岡山畜産便り97年2月号 真庭家畜診療所の状況と疾病予防について

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「家畜診療日記」

真庭家畜診療所の状況と疾病予防について

真庭家畜診療所 西 崎 完 治

 自由化の波が押し寄せ,乳価の大幅な下降,肉価格の低迷による和牛子牛価格の低下が認められています。収益を上げるためには乳牛では一頭当たりの乳量の増加,和牛では分娩間隔の短縮,系統牛の種付けがますます重要となってきました。
 収益を上げるためには適切な飼養管理が必要となってきます。適切な飼養管理を行うことにより病気,死亡廃用事故が減少してきます。当診療所管内の傾向を見ますと,乳牛で多発する病気は繁殖障害,乳房炎,消化器,起立不能,呼吸器炎,関節炎,となっており,死亡廃用事故は,関節炎,乳房炎,起立不能,第四胃変位などが主なものです。和牛で多発する病気は,繁殖障害,子牛下痢が主なものであり,死亡廃用事故も子牛が大半で,分娩時の事故,下痢(白痢)等によるものとなっています。
 これらの病気は乳牛,和牛とも適切な管理を行えば,減少させることが出来るものも多く認められます。特に当診療所管内におきましては病気の予防対策として,飼料給与法,寄生虫の駆除,削蹄等適切な飼養管理指導を重点的に実施しています。特に,乳牛,和牛とも繁殖障害を防ぐ対策,指導が最重要です。飼料給与改善することにより繁殖障害を防ぎ分娩間隔を短縮し,生産性向上が図られ収益増加が期待できます。乳牛では,一頭当たりの乳量を増加させるため,牛の能力の限界を追求するあまり,健康が阻害され,繁殖障害だけでなく他の病気の誘因となってきています。こういう背景のなかで乳牛は飼われているので,飼養管理をより適切にすることによって,病気は減少します。(四肢の腫れ)等も第一胃機能の改善により,病気の発生を減少させることにつながり,また起立不能症もビタミン,カルシウム剤の投与だけでなく飼料給与の面からも防止することができます。
 また管内では繁殖和牛の飼育も盛んで頭数も多いが,繁殖障害が多い。飼料給与の改善,子牛の離乳の時期の指導により,かなり減少してきていますが,問題となっているのは子牛の下痢です。原因は種々ありますが牛舎環境(換気)外界の温度差,湿度に影響されやすく,冬季,梅雨時期の発生が多くなっています。原因菌としては,大腸菌,コクシジウム症(特に増加傾向),糞線虫などが認められています。感染し,下痢すると死亡しないにしても体力の消耗も激しく発育の遅れが著しいものも認められています。対策としては牛舎内の乾燥,消毒,日光浴の実施,ワクチンの投与(1年目2回,2年目より1回)などがあります。発症したら,科学薬剤,整腸剤を投与するとともに,体力の消耗を防ぐ為に保温に十分注意しなければなりません。また,母牛が濃厚飼料多給のため,母乳の尿素態窒素含量が多くなり乳越しといわれる栄養性下痢も少なからず認められています。母牛の飼料にも十分注意してください。
 管内では乳牛,和牛にも共通して肝蛭寄生がかなり認められています。乳牛で約15%(多い町村22.7%),和牛で約43%(多い町村60%)寄生率で濃厚感染している地域も認められています。肝蛭症は慢性経過をとり乳量,受胎率にも大きな影響を与えており,他の疾病の誘因ともなっています。感染は,水辺の草,稲わらに付着した幼若虫が経口的に体内に入ることにより感染します。とくに,新稲わらの給与が感染の大きな要因となっています。春先まで給与せず,幼若虫が死滅してから与えてください。駆虫は濃厚感染地域では年2〜3回投与を指導しています。
 病気の発生防止のため飼料計算,削蹄,肝蛭駆虫,子牛の下痢等の対策を適切に実施し収益の向上に努めましょう。詳しくは,NOSAI家畜診療所までご相談ください。