岡山畜産便り97年1月号 美味しい牛乳の生産をめざして!!

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「ひろば」

美味しい牛乳の生産をめざして!!

総合畜産センター
大 野 佳 美

 牛乳は「完全栄養食品」と言われ,これまで消費も伸びてきました。しかし,ここ数年の生産者乳価は必ずしも酪農家の納得する価格とは言えません。これは,ジュースからウーロン茶に至るまで多くの飲み物が出回っていることが大きな要因のようです。飲料類としての牛乳,特に岡山県産牛乳のシェア拡大を図るためには消費者の求める生乳の生産が必要となってきます。
 そこで,本年8月中四国の乳業会社82社を対象に,「美味しい牛乳」に関するアンケートを実施し,約半数の42社から回答を得ましたので,その概要をお知らせします。

1.原乳検査

 「現在実施している原乳の検査」の質問では,風味,細菌数,乳脂肪及び無脂固形は,ほぼすべて(約94%)の会社で検査が実施されています。さらに,半年以上の会社が体細胞質(59.5%),抗生物質(78.6%),搬入時の乳温(78.6%)を検査しています。
 図1に「現在実施している検査項目のうち,各メーカーの原乳担当者が重要と思う項目」,さらに「今後重要となってくると思う項目」についての回答を示しています。これによると,現在は風味と細菌数が検査のポイントになっています。また,体細胞数や無脂固形が,今後の重要とする検査で大きく増加しているのが目立ちます。これは,風味の素となるものに重点を置いていこうという姿勢ともいえます。

 図2に,「地域以外からの生乳受け入れ先の選定に重要な要素は?」という質問に対する回答内訳を示しました。細菌数,安定的な供給,乳脂肪,無脂固形の順に選定条件として重要ともいう結果がでています。安定的な供給は当然としても,細菌数がここでもあがっていることから,「クリーンな牛乳」が求められていることがよくわかります。

2.美味しさ

 「美味しさを左右する要素として重要な乳成分は?」との問いの回答を図3に示しました。牛乳の甘味は乳糖(一部乳脂肪),口当たりとコクは乳脂肪と乳蛋白質等が関係するので,乳脂肪と無脂固形(美味しさは感覚的には無脂固形に左右されるところが大きいと言われています)が大切だと思われています。一般に乳成分は高ければ高い程良いと思われがちですが,乳脂肪と無脂固形との量的比率がポイントです。
 「消費者のイメージする美味しい牛乳の要素とは?」という質問に対しては,鮮度と風味が多くあげられています。
 以上の結果からみてみると,全体的に乳業会社の原乳担当者の考え方には,細菌数や体細胞数に対するクリーンで風味のよい牛乳といった基本姿勢がうかがえます。乳脂肪や無脂固形は乳価にスライドすることから,酪農家の方もある程度認識はあると思いますが,クリーンな牛乳と言った意味での細菌数や体細胞数そして風味は,日常管理のちょっとした手違い,病気の発生などによって変化します。ほんの少しの心がけや気配りが,より良質生乳の生産へとつながていきます。また,「一元集荷多元販売」の原則に基づいて岡山県の牛乳を販売する以上,全ての酪農家の努力が必要となってきます。

3.今後伸びる乳製品

 今後のびる乳製品については,ヨーグルトと,チーズと答えた会社が圧倒的に多く,それに低脂肪乳が次いでいました。健康を気にする人が増えてきた今,ヨーグルトやカロリー控えめな低脂肪乳,また様々な種類が手にはいるようになったチーズが,これから伸びていくと考えられるようです。
 最後に,これからの厳しい経営環境,競争に打ち勝つためには,このアンケート結果を念頭に置いて,県内関係者が一体となって良質な牛乳の生産に取り組むことがますます重要になっています。