ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り1996年11・12月号 > 酪農における濃厚飼料給与のポイント

「技術のページ」

酪農における濃厚飼料給与のポイント
── 自動給餌機のメリットは・・・ ──

岡山県総合畜産センター 秋 山 俊 彦

 現在,TMR以外では粗飼料と濃厚飼料は別々に給与され,回数も1日2回という経営も少なくないと思われます。
 この場合,濃厚飼料の給与量が多い,泌乳初期や高泌乳牛では,へい害が出ていると言われています。
 そこで,センターで行った試験の結果を図に示していますが,これは濃厚飼料の給与回数を,1日4回と8回にした場合の第1胃内pHの変動を比べてみたのもです。
 4回給与は,午前9:15から午後7:15まで約3時間おきに4回給与,それに夜間に4回をプラスした8回給与としました。
 1回当たりの濃厚飼料給与量は,4回が2.5s8回が1.25sとしました。
 給与回数が8回の場合は,ルーメン内pHは6.0〜6.4で安定しています。
 ルーメン内pHが安定していると,微生物発酵も安定し特にpH6.0〜7.0の範囲では繊維分を分解する菌の最適範囲であり,乳脂肪分の元となる酢酸の生成が多くなります。
 一方,給与回数が4回の場合では,飼料給与のない夜間にかけてpHが上昇し,朝,濃厚飼料を給与すると急激にpHが低下しています。
 pHの変動範囲は,pH5.8〜6.8となっており,8回給与に比べ大きく変動しています。
 今回は,4回給与と8回給与を比較してみましたが,2回給与の場合,濃厚飼料の1回当たりの給与量がより多く,pHの変動はもっと大きくなります。
濃厚飼料多回給与の利点
1.ルーメン環境が安定
  (日中ルーメン内pHの変動が少ない)
2.微生物の成育と生産が安定
  (繊維分解菌による酢酸生成の増加)
1と2により
3.乾物摂取量が増加
4.産乳量が増加
5.乳脂肪率が増加
 特に粗飼料が不足している場合には,ルーメン内の緩衝作用が小さいため,濃厚飼料の多回給与は,メリットが大きいようです。
 さらに,1回の給与量が少なく隣りの牛の盗食がなくなるため,個体管理が正確にできるメリットもあります。
 一方,濃厚飼料の給与前に粗飼料を給与することもルーメン内pHを安定させます。
 空腹時に濃厚飼料を給与すると,ルーメン発酵が急激に進み,pHが低下します。
 それに比べて,粗飼料を給与した場合は,ルーメン内で,ゆっくりと分解されるので,ルーメン発酵は穏やかとなり,その後に濃厚飼料を給与してもルーメン内pHの低下はおきにくくなります。
 今回,濃厚飼料の給与量とルーメン内pHの変動を比較しましたが,ルーメン内を安定に保つことは,泌乳量,乳質の改善だけでなく飼料の効率的な利用と乳牛の健康のポイントと言えます。