,和牛試験場があったことも知られています。今回紹介する矢庭安子さんは,大佐町の西,田治部という地区に住んでおられます。肉用牛(繁殖雌牛)の飼養状況は,大佐町では,65戸・約180頭,田治部地区では8戸・約50頭が飼育されています。大佐町は育種価の高い牛が保留され,また交配についても研究熱心な地域であります。

2 牛飼いを始めるきっかけ

 徳島県出身の矢庭さんは,独身の時に仕事で岡山県に来られ,ご主人の邦男さんと出会われました。当初,安子さんは三男である邦男さんが故郷に帰って農業を継ぐことなど考えておられませんでした。ところが長男が1歳を過ぎた頃,実家の都合により,ご主人が実家に戻ることになり,それまで農業をしたことがなかった安子さんが,ご主人やご両親が留守の時などに牛に水をやる程度から牛飼いの道に入るようになりました。
 邦男さんが経営主となってから牛の頭数も増え,共進会やセリ市に夫婦揃って出かけていくうちに安子さんは本気で牛飼いの魅力にとりつかれていったそうです。

3 矢庭家の中心として

 家庭では3人の子供の母親としての仕事のほかに,縫製の内職をされています。農業では,牛飼いだけでなく水稲についても水管理や施肥など管理面を安子さんが担当されています。地域活動では,和牛婦人グループのリーダーとして視察研修や役員会など中心となって活動されています。また,大佐町畜産振興会や和牛育成組合にも夫婦揃っての活動をしておられます。いつのまにか安子さんの生活は,家事・農業・縫製の内職・地域活動と多面にわたり,矢庭家の中心として欠くことのできない存在になりました。

4 牛飼いについて,今までとこれから

 矢庭家の牛飼いをみると,母牛の血統は糸藤中心に保留を行い,市場性の高い子牛生産が行われています。子牛育成の方針としては,発育がよく体型の優れた牛になるよう20数年間の経験を活かした育成管理をされています。
 子牛セリ市や,共進会の成績をみると,セリ市では,昭和62年9月に去勢において岡山県のトップ賞を獲得され,共進会では,大佐町のグランドチャンピオンや,阿新のトップ賞,岡山県での優等賞等数多く受賞されています。共進会に出場するにあたっては,前年よりも優れた牛の育成を目指して,邦男さんと二人三脚で日夜つきっきりの管理をされています。
 今後について安子さんは,「子供の手も離れ,牛飼いにもさらに力をいれていきたい。また,地域の和牛振興についても協力していきたい。まだまだ忙しくなりそうです。」と話して下さいました。

5 経営規模

飼育頭数 成 牛 3頭
育成牛 1頭
子 牛 3頭
飼料作物 トウモロコシ 15a
イタリアン 15a
水   稲 120a
施設・機械 牛 舎 1棟
推肥舎 1棟
平成8年子牛出荷頭数 3頭

6 家族の概要

矢 庭 邦 男 経営主
    安 子 本 人
    淳 二 長 男
    裕 子 次 女