岡山畜産便り96年11・12月号 JA青年の主張発表大会

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「ひろば」

JA青年の主張発表大会

(JA中央会 営農課)

JA津山市青年部   
永 礼 淳 一さん

 岡山県下で農業に携わる若い世代のリーダーが意見や要望を語り合う「JA青壮年部・女性部フレッシュミセス交流集会」(JA岡山県青壮年部協議会,同女性組織協議会主催)が去る9月21日,岡山市内のホテルで開かれました。
 農業関係者約80人が出席する中,メーンのJA青年並びにフレッシュミセスの主張発表大会では,1人10分の持ち時間で各4人が意見発表を行いました。
 今回は,「私のめざす酪農」と題した,JA津山市青年部 永礼淳一さんの発表内容を紹介します。永礼さんは,現在,津山市で成牛52頭,育成牛31頭の酪農経営を行っており,地域活動に積極的に参加し,異業種の人々と情報交換しながら,固定観念にとらわれない酪農経営をめざしていると発表されました。以下は,発表要旨です。
 私の家は牛飼いです。牛飼いにも色々ありますが,わが家の経営は酪農です。父の代から酪農を始め,私も幼い頃から牛舎へ行き,手伝いをしていらことから,進学の時にも迷わず酪農経済科のある日本原高校に入学しました。
 しかし,高校在学中は酪農に対しても,まだまだ興味は薄く,実習や講義にもそれほど積極的にはなれませんでした。そうしているうちに高校も卒業の時期を迎え,このまま家で酪農をしようか?それとも進学しようか?と考えていたとき,蒜山高原に中国四国酪農大学校があると知り,蒜山なら近いし,それなら進学してみようと思い,平成3年に入学しました。
 酪大では高校の時とまるでちがっていたのは,27期生,23人全員が酪農に夢を見ていたことです。そして酪大では入学してから1年間は校内で酪農の基礎を勉強し,2年生になると全国各地の酪農家の元で2カ月づつ,3カ所の校外研修を行います。私も岡山県の牛窓,北海道,そして京都と半年間農家住み込みで研修を行い,本格的な酪農と大切である人間関係など色々なことを研修の中で学ぶことができました。
 なかでも,京都でけんしゅうさせていただいた牧場では,酪農における飼養管理の重要性を痛感させられました。実は私もこの京都に来るまでは,世間でいわれているように酪農に対するイメージがキツイ・キタナイ・キケンの3Kだとか,もうからないなどと酪大で勉強している私でさえも思っていたのです。
 しかし,この京都で研修してみて,今までの酪農に対する暗いイメージがすっかり変わってしまいました。
 なぜなら第一に,この牧場は今まで見てきた牧場とは違い,高収入を上げていたからです。牛の能力を最大限に引き出すには,―牛が健康でなければならない。牛は,草を食べる動物である―という信念を基に経営者が飼養管理を行っていたからです。これは,牛の健康を考えればあたりまえのことですが,多くの酪農家では,乳量の増加のために濃厚飼料の多給の飼養管理となっているのが現状だと思います。そした,何よりもこの経営者が酪農で得た利益によって経営に趣味にと自分の人生を楽しんでいるから驚きです。
 この経営者の酪農に対する考え方に大変感銘を受け,私も同じ牛を飼うならこの経営者のように楽しく,もうかる酪農をめざしていきたいと思いました。
 私の家では,両親と私の3人で経営している酪農一筋の農家で,就農した当時は成牛30頭,育成牛20頭で牛群平均乳量8,400s前後でした。
 実際,家で就農し経営に加わってみると今までしてきた飼育管理と私が大学や研修で学んだことに差があり,私が飼育管理をまかされてからは今までの勉強や研修の中で確信を得た飼育管理に徐々に変えていきました。
 そうこうしているうちにJA津山市からJA青年部に入部するように勧められ,私も含め同じ年,3名が入部しました。また,津山市農業後継者協議会にも同時入会になりました。当時は,仕事に追われており,興味もなく,会議に出席しても発言しないことも多く,欠席がちでした。
 しかし,その年の秋,JAふれあい祭りに青年部で餅つきをすることになり,しかたなく準備に行ってみると,海外農業に関心がある人から「若い者で海外の農業を見に行かないか」と誘われ,私も海外の農業に興味があったので,これをきっかけに青年部の活動にも積極的に参加するようになりました。
 参加してみるとひとつの物事に対しても色々な視点からの考え方もあるということがわかり,大変良い勉強になりました。そして,その翌年には青年部有志11名でアメリカ研修に行き,野菜農家や稲作農家とともに酪農の牧場も視察することができました。あまりの規模の大きさと生産のコストの安さに驚かされ,とても日本での経営の参考にはなりませんでしたが,ここの経営者の話を聞いてみるとアメリカでの牛の価格が日本よりずいぶん安いというので,日本国内の牛を購入するよりアメリカから導入する方がコストが安くつき,もしくは同じぐらいのコストでより高能力な牛を導入することができるのでは?という思いを胸に日本に帰ってきました。
 ちょうど我家も私が経営に加わったことにより,労力にゆとりができ規模拡大を考えていたところだったので,アメリカからの牛の導入について家族内で真剣に討議しました。そして,組合に相談したところ,やはり北海道から導入するより安いということがわかったので,今までやっていた稲作も中止して,これからは酪農一筋でやっていくことを決意し,アメリカ,カナダから15頭の牛を導入することを決めました。そうと決まれば話は早く,フリーバーン牛舎とパーラーをわずか3カ月で完成させました。また,コストを押さえるために建設の行程の中でできるところは自分たちでやりました。
 新しい牛舎も完成し,待望の牛も入って来たのですが,これから酪農一筋でやっていくと決めた気負いもあったのでしょうか,ついつい乳量をのばすための飼養管理となってしまい,確かに乳量は増えたのですが,繁殖の方は,まったくダメになってしまいました。獣医の先生に相談したところやはり飼養管理のことを指摘され,再び研修で学んだ飼養管理の重要性を思い出しました。
 現在,我家では成牛52頭,育成牛31頭で牛群平均乳量8,700sですが,牛舎は都市化が進む街の中にあり,牛舎の上にはマンションが建ち,隣には小学校という立地条件の中で牛を飼っております。
 この都市化が進む中で酪農を続けていくためには,地域の活動に積極的に参加し,仲間づくりを行い,異業種の人とも情報交換をして,もっと農業の良さというものをわかってもらうことが必要ではないでしょうか。そのために現在私は,農業関係及び青年団関係合わせて8つもの団体に加入しており,いくつもの役職をこなしています。
 これからの農業はもうからない,もうからないと言っているばかりでは利益につながりません。固定観念にとらわれず柔軟な思考をもって,人の話を聞き,良いと思われることは,積極的に自分の経営の中に取り入れていくとが重要なのではないでしょうか。
 私は,これからも積極的に地域活動に参加しながら楽しく,もうかる酪農をめざして,がんばっていきたいと思います。