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わが国の養豚産業が国際化の中で生き残っていくためには生産コストの低減が必要なことから,ますます規模拡大が進んでいます。しかし,衛生費や光熱費等にスケールメリットは見られず,特に衛生費が増加して肉豚1頭あたりの収益性は減少しているのが現状です。すなわち,規模拡大による最大の課題の一つが「疾病対策」であり,精密養豚経営により「ロス」を最小限に押さえることが肝要となっています。また,昨今,狂牛病や病原性大腸菌O−157が問題となり,「食肉の安全性」に強い関心が集まっています。こうした中で注目されているのがSPF養豚技術です。SPF養豚技術は,豚病清浄化による生産向上を目的とした総合的衛生管理システムです。
SPF(Specific Pathogen Free)豚とは,「生産性を阻害する特定の疾病を取り除いた健康な豚」のことで,現在,わが国において特定疾病に指定されているのは,
@マイコプラズマ性肺炎
A豚萎縮性鼻炎
B豚赤痢
Cトキソプラズマ病
Dオーエスキー病,の5つです。
SPF豚は,設置基準を満たしたSPF豚農場で厳しい防疫・衛生管理のもとで飼育しなければなりませんが,次のような効果が期待できます。
○資料効率向上による飼料費の節減。
○肥育期間の短縮。
○事故率減少と衛生費の大幅な節減。
○農場全体の成績が平均して向上。
また,健康志向が定着する中,消費者はおいしさとともに「よい安心して食べられる,安全な食品」を求めており,「5種類の病原体がいない。」「薬剤の投与を大幅に減らせる。」といった安全性が大きな魅力となっています。この時代のニーズにあった豚肉を供給できるのがSPF豚です。
現在,岡山県内のSPF豚農場は,阿哲郡哲多町の吉備牧場と田淵牧野組合の2農場です。吉備牧場は繁殖農場としてSPF子豚を生産し,田淵牧野組合でこの子豚を肥育して出荷しています。(表1)。両農場とも既存の一般豚農場をSPF豚農場に変換するという方法で平成8年7月に生まれ変わりました。
SPF豚農場では,外部から疾病が持ち込まれないように,入場する車両はシャワーゲートで消毒され,物品は紫外線照射パスボックスを通し,人がフェンスで囲まれた豚舎内に入るためには必ずシャワーを浴び,下着から帽子まですべての衣類を場内専用のものに着替えるなど徹底した入出場管理規制がとられています。
また,定期的に抗体検査を実施したり,出荷豚の病変検査を行い,衛生状態の把握に努めています。
こうして生産されたSPF豚は8月25日,31頭が初出荷されて以来,随時出荷されており,良好な肥育成績をおさめています。
SPF豚肉は,「岡山ポーク指定店」等で販売され好調な売れ行きを示していますが,需要が増えた場合には生産量が確保できないため,今後は計画生産を徹底し,定時定量販売を目指して取り組んでいきたいとのことでした。
(1) | 吉備牧場(繁殖農場) | |
種雄豚: | 13頭 | |
繁殖雌: | 316頭 | |
子 豚: | 1,050頭 | |
合 計: | 1,379頭 | |
(2) | 田淵牧野組合(肥育農場) | |
肥育豚: | 1,150頭 | |
計画出荷頭数: | 6,000頭/年 |