ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り1997年1月号 > 農業・畜産活性化に関する女性の提言

「特集」新春座談会

「農業・畜産活性化に関する女性の提言」

社団法人岡山県畜産会

座談会出席者の方々
 農家戸数が減少する中で,酪農や和牛飼養など,畜産分野での女性の活躍には,めざましいものがある。
 本会では,昨年11月22日,テクノサポート岡山で,女性の皆さんを中心に,首記座談会を開催したので,その概要をお知らせする。(末尾記載の参加者による)

【はじめに】

(渡邉)
 「岡山畜産便り」の表紙に,ご登場頂いている「輝くひと(女性)など,畜産に関わりのある分野で,積極的に活躍されている女性の皆さんを中心に,指導機関の皆さんとの意見交換など行いながら,種々,提言して頂き,皆さんと共に,「農業・畜産活性化」の道をさぐりたい。
 先ず,農業を核にした,地域おこしに積極的に取り組まれている加茂川町の片山町長さんに,「農業・畜産の活性化について」話題提供していただき,座談会をはじめたい。
 司会・進行は,酪農経営の確立をめざし,又,県酪農婦人協議会会長など働く女性のリーダーとしても積極的に活動されている安富さんに御願いしたい。
 忌憚のない意見交換で,実り多い座談会にして頂きたい。

【話題提供】

(片山)

☆経済優先のみの農業に視点をおかない。

 私の農業に対する考え方を聞いていただき,又,皆さんの意見を,加茂川町の町づくりに活かしたい。
 農業や山の問題がよく論議され,農業が曲がり角とか,衰退しているとか言われているが,農業が衰退しているのではない。農業を取り巻く環境が変化しているのに,十分な対応ができていないと言うことである。
 現在の農業基本法ができた頃は,経済事情など,バラ色の背景があったが,厳しい現状のなかでは農業を変える必要がある。従来のように,経済優先,儲かる農業のことばかりに,視点をおいてはいけない。

☆生産者・農家に視点をおいた組織つくり。

 今こそ,皆が総反省すべきである。生産者自身も補助金などへの甘えの部分が少なくなかった。生産者団体もこうした問題を,どう整理するか。組織再編が話題になっているが「組織の運営をどうするか」ではなく,生産者・農家に視点をおいた組織作りが進められなければならない。

☆消費者も農業の現状に理解を。

 消費者も農業の現状に,もっと理解すべきだ。美味しい物,無農薬のもの,安い物を与えよ,ばかりではいけない。
 農業・農村が廃れたら,国が滅びるという認識が必要である。そうした考えに基づかなかなければ,新農業基本法ができても,机上の空論になる。

☆農業・農村の意義をもっと啓発。

 農業問題について,農業に関係する人達が,きちんと整理して対応しなければならない。
 農業基本法改正にあたり,政治・行政に携わる人,生産者から消費者まで,皆が反省し,食べ物を提供する農業・農村の意義を,もっと理解し,啓発すべきである。

☆町政振興の柱は,農業。

 加茂川町では,町政の柱を農業振興にしている。農業からの収益は多くないが,農業を振興することで,関連部門への波及効果を期待している。地方では,政治・行政の目標をはっきりさせ,農業を重視しなければならない。農業や山の問題については,種々,言われているが,今後,大きく見直される時期が来る。コメについても,アジア全体の食料問題として論議が高まっている。

☆農村のコミニテイづくりを。

 農村を荒廃させ,農民の生産意欲をなくさせた大きな要因は,減反政策にある。
 村や集落における慣習だったコミニテイの崩壊をもたらしてしまった。
 こうした現状を立て直し,農業を大切にし,農業に携わる人達が皆,今日集まっておられる皆さんのように,輝いている人であってほしいし,そうした環境づくり・愉しいコミニテイづくりを進めなければならない。

☆農業・畜産は愉しいもの。

 バブル崩壊までは,農業・畜産など,経済最優先を基本に対応してきた。
 しかし,これからの時代は違う。農業・畜産に対する感覚を変えなければならない。
 農業・畜産は,説明に時間をかけなければ理解してもらえないが,愉しいものである筈だ。

☆農業には,つくる喜びや感動がある。

 Uターン青年などから,農業は儲かるか否かを尋ねられることがある。そのことも大事だが,農業には,バラの花や牛をつくる喜びや感動がある。
 畜産には,3Kのイメージがあるが,愉しい3Tを考え,啓発しなければならない。
 加茂川町には,ストックファームがある。かって,畜産センターとして,農家で,労力や経費が多くかかる子牛の育成期間を町が役割を受け持つ業務を中心に運営してきた。
 観光ということではないが,訪れた人に喜んで貰える施設に改善整備した。
 食べて,泊まって,きれいな星空を眺めることのできる天文台を目玉に,ポニーや緬山羊なども飼育しており,明るくきれいな環境づくりに努力している。

☆職場の環境が職員の意識を変える。

 ストックファームは,町営で運営しており,人事面で,畜産センターへの配置換えを行う場合,従来は,希望者はいなかったが,最近は,希望者が少なくない。展望は良し,畜舎などの施設整備や業務内容の見直し,女性職員の配置など,職場環境の変化が,そうした傾向をもたらしている。
 道の駅もそうした傾向にある。職場が活気にあふれ,町政の重要な役割を担っているという職員の意識がそうさせているのだろう。
 ストックファームの目玉ともいえる天文台は,役場の職員のボランテイアで稼働している。
 ストックファームの決算では,町の持ち出しもかなりある。しかし,畜産の環境を改善し,農業を育て,有機農業を進める,農業青年を育てる,という観点に立てば,ある程度の支出はやむを得ない。

☆失敗しても,挑戦する気概。

 町内には,吉田牧場があるが,チーズづくりやブラウンスイスの還元肉などにも挑戦している。何事にも挑戦することが必要である。
 村おこし,町づくりは,新しい感動を持つことが大切で,そのためには,失敗しても挑戦する気概を持たなければならない。

☆農業・畜産・山が見直される。

 農業・畜産・山が見直される時期が必ず来る。国の施策も我々の力の結集で,活路を見出せる。これまでの,経済最優先から,最近では,都会は,嫌だと言う人が増えつつある。
 田舎での受け皿作りが,求められている。
 若者や,高齢者などに田舎の生活が愉しくなるような,取り組みをしなければなららい。
 加茂川町では,現在,そうした考えで,ゴールデンパラダイス構想によるプランづくりに取り組んでいる。

☆農業・畜産の愉しみの輪を広げよう。

 都会から地方へ,来たくなる,村の生活が愉しくなるような,農業・畜産の環境づくりに,皆さんに取り組んでいただきたい。
 今日,お集まりの皆さんは,輝いている人達ばかりで,農業に愉しみながら取り組んで頂いているが,そうした農業・畜産への前向きな取り組み・愉しみの輪を広げなければならない。お集まりの皆さんのそうした活動を大いに期待している。

【司会】(安富)
 片山町長さんから,世界・日本・岡山県・加茂川町など広範,豊富な話題を提供頂きました。こうしたお話をもとに,自由に意見交換して欲しい。

☆女性の役割を発揮するときがきた。

 私も堆肥づくりをし,耕種農家へも提供しており,加茂川町の道の駅の発展の模様などを見て,加茂川町・農協の連携・町長さんの積極的な取り組みには,かねてから注目していた。
 やはり,経済的な面だけでなく,心のゆとりなど,女性の役割を発揮しなければならない時期を迎えている。
(井上)

☆付加価値をつけ,心を添え,売る。

 私は,勝英地方で農業の普及活動に従事しているが,県北の農業で,意欲的に活動されている人達の多くは,畜産・酪農に携わっておられる方で,一般農業者は,年配の人が殆んどである。お話のように,今日の農業は,やる気が求められている。やる気がなければ,どうしようもない。一般的に,生産者の皆さんは,作ることは得意だが,売ることへの取り組みの積極性に欠けているように思う。
 付加価値を付け,心を添えて,販売する。その際,農村の良さをPRできるような取り組みが必要である。
 私達指導的立場にいる人も,売ることへの助言が下手で,そうした対応をしていない。
 消費者の皆さんに農業をもっと,よく知って欲しいし,そうした啓発をしなければならない。

☆女性のパートナーシップ発揮に期待。

 酪農婦人の皆さんは,アンテナも高くグループ活動をはじめ,前向きに取り組まれる人が多い。問題が多いだけに,出口に向かって次のステップのことを考えておられるように思う。
 女性農業者は,長年,働きながらも,漸く労働報酬を貰えるようになった。女性の皆さんは,これまで,農村の生活を見ながら,農業を理解し,支えて来られた。農業の良さも知っておられる。女性の力がもっと発揮できる分野が農家・農業に残されている。
 すぐれたパートナーシップを持つ酪農婦人の皆さんの前向きな発想と取り組みに期待したい。

(司会)
「女性の力が農家にある」又「農家には売る力が不足している」との話があったが,産地直売などにも取り組まれている宗田さんに,ご意見を伺いたい。

(宗田)

☆自分で相場をつけ,自由に売る楽しみ。

 産直と言うほどではないが,はじめは,祖父が野菜の安い時期に,市場に出荷しても,買い手市場で,買い叩かれ,折角,いいものを作っても,面白味がなく,農協の人から,空き地があるから「やってみてはどうか」とのことで,テントを張り,無人販売からはじめた。一般の人は市場中心に出荷し,高齢者・婦人などが余分の野菜などを,全て,1品100円で販売した。会員30人それぞれが各人の価値感で,量の大・小を決め,自由に販売した。
 高齢者が多いため,計算も簡単な100円均一とした。既に,数年経過したが,皆さんに大変喜んでいただいている。

☆高齢者とともに,作る喜び,売る喜び。
 春菊など,30束一箱20万円する時期もあったが,200円や300円の時もある。市場での相場変動が激しく,市場・仲買の相場の付け方に腹立たしく思ったりもした。
 自分で相場をつけ,好きなとき,適当な量を楽しみながら,自由に出荷・販売している。
 高齢者の皆さんも作る喜び,売る喜びを感じているように思う。

☆土づくりで連携・消費者交流に楽しみ。

 私は,マスカット・コールマンや野菜など,主人の両親と私の3人でやっている。安富さんとの出会いは,土づくりのための堆肥利用がきっかけで知り合うようになったが,今では,近所の人も安富さんの堆肥を利用されている。住宅地域の小規模な農業で,産直といえる程のものではないが,パート勤務や,土地を売り生活するケースが多い地域にあって,安富さんや周囲の農家・消費者との交流も深まり,愉しく農業をやっている。

(司会)
 お集まりの皆さんは,先を読み,自信と誇りをもって農業に関わっておられる方ばかりだが,農業の取り組み方についてのご意見を。

(赤木)

☆農家の実態に応じた適切な指導を。

 私は酪農をしているので,エサ屋さん・酪農組合・牛群検定の指導員さんなどの研修会に参加してきたが,現場と指導内容にとまどいを感じる面がある。今はなくなったが,かって,夏乳価を設定し,需要の多い夏の乳量増加を指導されたので,牛の分娩時期を変えるなど私も牛も努力した。何年か経過したら変えられた。現場が努力したのに簡単に変えられたことなど幾つかの苦い指導を受けた経験がある。指導内容を十分,咀嚼し,対応する必要もあるが,もっと,現場の実態を把握・理解し,適切な指導をして欲しい。

☆自分に合った農業経営を。

 以前は,乳量を増やす方針で経営してきたが,子供の湿疹・薬アレルギー・薬に頼らない食生活に教えられ,あまり無理をしないで,自分の能力,環境に応じた経営を行うよう心がけている。
 健康な牛づくり,健康な乳づくり,産子に付加価値をつけるため,F1の自家産乳育成など,人も牛もバランスのとれた食生活・健康が基本という経営方針で,酪農・肥育・和牛繁殖・愉しみの山羊・羊など弾力的な複合経営を行っている。

☆農業に誇りを持ち,交流を。

 農業をしていることを余所に向かっても誇りに思うようなやり方をしたいし,そうやっている。これからも変わらない。
 「いい牛乳は,健康な牛から」など,町の人達との交流で,農業への理解を深めるコミニケーションづくりにも,取り組んでいる。

(岡)

☆付加価値鶏卵による規模拡大で経営安定。

 経営安定は,付加価値鶏卵による規模拡大以外に道なしということで,10万羽に規模拡大・法人化し,1販売,2生産,3コストダウンに取り組んでいる。
 エサ・卵価など,系統で決められたニーズ・枠のなかで,いかに食べていける経営をするかに苦心している。鶏糞処理法など,重要な課題であるが,脱臭などに効果をもたらす菌の応用面などで視野を広げることができた。

☆食物を作る・健康を守る女性の取り組み。

 農家で野菜など栽培されるとき,自家消費と販売向けとは,農薬の利用面で異なっていることが多い。矢張り,鶏糞を処理するときでも,良菌のみを働かせ,薬剤を減して,人への影響を少なくするような取り組みが必要である。食物を作る・子供をつくる・家族の健康を守るといったことは,女性の役割であり,そうしたことも考えながら,いかにすれば,コストダウンできるか努力している。

(東山)

☆環境改善,園芸農家との連携。

 笠岡干拓入植7年経過。国際化・自由化が進展するなかで,経営安定・コスト低減への取り組みが大きな課題となっている。
 干拓には,瀬戸内酪農・水島酪農の両組合があるが,干拓婦人部として,生産・消費などに取り組んでいる。又,環境の改善・整備も重要なテーマで,園芸農家などとの連携を一層深めながら,女性の役割を大切にしていきたい。

(矢谷)

☆消費活動へ積極性を。

 考えていたこと,話したいことの多くを加茂川町長さんが言われた。全く同感。赤木さんにも共感したし,大変勇気づけられた。
 忙しいときや難しいことが多いが,好きな農業だから,いつか必ず認められると信じて取り組んで来た。
 消費活動へも,取り組んでいるが,牛乳の消費に関する啓発で,健康づくりとCa不足もよいが,さきに,牛乳の消費拡大広報で,牛乳には「発ガン抑制の効用がある」とのメッセージが生産者から消費者へ送られていた。そうした啓発への積極性が乏しいように思う。酪農家は,牛の健康問題などには詳しいが,消費者の立場に立って考えることに慣れていない。
 栄養面から考えても,チーズ・バターなどの消費拡大への取り組みに,一層積極的に対処しなければならない分野である。

(司会)

☆今こそ,行動展開のとき。

 乳価も安いし,困難な現状のなかで,「今こそ,行動しなければならない時代が来た」の感を強くしている。生活者中心の今日,そうした人達と,どう交流するか,田舎に住みたいという人達をひきつけるために,農村・農業をどう展開させるのか。もっと,考え・行動しなければならない。

(草苅)

☆高齢化が進む中で,気軽に牛飼いを。

 子牛を含め40頭の和牛経営。5月から12月まで,村営放牧場に放牧するなど,飼育環境に恵まれている。
 放牧で足・腰の丈夫な牛づくりができ,自然の中での牛飼いは愉しい。主人は共進会参加を楽しみにしている。
 阿波村には,いい牛がいるんだな・いい環境で牛飼いができるいい村だなーと言われるような阿波村であって欲しいと願って取り組んでいる。最近,いい牛づくり・高く売れる牛づくりに育種価の活用が重要視されている。
 育種価による改良増殖など,高齢者には,難しい課題もあるが,良い牛づくりに楽しんで参画している。
 高齢化が進む中で,もっと,農業・牛の飼育に気軽に取り組める環境づくりに努めたい。
 阿波村では,ふるさと祭りを毎年行っているが,やや,マンネリ化している。これからは,村の人も楽しみ,町の人達にも,来て,食べて,愉しく遊んでいただける場所づくりの必要性を痛感している。
 農業者は販売が上手でない話があった。私は,堆肥利用で無農薬のコメを作っているが一元集荷・販売で,今後考えなければならない課題と受けとめている。

(司会)
それぞれの立場で,販売面・低コスト化・付加価値向上・家庭の健康管理・村おこし等に取り組まれている様子が伺えたが今一言。

(小泉)

☆女性の交流が地域を活性化する。

 中国四国酪大を卒業後,暫く,大阪に帰っていたが,最も,私の性に合うのは,矢張り,酪農・牛と一緒に生活したいという気持ちが強く,加茂川町に採用していただいた。
 ストックファームに勤務し,3年経過したが,農家に行き,牛を見れば・牛舎を見れば農家の状況が分かる。特に女性の力を感じる。活性化している地域は,必ず交流会を開催されている。女性の意見交換が盛んに行われているように思う。

☆牛の話はヨメさんに聞け。

 農家に行き,おじさんに,牛の話をして下さいと頼むと,牛の話はヨメさんに聞いてくれと言われることが多い。奥さんが,ほ育・育成などの大切な時期に,大きな役割を持っている。女性の役割・力が,大変重要視されているように感じられる。

(司会)
 ミートアドバイザーの立場から,どう感じられるか。

(河合)

☆女性・子供達の体験ツアー等で和牛啓発。

 はじめは,公民館などで,肉の説明なども行っていたが,最近は,小売店で肉を売ることが多くなった。農業・畜産の実態を知らないので,消費者の立場から概念的なイメージとして意見を述べる。まさに,農業とは,こんなものかなーと考えていたこと,全てを片山町長さんが提言された。
 作る・育てるというハード面は,よく分からないが,売るというソフト面から考えると,もっと和牛を広めたいという事であれば,女性の力を利用し,もっと,子供達に体で覚えさせるような取り組みをしてはどうか。

☆目で見て・肌で感じ・食べる体験ツアー。

 昨年,牛にふれさせる体験「たんぼツアー」に参加したが大変好評だった。「目で見て・感じ・肌でふれ・食べて・お腹で満足する」そうしたことには,県南の人達など,参加したい人が多いと思う。
 こんな催しのバスツアーを,県等の指導で計画されてはどうか。韓国では,骨付きカルビー等の焼肉店が多い。例えば,経済連等で郊外に直営の焼き肉店を設けるなど考えられないか。

☆おかやま和牛肉のオーナー制度でPR。

 和牛肉のふるさと会員制度や岡山和牛の店などはどうだろうか。兵庫県のある町では,10万円のオーナー制度があり,年1回高級和牛肉配布・1カ月に1回特別割り引き販売などの特典を設けている。若い人をターゲットにして,愉しいんだなー・美味しいんだなーのイメージを一般の人に,もっとアピールすべきである。そうしたソフト面のPRで活性化すべきである。

(良川)

☆地域との関わりを大事に。

 私の地域の農業・畜産を取り巻く環境は,加茂川町とはかなり,違っているように思う。
 環境改善など,指摘されることが多い。
 養豚経営は,現在では私の家1戸で,地域の人達との話題や関わりなども,殆ど子供の事に集中している。家庭の事情で,京都から移り住み,農業は,未だ主人の手伝いをしている程度に過ぎない。今日は勉強に来たが,皆さんの話を聞き,もっと,自分の考えを持って,農業・養豚を地域との関わりを大事にしながら進めなければならないことを痛感した。

(矢庭)

☆育種価など考えた後継牛づくり。

 私の町は,加茂川町のように,農業・畜産に理解ある取り組みをしてもらっている。
 私は,たんぼ・縫製・牛飼い・牛舎の掃除などに,時間を見ては走り回っている。
 主人は,バス運行など自動車の自営業で,田植え・稲刈り以外,殆ど私がしている。
 はじめは,牛がこわくて1頭の牛を祖父の手伝いをする程度だったが,主人が牛が好きで共進会への出品を生き甲斐のようにしていたので,次第に私も牛飼いに熱中するようになり,今では山道の引き運動までしている。
 いい牛ができると相場も高くなるし,お金も欲しいので,育種価などを考慮して,いい牛は残し,計画交配を進めるなど研究している。いつの時代でも,その時代に合った計画的な改良が必要で,そうした研究をしながら,いい子牛づくりに取り組んでいる。

(司会)
 畜産の行政・指導面から女性の取り組みについてご意見を。

(山川)

☆安全性は,食品の基本条件,女性の出番は多い。

 家畜衛生分野を担当しているが,昨年は,狂牛病やO-157病原菌など種々な出来事で驚かされた。いかに畜産物が国民生活のなかに深く溶け込んでいるかの認識を新たにした。
 又,一般の方が,いかにイメージで動かされているかを強く感じた。今や安全性は,附加価値ではなく食品の基本的条件である。
 女性の立場からは勿論,畜産全体の問題として安全食品でなければ商品としての価値がないという認識を一層深める必要がある。
 そうした問題をはじめ,食品の分野などへも女性の出番は多い。女性の感性を活かし,連携を強めながら,一緒に取り組んでいきたい。

(司会)
 一通り,女性の皆さんから伺った。研究されていること,儲けるために取り組まれていること,消費者へのアプローチなど色々お伺いした。ここで,特別参加していただいている先生方にご意見を御願いしたい。

(本松)

☆和牛肉は国際市場で高い評価,優れた品質の農・畜産物生産に前向きの取り組みを。

 現実の問題として,最終的には相場が高いことである。先に,香港の市場調査に行った。九龍半島に新しい店が進出していたが,岡山や九州の和牛肉が,大変有利な価格で販売されていた。
 日本の黒豚肉なども米国の牛肉以上の価格だった。味・品質がよいことは勿論であるが日本の食品の安全性が評価されていることが,こうした結果をもたらしている。国際的な自由市場の香港での日本の農・畜産物に対する評価が変わったのに驚いた。皆さん自信をもって畜産に取り組んで下さい。

☆優れた品質の農・畜産物生産を前向きに。

 加茂川・道の駅の白菜などもそうで,香港の市場価格に比べ安い。現地での日本の野菜価格は現地産の2倍程度だった。国際化の進展で日本の畜産など危ないと思った時期もあったが,O-157のことや,輸入物には,産地表示が必要となったことなどもあり,品質の良いものの生産に,一層,前向きに対応していただきたい感を強くした。

(内藤)

☆新しい時代へのコミニテイづくり

 生産から消費,安全性の問題まで,女性らしいご意見を聞かせていただいたが,輝く女性の皆さんの体験に基づく貴重なご意見として,今後の業務推進に役立たせたい。
 コミニテイの必要性に話があったが,かって,集乳所があった頃は,そこで色々な話題・情報の交換が行われ,地域のコミニテイづくりの役割を果たしていた。酪農においては,婦人の組織化・活動も活発なものがあるが,やはり,新しい時代に向けてのコミニテイづくり,情報化への対応の必要性を痛感する。
 経営主が,怪我などの場合,将来の酪農経営を大きく左右する場合があるが,その原因が女性か男性かで,その後の運営が大きく変わる場合が多く,案外,男性の事故の場合,女性・子供の連携で充実したり,後継者がうまく育ったりする場合がある。
 酪農経営に関する調査で,女性が関わっている作業の割合は搾乳に66%,簿記・会計には27%と,意外と少なく,今後の課題とも考える。赤木さんから指導面での指摘があったが,色々な経過の中で,夏乳価方式を変更したもので,ご理解をいただきたい。これからも,農家・指導者・組合等とのコミニテイができる環境づくりをしなければならない。

(長吉)

☆情報交換のネットワークづくりを。

 農業に従事されている女性の皆さんが,いかに輝かれているか実感を深めた。
 酪農も1つの転機を迎えている。岡山でもこれまでの酪農から脱皮されつつある農家も少なくない。質の高い情報を交換し合うネットワークづくりが必要である。特に女性の皆さんの積極的な活動に期待したい。

☆全日本ホルスタイン共進会を啓発。

 今日の農村社会は,教育・文化など素晴らしいものをもっているが農業に従事されている女性の貢献度は大きい。個人プレーでなくチームプレー・組織的な活動が必要である。
 特に平成12年全日本ホルスタイン共進会が岡山で開催される。農業だけでなく,岡山を世界に向けて,啓発・発信する好機としたい。皆さんのご支援を御願いする。

(司会)
 農業を活性化させるために,消費者との交流促進・地域との連帯などが話題になったが地域に根づいた活動をしていくためには,女性の組織活動をどう進めたらよいか。

(赤木)

☆消費者との交流で,食物・命の大切さを。

 グループ・団体としてのコミニテイも必要だが,個人的な仲間づくり・交流の輪を広げることも大事である。農家の女性1人1人・皆が農業の良さ・食べ物・命の大切さを町の人達に理解して貰う取り組みを,もっとしなければならない。生産者・消費者お互いだと思う。家庭を担っている者同士,女性から女性へ,誰にでもできること,一番しなければならない取り組みだと思う。私は,農家なら食べ物は安心と言うことでおヨメに来た。
 食料が,もっともっと大事にされる時期が必ず来る。

(矢庭)

☆農業者も消費者。

 私達の多くは,農業者であって,消費者でもある。婦人のグループ研修会などでも,そうした考えで行動している。

(宗田)
 確かに,サラリーマンやご婦人などの食べ物に対する関心は強く,本物・安全性志向を特に感じる。外見が悪くても,産地・生産者で信用買いされる。農薬の利用状況その他婦人の情報収集も高まっている。ニュースや情報で動かされることも多いが外国産の肉など,敬遠される。私は肉も安富さんに頼んでいる。

(司会)

☆生産者の情報発信で,消費者へアプローチ。

 生産者の小さい情報発信によって,消費者との距離を短くできる。その役割を女性が果たすべきではとの意見が多かったが。

(矢谷)
 私達も十分とは言えないが種々婦人部活動を行っているが,最近はパソコン活用の勉強会もしている。今後はインターネットでの消費者へのアプローチや啓発も必要になる。

(草苅)

☆経営分析・目標設定にやり甲斐。

 私達の地域でも,農業改良普及センターの指導を受け,婦人会で簿記・収支計算・試算表・経営分析など行っているが来年度の課題や目標を定めるなど,やり甲斐を見いだして取り組んでいる。

(井上)

☆ネットワークづくりで集落営農に効果。

 パソコン・簿記など流行っているが,わが家の経営を十分把握していない人も多い。特に借入金の状況などは,把握し難い。
 情報収集・ネットワークづくりが叫ばれているが,集落営農を進める上で,畜産以外の情報収集を含めて,請負耕作の実施面など相互の有効利用が期待できる。

☆農村リゾートで若返り。

 最近,農村型リゾート施設を利用した消費者との交流事業が各地で行われている。私達の地方にも,京阪神等から多くの人達が訪れられる。優れた景観を持つ自然環境や地域の特産品・新鮮な食べ物の提供で都会の人達に喜ばれているが,地域の婦人達も比較的年配者であっても,赤いエプロンや化粧など,若返ったイメージ・病気も消えたという人がいる等,いい傾向が出ているように思う。

(片山)

☆農業にも,町づくりにも哲学が要る。

 消費者との関わり,安全性,生き甲斐,経営に対する取り組みなど多くの意見が出て,大変参考になったが,矢張り,農業経営でも町づくりでも,1つの哲学が要る。自分の地域・自分の経営に合った手法がある。

☆農家と地域の連携で効果

 加茂川町は岡山県の中央部にあるが,鉄道も駅もないため,県道沿いに,車で通行する人達に休息の場を提供し,又,地元の農産物を販売しようということで,「道の駅」を設けた。生鮮食料品等農村婦人部で対応しているが活況を呈している。品不足のときなど,畑に取りに帰り,泥のついたままの大根を販売したりすることもあるが,それに人気がある。我が町では,1年1品づくりに取り組み,町や生産品のPRに努めている。昨年,東京原宿で,今年は大阪で,特産のマイタケなど即売会を行った。PRの効果で大阪では抜群の販売成績だった。
 加茂川町の和牛の子牛は,かって,大変,安かった。町で優良牛に対する助成制度を
設け,優良な子牛の地元保留に努めたところ,最近では,加茂川の子牛の相場が上がった。農家と地域との連携強化が重要である。

(渡邉)

☆婦人の声の結集を

 女性の皆さんのご意見を聞いて大変心強く思っている。昨年,ヨーロッパなど6カ国を見て歩き,改めて,農業・畜産に対する国・国民の関心の深さを痛感した。国の基本は農業だという考えが強く,1人1人が,一生懸命そうした努力をしている。安富さんと宗田さんの事例のような交流なども一層深めながら,農業・畜産婦人の声を結集し,今日のような,活気に満ちた皆さんの声を政治に反映させなければならない。

(矢庭)

☆全国和牛共進会への指導強化を。

 大佐町も,和牛の助成制度特に,高齢者・婦人の生き甲斐対策として,和牛振興会などを通じて対応して貰っている。市場の評価も従来,子牛の出荷体重にバラツキがあり,よくなかったが,最近は,指導の徹底で,バラツキが少なくなった。来年は,全国和牛共進会が開催されるがその準備をしている。飼養管理面等,早く,細部の指導徹底を御願いしたい。

(本松)

☆和牛情報誌の活用を。

 数年前までは,子牛市場で,肉がつき,見場のよい牛が高く売れた時期もあったが,最近は,草をしっかり食べさせていて,体重も300sに満たない270〜280s程度の子牛特に放牧された牛が最も高く評価されている。全国共進会への指導も育種価などの問題も含めて,経済連と県等で協議して作っている和牛情報誌も家畜市場で配布しているので活用して欲しい。

(山川)

☆地域組織への積極的な参加を

一般的に,行政指導を行う場合,全戸を対象にできない。女性組織への参加はもとより,男性を含めた地域組織に積極的に参画され,提言して欲しい。

(小泉)

☆育てる喜び

 繁殖和牛の育成・ET業務などに携わり,単純な業務にない育てる喜びのような物を感じている。やはり,やり甲斐とか,ゆとりをもてる農業をしたい。

(司会)

☆地域婦人グループへ肉の知識普及を。

 地域における婦人交流グループの研修会等に,アドバイザーの皆さんに参加していただくことはできないか。

(河合)

☆婦人の交流に参加したい。

 生産の実態を知り,食肉の知識を深め,生産者・消費者相互理解による,岡山和牛など、県産食肉の普及・啓蒙にお役に立てるようなことをしたい。

(赤木)

☆心にゆとりをもてる農業を。

 自分のおかれた環境・自分でできる力で,経済的にも,そこそこに,生き物を飼っているので,時間的にもたっぷりということではないが,ある程度の心にゆとりをもって,子供を育てることができれば…と思っている。きれいなものをきれいと感じ,家畜に触れるなどして,家庭に暖かいもの,安らげるものを感じるような人生でありたい。

(井上)

☆農村男性にも生活の役割分担を。

 赤木さんのような心境で農業に取り組む人達の輪を広げたい。生きものへの愛というようなものが育つような農業が進められたらよいと思う。女性も経営に,地域活動に参画する,男性も生活の役割を分担するというお互いが努力し合って,家庭・農業・地域がうまくようにしたい。

(岡)

☆養鶏経営を2人3脚で。

 私達の養鶏では,売れ筋は決まっている。それ以上は,口コミで広げるしかない。年中,いかに生きていくかの取り組みをしているが,養鶏20年,天職と考え夫婦2人3脚の仕事として頑張っていきたい。畜産便りを見たりするが皆さんとの交流を深めたい。

(河合)

☆宇宙飛行士の秋山さんも農業。

 宇宙飛行士の秋山さんが農業されていると聞いているが,今日,皆さんの話を聞いて,農業・畜産っていいなあ。動物や植物を育て,人に幸せを与える心は,子供を育てるのと同じだと思う。バブルの時期は経済性の追求・金本位だった。真心をこめて,いい物を人のために作り,それが帰ってくる愛の高まりとか,やる気のようなものを感じた。これからの農業・畜産に期待したい。

(草苅)

☆家族みんなで農業に喜びを。

 私は非農家から主人の言う「手作りの農業」に魅力を感じ結婚したが,色々な問題から,いつ,帰ろうかなあーと考えた時期もあった。
 しかし,年とともに,こんな自然環境に恵まれ,美しい四季,大きな愛くるしい目をした牛との生活に喜びを感じるようになった。
 今は,主人と2人3脚の牛づくりに懸命で,できれば,子供も一緒に家族全員で自然のなかでのこうした牛飼いができればいいと思っている。

(小泉)

☆農家に喜ばれる牛づくりを。

今年より来年,一歩でも二歩でも向上するような取り組みをしたい。町営の牧場で,採算のこともあるが,農家の皆さんに、ストックファームに預けてよかったと言われるような良い牛を育てたい。

(宗田)

☆子供に背を見せられる農業を。

 子供が,親の後姿を見て自然に身につけてくれるような,手抜きをしない,そんな農業・生活を一生懸命やっていきたい。

(東山)

☆子供達が動物ともふれあったり,体験学習におとづれたりする。牛舎や周辺のきれいな環境づくりや,堆肥づくりに努力したい。

(矢谷)

☆婦人のネットワークづくりを。

 同世代のOLや,友人,高校時代の同級生に,酪農家に生まれ,酪農家に嫁いだことを何故?といわれ,私は不幸な人生?のように思ったこともあったが,赤木さんの話を聞き,勇気づけられた。是非ネットワークづくりをしましょう。宗田さんのように,子供達の目に,母親の後ろ姿が,自信を持って働いている様に写るように,頑張りたい。

(矢庭)

☆家族みんなで牛飼いを。

 子供も中学3年。留守には手伝ってくれるようになった。将来,ヨメさんも牛飼いを手伝ってくれるような,そんな家庭づくりをめざしたい。

(良川)
 赤木さんの考えのような農業をしたい。
 これから勉強したい。

(山川)

☆ネットワークづくりの盛り上がりに期待。

 行政・指導の役割の重要性を痛感した。
 地域の女性を中心にしたネットワークづくりの気運が皆さんの中からわき上がってくることを大いに期待している。私も努力したい。

(片山)

☆情報交換で活性化を期待。

 大変有意義な催しで,女性の皆さんの前向きな姿勢を痛感した。自分だけでは,世の中渡れない。町は,皆のもの,人間も自然も大切にしよう。町が輝くなかで,自分が働き,主張する。皆さんの前向きな取り組み,こうした情報交換が,より積極的に行われ,地域農業が活性化することを期待している。

(内藤)

☆全日本ホルスタイン共進会に女性の力を。

 女性の皆さんの活気を感じた。生乳は輸入に影響されない。健康づくり,ガンの予防など効用は大きい。農家戸数が減っているが,皆さんの力を結集して欲しい。特に,平成12年の全日本ホルスタイン共進会の岡山開催は,畜産・農業の祭典,消費者との交流を深める絶好のチャンスでもある。岡山の文化・産業を世界に向けて皆さんと共に,発信させたい。女性の皆さんの活力が必要で,大いに期待している。

(本松)

☆記帳・受委託・消費者交流を。

 飼えば儲かる時代ではない。正確な記帳・経営診断を行い,経営して欲しい。経済連では,今,豚・鶏などの受委託事業にも取り組んでおり,豚の新しい清浄豚飼育も展示している。皆さんと一体になり,県内消費を第一義に生産者・消費者との交流促進等による畜産の発展に努力したい。

(司会)
 女性のネットワークづくりのほか総括して締めくくりのご意見を伺いたい。

(渡邉)

☆むすび

 各分野のリーダの皆さんが未来に誇りと自信を持って,取り組んでおられる様子を聞いて大変心強く感じた。
 今こそ,コミィニケーションを一つにして取り組まなければならない大変重要な時期を迎えている。畜産会としても,皆さんのご支援を頂きながら,今後とも,こうした機会を設けるなど,頑張って参りたい。

(概要記述文責 堤)

座談会出席者の方々


☆話題提供者

片山 舜平 加茂川町長

☆司会進行

安富 三代 県酪農婦人協議会長

☆女性リーダー

赤木 勝江
上房郡賀陽町(酪・肉)
井上 康子
県勝英農業改良普及センター
岡  己江
川上郡川上町(鶏)
河合 育栄
岡山市泉田(ミートアドバイザー)
草刈 和子
苫田郡阿波村(和牛)
小泉 早苗
御津郡加茂川町(町職員)
宗田由美子
倉敷市山地(果樹・野菜)
東山 直子
笠岡カブト中央町(酪農)
矢谷 美幸
真庭郡久世町(酪農)
矢庭 安子
阿哲郡大佐町(和牛)
山川まり子
県畜産課
良川 泰子
久米郡久米南町(豚)

☆特別参加

長吉  旭 県畜産課課長補佐
本松 充之 県経済連常務理事
内藤 照章 県酪連専務理事
渡邉 明喜 県畜産会会長