岡山畜産便り96年11・12月号 岡山和牛の名声を

ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り1996年11・12月号 > 岡山和牛の名声を

「声」

「岡山和牛の名声を」

阿新地方振興局(畜産係)

 日本は経済的には裕福な国になり,食生活も贅沢になっている。牛肉の消費も終戦後に比べ10倍程度となっている。今後も牛肉の消費は増加のペースは落ちるものの,伸び続けるものと推測される。
 一方,牛肉の輸入自由化後,和牛飼養農家とりわけ繁殖農家の高齢化や後継者難による飼養戸数,頭数の減少が進んでいる。最近では狂牛病と病原性大腸菌O−157パニックも加わり,肉用牛を取り巻く情勢は厳しい。
 また,バブルの崩壊により,和牛仔牛価格も50万円近くした時代は過ぎ去り,良い肉,つまり,安全で美味しい肉を安く作ることが求められている。
 肉の嗜好は,周期的に肉質・肉量で揺れ動いているようである。
 最近,枝肉の価格は上物がやや下がっているのに対し,中,並物は堅調でやや上向きの傾向にある。
 霜降り嗜好は,贈答用や高級料理店向けが多く,今後も家庭で食べられる程度の美味しい国産和牛肉の需要が伸びることは確実と思われる。そのためにも外国の肉専用種に比べて増体の劣る和牛においては,岡山和牛の優れた増体能力を維持増進しなければならない。
 枝肉(肥育牛)の価格は,枝肉単価×枝肉重量であり,肉質が良くても,肉量(増体)が悪くては儲けにつながらない。
 幸い,第二富藤,藤花等,質量兼備の種雄牛が広く使われ始めているのに加え,より高育種価の候補牛が検定中である。
 昨年,管内の肥育農家が組織する青年肉用牛研究会のメンバー10人程度と普及センター,振興局とで,千屋の山中に一泊し牛肉の食べ比べをした。
 食べ比べに用いた肉は,輸入肉(オーストラリア産の草で肥育した牛肉と,米国産の穀物で肥育した牛肉)と,国産牛肉(乳牛,和牛裾物と上物)の五種類で塩こしょうで味付けしたものを網焼きにして食べた。
 種類により差はあるものの,どの肉も全員美味しく平らげた。
 そこで結論は,消費者の食肉志向はバラエティーに富み,若者が腹一杯食べるときは,輸入肉はむしろアッサリしていて好まれるが,すき焼きやしゃぶしゃぶなら,上物和牛肉のコクのあるうま味に勝る物はないということだった。いずれにせよ,牛肉の消費が増えるのは肉用牛農家にとって望ましいことである。ただ,安全面を考えると,消費者の目の届くところで飼われている国産牛肉に最も信頼がもてるという意見に集約された。
 肉の生産には人間の食物でもある多くの穀物を消費する。とりわけ,牛肉はブロイラーや豚肉に比べ同じ量の肉を生産するのに,より多くの穀物が消費される。
 今後,発展途上国の人口増加と経済発展による食肉の増加により,食肉の需要は世界的に伸び続けることは確実である。
 そのためにも,転作田未利用資源等の利用により飼料生産量をふやし,自給率向上が必要である。また,まきば,野草他,運動場の利用による省力管理と繁殖成績の向上を図り,生産コストの低減を行う必要がある。さらに受精卵移植等の利用による高能力牛の多子生産を推進し,肉用牛の積極的な改良・増殖を図り,岡山和牛の名声を一層高めたいものである。